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里山の春

「今朝は空気がキリッとしていて気持ちいいよ。」
「うん、朝方はちょっと冷えたけれど、でも本来なら このくらいの気温なんだよね。」
「ずっと4月や5月になる頃の気温って言ってたもんね。」
「このくらいの気候が、やっぱり しっくりくるよ。」
「青空も澄み渡ってるねー。」
皆、うんうん頷きます。

こざる達は、今日も いつものように楽しくお喋りしながら 朝ごはんの仕度をしています。

「これ、朝ごはんに食べようよ!」
こざるちゃんが、菜の花を持ってきます。

「あ、昨日、里山の りこちゃんが送ってくれた菜の花!」
「うん、素朴で綺麗で可憐で、春だね。」
皆、嬉しそうに眺めます。

里山の りこちゃんは、りこちゃんの古くからの友人で、里山に住んでいます。
同じ名前、りこちゃんなので、里山の りこちゃん、と呼んでいます。

「りこちゃんは、時々、家の畑でとれた野菜を送ってくれるんだよ。」
「本格的な農家ではないけれど、たくさんではないけれど、無農薬で作っているんだ。」

りこちゃんが送ってくれる野菜は、たまに ちょっといびつな形をしているものもあります。
けれども、中身がギュッと詰まっていて、どれも ずっしり重いのです。
色もとても鮮やかで、くっきりとしていて、においも しっかりとしています。
よく育って、ちゃんと養分を蓄えている野菜なのだと思います。

「この菜の花は、白菜の菜の花なんだよ!」
皆、うんうん頷きます。
里山の りこちゃんからの手紙に書いてありました。

「さっと茹でて、サラダに入れようよ。」
「春のサラダ、きっと りこちゃんも喜ぶよ。」

ラジオから、りこちゃんの大好きな歌が流れてきます。

「菜の花畠に入日薄れ 見渡す山の端霞深し
春風そよ吹く空を見れば 夕月かかりて匂い淡し」

「『おぼろ月夜』! りこちゃんが よく歌っていたよ!」

朝ごはんが出来たようです。

「りこちゃん、呼んでくるねー。」
こざるちゃんが一緒に歌いながら りこちゃんの部屋へ向かいます。

「里わの灯影も森の色も 田中の小道を辿る人も
蛙の鳴く音も鐘の音も さながら霞めるおぼろ月夜」

「りこちゃーん、朝ごはん、出来たよ! 今朝は春のサラダを作ったよ! ふわふわのオムレツもあるよ!
皆で一緒に食べよう!」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり始まって
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
里山は いつも通りの日々、静かで穏やかで美しい春のようです。
よい毎日でありますように (^_^)

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