作品集-22

デジカメUI: インテリジェントか、クリエイティブか

1/29にようやくLUMIX DC-G9を手に入れたが、まだ本格的に撮影に行けていないので、前回の「撮影と再生」の大きなアーキテクチャに続き、今回もG9をあれこれいじりながら写真を撮る目的と撮影モードについて書いてみる。

写真を「記録」と考えれば、失敗せず、できれば自分自身を含む活動を記録したいというのが要求の基本である。(撮影者が活動記録に残らないのは、専門のカメラマンを雇っている場合を除いては本来不自然である)
その要求を追求していけばドローンカメラに任せで確実に記録してもらうようになるだろう。

一方で写真を「表現」だと考えれば、表現者(撮影者)の関わりの度合いと方法が問題になってくる。
環境を含む被写体は撮影者以外が作った場合が多く、それをレンズ、画像処理などメーカーが作ったもの使って撮影するという状況の中で、撮影者による作画意図というディレクションや実際の操作(労力)によってはじめて表現者の称号が与えられるからである。
写真を撮られる者、見る者、そして撮る者が納得できなければ、その人の作品(表現)とはならないのである。どの程度の作画意図を持ち、実現への貢献をしたのかが重要になってくる。今のところカメラの操作をしてシャッターを切ることで存在価値が保たれているが、AIによってカメラが賢くなっていけばどこまでが撮影者の意図であるのかだんだん分かりにくくなっていく。(サルの自撮り写真の権利が誰にあるかの裁判などがこの問題と関係が深い)

カメラはこの2つの要求を満たすために、さまざまな努力と進化をしてきたといえる。少し前までは美しく確実に記録する方向に傾いていたが、ここ数年はユーザーの表現意欲が高まっているためか、ひと手間加えるUIが登場してきている。

記録と表現については、「ライフフォト」と「フォトライフ」という言葉で説明することもある。
これらは完全な造語(造意)で、ライフフォト(ライフログの写真版)を「生活の記録」としたときに、フォトライフは人生の中での「写真体験」という意味で使う。
ライフフォトが自分の活動の様子が写っている写真という意味が強いのに対して、フォトライフは自分がカメラを使って撮ることを強く意識していて、その中に表現体験も含まれている。

赤ちゃんとして生まれて親に写真をたくさん撮られ、青年期に初めて自分で写真を撮り、大人になって旅行に行ってきれいな風景写真を撮り、結婚して子供の写真を撮る、子供が成長してまた趣味の写真を撮り、最後は孫の写真で幸せになるというストーリーである。これらの出来事に対応できるカメラとサービスが「フォトライフ・デザイン」である。(業務ではもっと詳細にフォトライフのジャーニーマップを作っている)

ライフフォト/フォトライフ・ビューは年齢のタイムライン上に、「私が写っている写真」と「私が写した写真」の枚数を円の大きさで表したものである。

G9のインテリジェント撮影機能

パナソニックでは「インテリジェントXXX」と呼ぶ場合には、カメラ任せで撮影できることを表している。(アイコンにiがついているものがそれである)
クルマで言えば自動運転車にあたる。従来の「オート」と区別するためにインテリジェントと表現しており、実際に被写体認識、空間認識、写真表現研究のによって失敗せずに、より綺麗に撮れるらしい。(私自身はあまり使わないので実際の結果は不明)

<主なインテリジェント機能>
・自動シーン判別 (各シーンに最適な調整を自動実行)
・顔瞳認識/個人認証を使ったオートフォーカス
・i手持ち夜景 (手持ち判定をして自動実行)
・iHDR (明暗差判定で自動実行)

G9のクリエイティブ撮影機能

反対に「クリエイティブXXX」と呼ばれるものが、ユーザーに作画操作をおこなわせて表現意識を持ってもらうための機能である。
こちらも従来の「マニュアル」と区別され高度なアシスト機能が提供される。完全なマニュアル設定ではない点がポイントで、従来の基本設定機能では表現できなかった領域までコントロール範囲を広げる一方で、コントロールの軸を限定し撮影現場で操作可能なものにしている。

これらの機能を使いこなせるユーザーの一部は、Photoshopなどで複雑な組み合わせのパラメータを使いこなしていると考えられるが、撮影という環境の中でいかにシンプルなUIにするかが重要である。

<主なクリエイティブ機能>
・さまざまな画調のクリエイティブコントロールの選択
・クリエイティブコントロールの画像効果を調整
・カスタムしたクリエイティブコントロールの登録/呼出

・ハイスピード動画 (クリエイティブ動画)
・パン/ズームの予約と実行 (クリエイティブ動画)

面白いことに、G9ではカメラ任せのインテリジェント機能に少しだけユーザーを参加させて「撮影した気分を上げる」ため、インテリジェントプラスモードというのを設けている。
クリエイティブでは表現できる幅をが広いが同時に「失敗」の可能性も高くなる問題があるため、誰にでも自由に使えるものではない。その点でインテリジェントプラスモードは大きな失敗をしない範囲での作画ということになっているのかもしれない。

インテリジェントとクリエイティブの違いは、他にもいくつもの見方がある。

従来からの設定項目(明るさ、ホワイトバランス、ボケ)についてはインテリジェントでオート化し、新しい表現項目(クロスフィルター、さまざまな色味、明暗差など)についてはクリエイティブでユーザーにコントロールさせる
被写体やシーンに対する最適化(補正)についてはインテリジェントでオート化し、最適化を超える作画についてはクリエイティブでコントロールさせる

G9を使うということ

私の購入目的は、ずばりこの2つのモードを使いこなして、どこまで撮影が「楽しめるか」を体験してみたいということであった。

デジタル技術をふんだんに使った結果、どのような満足を得ることができるのか
そうした技術を使うことで、失敗したときの悔しさやそれを克服できたときの喜びがどう変化するのか

これから実際の撮影体験を通して味わってみみたいと思っている。



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