夏まで生きていようと思った

太宰の短編にこんな一節がある

死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目しまめが織りこめられていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/2288_33104.ht

結果的にこれが休職中の大きな救いになった。
別に太宰のように本気で死のうと思っていたわけではないが、あまりにも視野が狭く希望を見いだせなかったので、上の短編にある着物のようなものを先の未来に置いていく必要があると感じ、実際それがかなり回復に役立っている。
置いたものに関してはいろいろあるが、3つ紹介したい。

1つは本当にすぐできるもので、植物の成長を見ることである。
私の場合は切り落としたニンジンの頭から出てくる葉っぱはかなり伸びるので行けるところまで伸ばしてやりたいと思っている。(ただ、キッチンに置いている影響でかなり洗剤がかかっているので断じて食べたくはない)

2つ目は賞金や旅行プレゼントなどの懸賞がついているもの。
これは単純に審査期間が長くて置くものとして適している。私はデンマーク旅行プレゼントが最高賞にあるコンクールに切り絵作品を出した。合否は3月なのでひとまずわくわくしている。

3つめは割と偶然なのだが、かねてからシチリアに行きたいと思っていたタイミングで、Airbnbがシチリア島で宿のオーナーを募集するプロジェクトを企画していたので応募しておいた。
長期滞在用の箱が整っている且つ旅費の削減、ワーホリビザの使いどころなど諸々条件が合う方には是非お勧めしたい。肌感覚ではまず受からないが、目的は置いておくことなので気長に待とうと思う。

これらでしばらくは健やかに暮らせそうである。

こなごなに砕かれた鏡の上にも、新しい景色が写される

千と千尋の神隠し ED.いつもなんどでも

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