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命を紡ぐ者の葛藤/知念実希人「ひとつむぎの手」

命を紡ぐ、ひとりの心臓外科医の葛藤と成長を描く傑作医療小説。


「ひとつむぎの手」は、知念実希人さんの本屋大賞ノミネート作です。

日々の激務に耐える、心臓外科医の平良。キャリアへの不安が膨らむ中、教授から三人の研修医の指導を任され、そのうち二人を入局させれば憧れの出向先に行くことができる、と言われる。
医局を騒がせる怪文書、心臓外科が抱える多くの問題、研修医たち、そして患者の事情……。ひとりの外科医の成長を描く、感動の医療小説です。

この本はこんな人におすすめ

①医療小説を読みたい
②人間ドラマが好き
③「医師のリアル」を覗きたい

それでは、この作品の魅力を紹介していきたいと思います、ぴょん!

*医局のリアル

本作の主人公は、心臓外科医の平良。彼は、人手不足の心臓外科医局で多忙な日々を送っています。家族の待つ家にはなかなか帰ることができず、重要なオペでも活躍できず、キャリアへの不安は募るばかり。医局の裏側をリアルに切り取っており、その葛藤が繊細に描かれています。
ミステリーの印象が強い知念実希人さんですが、今回はその要素は少なく、代わりに医局内の息苦しさや理不尽、それを打破する主人公の姿が丁寧に描かれた物語です。

*人間ドラマにも注目

それぞれに事情を抱え、最後の希望として医者に縋る患者。それぞれの立場で、それぞれの将来の目標のために心臓外科入局を希望している三人の研修医。教授の甥であり、平良のライバルでもある優秀な心臓外科医。物語の中に出てくる様々な人物たちは、平良の言葉や誠実さ、真っ直ぐさに影響を受けて成長し、前を向きます。
知念実希人さんの書く医者の主人公は、どの人物も人間味に溢れていて魅力的です。ぜひ、それぞれの関係性の変化にも注目して読んでみてください。

「自分を貫くことの大切さ」と、「真摯な姿勢の大切さ」を教えてくれる本作。ぜひ読んでみてください、ぴょん!


(2022年1月9日にはてなブログで公開した記事を、一部加筆修正しました。)

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