アイドルが尊敬している先輩、憧れの先輩を公表しなければならない風潮について。


 上下の関係性をアピールしたり、いわゆるコンビ売りみたいなものを行うことによるビジネス展開として大きな事務所や団体では特に有効だと思うんですよ。
 先輩から後輩にファンが流れるとか、注目されるようになりどちらにもメリットが生まれるとか、ビジネスチャンスが増えるとか。
 打算があるにせよないにせよ、仲睦まじい光景を見せられたり、後輩の好き好きアピールであったり、先輩の言動や姿に感激する後輩、その後輩を優しい目で見守り可愛がる先輩といったものはファンが増えますし、もちろんビジネスチャンスです。
 ただまぁこういったものが増えすぎて辟易する部分も少なからずあるというのも事実ではあります。
 「貴方ももう立派なアイドルなのにファンみたいに浮かれたりしてていいの?」という後輩に対する気持ちもあれば「後輩に寄生するような立ち回りで好感度を得て、仕事増やしていくようなセコいアイドルでいいの?」という先輩に対する気持ちもあります。
 まぁ時と場合によるといえば完全にそうなんですが。
 モーニング娘。の石川梨華さんに憧れていた伝説のプロフェッショナルアイドルである嗣永桃子さんはオーディション合格後に共演した際、憧れの先輩と共演出来た思いについてインタビューされ「もう憧れではありません。先輩です」と答えており(当時小学生)この思いをアイドルたちにはきちんと持っていてほしいと痛感するのですが、小学生の身でこの受け答えが出来る桃子は桃子で特殊だと思うので、万人にこれを求めたり、啓蒙するのはまた違うのではと思いますけどね。
 オーディションを受けてアイドルとしてデビューする子、特にハロプロのように25年以上続く老舗のオーディションを受ける子であればこだわりや信念を持っているタイプも他のオーディションを受ける子よりは多いでしょうし、憧れのアイドルや好きな先輩、わかりやすくいえば推しもいるでしょう。
 で、デビューしたとき。
 あるいは研修生として活動をはじめることになったとき。
 「好きな先輩は?」「憧れの先輩は?」「尊敬している先輩は?」などという質問を受けるんですよね。
 遥か昔からあるお馴染みの質問ではあるとは思うんですよ。
 ある意味、新人への質問としての定型文のひとつといってもいいとは思います。
 この質問にどう答えるか、誰の名前をあげるかでどのような精神性を持った子なのか、どういう受け答えが出来る子・出来ない子なのか、どういうものに魅力を感じる子なのか、何を良しとしているのかなどがわかるので、質問そのものの意味や意義は大きいと感じます。
 ただ、2010年代くらいから「絶対公表しなければならないもの」みたいな流れが生まれ始めて、新人のお披露目イベントみたいな場で先輩たちに囲まれて「憧れの先輩は?」と訊ねられる圧迫質問のようなことをされている新人という光景を目にしたりすることも増えたことには疑問や違和感があります。
 こうなってくると「これ必要?」ってホントに思います。
 見ていていたたまれない気持ちにしかならないものを何故やるのか。
 まぁ人となり(キャラ)がまだよくわからない新人に対するわかりやすいキャラ付けになるというメリットもあるんですけれどね。
 覚えやすくはなりますから。
 ○○先輩大好きキャラみたいなものがわりとメジャーなものになっていったのもこれくらいの時期からかなと記憶しています。
 先輩後輩の間柄にある愛情と尊敬、コンビ売りやカップリング要素みたいな様々なものを含んでいて、本当にその先輩のことを心から愛しているのかどうかに加えて、センスや信念も問われるため安易に手を出すのは危険なやつですが、ひとつのビジネスとして考えればリターンも大きいからどんどん手を出しているアイドルを見かけるようになるんでしょうね。
 ここ10年くらいで動画配信サービスやSNSなどが充実したため、アイドルが自身に関する情報を発信しやすくなったことや、ファンと触れ合い身近に感じさせるイベントなども増えたため「○○ちゃんって、俺と同じ子のこと好きなんだ~」とか「○○くんって私の好きな○○くんのこと推してるのね」みたいな現象が起こりやすくなり、アイドルとファンが同じ感情や感覚を共有していることを実感させ、親近感や共感を生み出すんですよね。
 好きなアイドルのパーソナルな情報はどんな些細なものであれどうしても知りたくなるものですが、アイドルがアイドルのファンとしての部分を公にしているところって見せてくれるなとは言わないし、言えないんですけれども(アイドルが好きだからアイドルになってる方が多いでしょうから、そりゃ個人的な趣味嗜好として好きですよね)程度や限度や見せ方というものもあるよなぁとは思いますし、そのあたりでアイドルとしての腕が試されるのだと考えます。
 まぁこの件で本当に言うべきことって何だろうと考えてみたら「身内ネタに相当するキャラや話題だけでは通用しない」ってことでしょうか。
 やっぱり芸能に携わっているなら自分のことを知らない人々に知ってもらうための何か、外へ外へと発信していく力が大事だし必要なのに、身内に相当するファンしかわからないこと知らないこと興味ないことを続けていってたら広がりもないし先が無いよねと。
 ある程度のタイミングで辞めるか、減らしていくか、固定ファン向けのコンテンツとしてレアリティを高める打算計算を行うか。

 
 「何でここ10年くらい新人の自己紹介に尊敬する先輩の公表がついてくるんだろう?」とホントにちょくちょく思ってます。
 なんなら先輩から尋ねられ無理矢理公表されられるという光景も見ますし。
 ホントに良し悪しだと思いますし、少なくとも無理矢理に相当するパターンに関してはよろしくはないと思います。
 クレバーに立ち回れるタイプの方やセンスのある方なら良いですけれど、後々、公表したことが原因になりややこしいことが起こる可能性もなくはないと考えるなら、新人のためにならないんじゃないかと思いますし、そこは辞めた方が良いんじゃないかと。

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