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合法プロパガンダを味わう。

インド政治を楽しむシリーズ第二弾を書きます。前回(↓リンクの記事)はエモい「選挙シンボル」について書きました。

今回は合法プロパガンダの小ネタです。
前回のnoteで書いたように、印選管(インド選挙管理委員会)を調べていた矢先、かつ総選挙直前に選挙管理委員が辞めちゃったよ、ということで個人的に驚きました。しかも「なぜ」かは不明なまま辞めちゃったんです。

印選管トップ層構造は、委員長1名+委員2名で構成されてて前から委員1名空席になってました。んでアルンゴエル氏が辞職したので、総選挙の大大仕事やる前に委員長だけになっちゃった、という状況です。ただでさえ、9億人有権者の全国総選挙を公平公正に統括しなきゃいけないもので、真に公正さを求めるのは人間業では不可能ともいえる「大仕事」の直前に、選管委員が辞めちゃうなんてビックリなわけです。流石インド「民主主義の母(自称)」、といったところでしょう()。

ほんで、一夜明けまして本日の朝刊はどうなってるんかな、とみたところ。僕の住んでるウッタルプラデーシュ州では下記のような状況でした。

一紙だけがアルンゴエル印選管委員の辞職をトップ面に、あとはまさに「モディプロパガンダ」といえるほどの各紙統一トップ全面広告になってます。辞職ニュースを吹っ飛ばす勢い(政治的意志)を感じますね。アルンゴエル氏突然辞任ニュースの真相はさておき、この権力サイドのプロパガンダはとても萌えます。とても権力が権力らしい振る舞いをしていて、腐敗研究オタクの僕としてはレーダーに反応するものがあり、たまらなく興味津々です。

建前はモディ氏の主導する印人党に投票は呼び掛ける広告ではないですけれども、こんなゆるゆる選挙レギュレーションでいいのか、とは思います。現職の強み、とかそういったレベルではないです。

ちなみに昨日の全面広告は、同じ「Viksit Bharat 2047」政策広告(政府広報)シリーズのアッサム州編でした。この政府政策は先般うちだされていて2047年までにインドを先進国/脱途上国に発展させるというもの。そもそもボヤッとしていてようわからん政策なんですが、この政府予算で合法的に、各州とのコラボ企画として全面広告にしちゃうとは…。昨日はアッサム州編、今日はウッタルプラデーシュ州編、と。

昨日のアッサム編

空想日本の空想政策に置き換えたら、自公与党政府が「耀く日本(仮)」政策を決定して福島県コラボ(仮)、石川県コラボ(仮)などのWith都道府県イベント広告という建付けで各自民党系県知事との「岸田首相(自民党総裁)」の写真を毎日各紙が載せるようなもの。
下記は、実際の首相官邸のHPの画像ですが、こんな感じの写真が毎日のように衆院選総選挙直前に全国各紙面のトップになったら権力ゾワゾワな感じは理解できると思います。(日本の岸田首相と馳知事の共同広報は、あくまでも首相官邸ページ上にあるもので、国家予算による民間メディアジャックではないので、「権力ゾワゾワ」感にはあたりません。)

石川県アンテナショップ「八重洲いしかわテラス」オープン記念式典(首相官邸HPより)

プロ独のチャイナが、かえって党内から習近平個人礼賛を抑えるようなムーブ(本気で指導部がやろうと思ったら、もっと習近平個人礼賛に宣伝体制を変えてしまうことは可能、という意味で。)をしているのに対して、自称民主主義のインドがアクセル全開で指導者プロパガンダやる(米国のように肩を並べる強い対抗勢力も無く)のは、なかなか新鮮な感じであります。

「Viksit Bharat 2047」政策に関する記事↓。政策の方向性に関しては総合的な国家発展パッケージの一環なのでまぁ妥当なわけですが、だからこそそれが権力側宣伝としては使いやすいという一面はあるんでしょう。

今日紙面広告に登場しているウッタルプラデーシュ州の州首相はヨギ氏。モディ氏の舎弟/若頭です。めっちゃ従順。

ヨギアディチャナス氏 Yogi Adityanath 

そうそう、もうひとつ昨日Twitterに挙げたネタ。
そんなヨギ氏のお膝元ですから、我がウッタルプラデーシュ州の選挙前印人党の街宣車活動は凄まじかったです。何しろ爆音。そして党の旗を掲げた車両大行列。車の上から頭をだしている人もいます。なんなんだこれ。動画では呪文のように「声」が入ってると思いますが、これは遥か遠く先頭を走る車両の宣伝音声がずっと続いているんです。行列の最後に警察車両が「ピリオド」をうつように(しんがり)、ようやくやってくる様子が動画に映っています。

残念ながら、映画「マッドマックス」のような大型先頭車両を撮影しはぐったので、次はなんとか撮ってみたいです。あの360度に大音響バズーカが搭載されているゴツい印人党の車両をもういちど見てみたいんですよね。

映画「マッドマックス」より。前からみるとこんな大行列でした。

印人党ウッタルプラデーシュ州公式Twitterは、もうエフェクトバリバリのモディ氏が凄まじいことになってました。

モディはん、ライトサイドに転生したパルパチーンみたいに。

https://twitter.com/myogiadityanath/status/1766503891321917827

州首相のムーブもそれぞれの支持政党カラーによるわけですが、下記がWikiでまとまっている州首相のカラー。オレンジがインド政権与党派です。

一方その頃(とうか昨日同日に僕が撮影したものですが)、ウッタルプラデーシュ州左派の地域政党「社会党」は、比較すると寂しい集会を開いていました。
「左派政党の盛り上がりにかけるところにも盛り上がる」のが僕です。権力ゴリゴリの党派も、押し出されていて閑古鳥が鳴いている左派も、僕はどちらも好みです。僕自身は、統一地方選、住民投票、首長選、国政選挙と、数え切れないほど日本の選挙には「選挙事務所内部の人間」として関わった経験があるので、この閑散とした集会の激渋な状況も人の動きに見所があったりします。

選挙シンボルは激渋な「チャリンコ」。

https://samajwadiparty.in/about-the-party


ますます楽しくなってきた合法関ケ原。投票権は無いですが盛り上がっていきたいと思います。

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