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STEM教育は「観察・発想・プロトタイピング」で体験設計を目指す!

寺小屋で子供たちを教育していた時代から「読み・書き・ソロバン」という風に身に着けるべきことを表してきました。

最近では「検索・発信・プログラミング」と言い換えた方がしっくりくるかもしれません。
ただこれだけでは、Googleが使えて、Facebookでイイねがもらえて、仕様書通りにプログラムができる人材レベルにとどまってしまいます。

STEM教育の本来の目的である、科学的な思考によって社会や自分たちを幸福にする力とするためには「観察・発想・プロトタイピング」の能力が必要だと私は考えています。

つまり、デザイン思考、人間中心設計プロセスと同じ思想を教育にも導入することで、よりストレートに目指すべき姿が理解できるのではないかと思います。

では、ひとつづつ求められるものが変化してきたことを見ていきましょう。

読み⇒検索⇒観察

情報が少なかった時代には、世の中で蓄積された情報や遠くにいる人からの情報を得る方法として、文章を読めることは重要なことでした。
最近では膨大な情報が提供され全てを読むことができなくなってしまい、その中から重要な情報を検索する必要がでてきました。

しかしGoogleで出てくることだけが情報だと考えるのは間違いです。まだ情報になっていないものを観察によって見つけ出す能力がなければ、イノベーションをおこしたり、より良いものを作ることはできないからです。

既にある情報を得る技術から、新たに情報を見つけ出す技術へと大きく変わっいく必要があるのです。


書き⇒発信⇒発想

こちらも情報のインプットと同様に、自分の中にあるものをただ書き出す能力だけでなく、より広く発信することが求められるようになりました。
しかし誰もが発信できるようになってくれば、発想の良し悪しが重要になってきます。

観察によって独自の情報を見つけ、そこから独自の発想をおこなうことと、話題になっているレストランで食事をして自慢話を発信することとは大きく違います。発信力を鍛える前に発想力が大切なのです。


ソロバン⇒プログラミング⇒プロトタイピング

計算とは複数のモノ(数値)をつなぎ合わせて別の意味や価値を生み出すものです。(「合計」などが良い例です)
その延長に、モノゴト(数値・文字・動作)を組み立てるプログラミングがあります。

プログラムとは一般には機器やサービスの中身を作ることです。

ところがこの中身を作るだけでは、それが使われる利用状況との関係性を見ることはできません。プログラムで機能を作るときには何か達成したい大きな目的があるはずです。
そこを突き詰めていくと、どのように組み合わせれば目的を達成できるのか、そもそもどのような目的が幸福なのかという課題にぶつかります。

この課題を解くためには、プログラムで作ったモノゴトが、利用環境や人間・社会にどのような影響を与えたり受けたりするのかということを設計する「体験設計」という視点が必要になります。

体験設計を実践していくためには、製品だけでなく人間や社会を含めたシステム全体を検証するプロトタイピングが必要です。
プロトタイピングとは、単に製品を試作することではなく、体験化する環境や状況を準備することや、それを評価(観察)して、改良(発想)に結び付けていくサイクル全体を指しており、自分の発想を社会に実装していくためには無くてはならないスキルと言えます。


ちょっとした活動で体験設計になる

このように書いていくと、STEM教育が会社でやっている開発と同じようにとても難しいもののように思われるかもしれませんが、先生の一言、ちょっとした活動によって実現することができると考えています。

例えば、プログラムの授業をプロトタイプの授業に変えるためには、作ったプログラムを何のために作ったのか明らかにして、みんなに体験してもらい、意見を聞くだけで、人や社会との関係性が生まれ、さらに改良していくモチベーションを生み出すことができます。

※体験設計とプロトタイピングについては、別の記事でもう少し考えを整理してみたいと思っています。

PLEN:bit/micro:bitは「関係性」をデザインする最適な教材

もう少し具体的に、世の中にある関係性を教育の中で体験していくことを考えてみましょう。

世の中は、複数の人の繋がり、複数の製品の繋がりによってできています。
この繋がりをどのようにデザインしていくのかが重要になっており、コミュニケーションデザインやコネクテッドデザインという分野が生まれてきています。

この感覚をSTEM教育の中に取り込むのに、私が最適だと思っている教材がイギリスBBCが開発した「micro:bit」という小さなマイコンです。

特に優れていると感じるのが、micro:bit同士の通信が簡単にできることです。
複数の人のコミュニケーションを助けたり、または複数のmicro:bitが連携して動くものが作れます。

さらに、10年後20年後を考えたときには、人間と製品の中間的な存在として「ロボット/AI」という存在がでてきます。
この不思議な存在に対して私たちがどのように接していけば良いのかの答えはまだありません。それはこれからSTEM教育を受けて育つ子供たちが見つけ出していくものです。

現在クラウドファンディング中の「PLEN:bit」というロボットがあります。このロボットはmicro:bitで動いているため、複数のロボットが連携したり、複数の人とのやり取りを簡単に実現することができます。

もっとも簡単な方法で「コネクテッドロボット」を体験できるPLEN:bit

このような教材を使って、関係性を思い通りに作っていくことで、上手くいったり上手くいかなかったりを繰り返しながら、いろいろなことを学ぶことができると思います。

私自身は小中学校を卒業してからだいぶたってしまいましたが、もう一度「観察・発想・プロトタイピング」の視点で勉強をしてみたく、PLEN:bit/micro:bitを入手していろいろなことを試してみています。


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