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~そんな小説作を残したい。の後日譚、。深夜書店、。

 郵便局の帰り、行くまでに通った河に泳いでた黒い鳥の姿を探した日があった。
 深夜書店、って題名、そんな小説作を残したい。と、。
 日々は過ぎていく、。悠々と、いとおしくも、。

 近所へふらりと散歩に出かけた際に、前に河に泳いでた黒い鳥の姿を探してはみた。しかし、その姿とまた出くわすことはなかった。
 自然世界の生きもの相手のことだから、一期一会というものだ。
 不審者に映らないかとドキドキしながらも、写真に撮ったことがささやかに誇らしくもなるおっさんだった。あのときに後方で、河とは反対の場所で急ピッチで工事されていた新規営業開店準備の店舗へとスマホを向けて撮影していた女子高生がいた。そんな一瞬のコラボこそ、また出くわすことはないだろう。
 文明世界の生きもの相手のことだから、さらに一期一会というものだ。

 河に泳いでた黒い鳥へとスマホむけていた、おっさんの至近距離で店舗へむけてスマホを向けている女子高生とのコラボレーションこそは心の景観に残されている。
 『ここいらの住民、特に若者世代にしては近場に便利なコンビニができるのは写真に撮るほど嬉しいことなのか?』
 なんて感慨で表現してたおっさんながらも、その行動はもはやそんな若者世代以下の童心だと苦笑するしかなかった。大した用事もないのに、新しく店が開店されたからと足を向けているのだった。
 
 河とは反対の場所で急ピッチで工事されていた店舗は予定期日どおりに開店されていた。
 今現在、まさにはじまったといわんばかりのコンビニ店だ。
 新規開店されて2日ほど経て足を運んでみた。どこにでもあるつくりの店内ではあるけれども、店員さんの「いらっしゃいませぇ~」の声も元気で新鮮に響いてくるのだった。
 いい年こいた、しかも、とある場所から戻ってきたおっさんにとっては眩しいくらいの心地といえた。ふらりと店内に入ったはいいが、別段欲しいものがあるわけではないので困った。
 おっさんは、とある場所での生活の恩恵として喫煙者ではなくなっていた。
 ふらりと入店して煙草購入することもないわけだ。
 眩しいくらいの心地というものは何とも、おっさんにとっては居心地のよろしいものではないのだった。散歩がてらに河の景観眺めつつも、この新規営業開店のコンビニに来たわけだった。ズボンのポケットにはレジ袋不要としてビニール製の買い物バックまで押し込んでいた。

 これも苦笑するポイントであろう。そう思った。
 
 なかなかの用意周到さに、おっさんとしてはなんか恥ずかしい。
 子供時代、友人たちと新しい店や建物なんかにまっすぐに飛び込んでいった感覚だ。
 これもまた、はじめてなのに懐かしい、というやつだ。書物のページをやわらかな感触でめくるみたいな、触れたか触れていないかくらいの微妙な心地だ。
 
 遥か遥か昔の少年時代、故郷地に駅ができて新しい団地やマンションが立ち並んで、旧家だらけだった町が様変わりしていく時代まで懐かしく甦ってきた。

 「おもいで」、と書物は似てる。

 コンビニにマイバック持参で来たおっさんではあるが、書籍コーナーの漫画本を一冊選んで買うことに決めた。コンビニコミックというものだ。書店では売っていないコンビニならではのコミック本だ。「三丁目の夕日」にしようか「鎌倉ものがたり」にしようか迷ったけれども表紙の絵に面影との「おもいで」を感じて「鎌倉ものがたり」だけを買うことにした。

 おっさんは昔日、古書や新古品色々のリサイクル店を営んでいたことがあった。そのときの古本やレコード、CD、DVDなんかは倉庫借りて歳月経てもまだ持っているのだった。
 業者へと二束三文で買い取ってもらうのは簡単だ。けれどなんか歳月経たことに対して申し訳ない感じにもなるのだ。
 希少価値があるものにはネットで見てると元の値段より、けっこう高くなってたりもしていた。
 ゆくゆくは、おっさんの手でフリマでせっせと世の中に販売し、希少なものなんかは、マニアとして求めてる人のところで大切にされたらと願う次第なのである。
 
 本にしても、贈ったり贈られたりの「おもいで」が沁み込んでたりする。
 大切にまた誰かに託していく気持ちって、尊いことだと信じたいのだ。
 自分のものを買って読む気も失せるほどに住居にはもちろんのこと、倉庫にも本は売るだけ持っているわけだ。けれども、新しい本を買うのはやはり本好きとしては嬉しい。
 
 とある場所から戻って、本を買う機会も数えるほどではあったけれど、贈る機会にも恵まれた。 
 愛おしい「おもいで」にもまた書物の面影として永劫に刻まれて欲しいと思うのだった。
 さてコンビニでこのたびにして買った本は、おっさんへのご褒美だ。
 ん?、なんか褒められることでも、?。
 
 〝 面影、が小鼻ふくらませてほがらかに微笑む。
  『生きなあかんねん、あんたはな。・・生きな、生きなあかんねん。』 〟

 
 一生懸命、生きてるつもりやから、。懐かしい、未来へ、。

 古本、リサイクル本の類。業界用語がある。
 ほぼ同時代を生きてる作家のものや刊行物のは「白っぽい」本となる。色も新しいし、まさに白っぽい新刊書の古本だ。
 「黒っぽい」、は刊行後の経過年数の長い絶版本のことだ。見た目も古くて黒っぽい古本だ。どういったものであれ、希少価値があったりする。

 うだうだ想い巡らせつつの中、おっさんは不審者に映らないかとドキドキしながらもレジへと向かった。やがては「白っぽい」本となる。コンビニコミックをもっていく。
 入店したとき「いらっしゃいませぇ~」の声も元気で新鮮で、ここの店の化身であるかの若くて可愛いバイト女子の店員さんのレジだ。
 はじめてなのに、懐かしい、眼差しに見つめられた。
 「レジ袋はどうされますか?」との問いに、おっさんは誇らしげにズボンのポッケから買い物用のビニール製マイバックをと取り出して、「大丈夫ですよ」と言ってのけた。
 
 新規営業開店準備の店舗へむけてスマホを向けていた女子高生に似てなくもない、もしや?、あの日のスマホの娘さんでは?と言うわけにもいかないのであるが、。(笑)。
 文明世界の生きもの相手のことだから、これもまた一期一会というものだ。

 コンビニコミックをマイバックに入れて悠々と店を去った帰路、〝お世辞にも綺麗ではない河で泳ぐ黒い鳥〟を撮影した場所に、今日は「白い鳥」が佇んでいるのを見つけた。

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河へとスマホを向けて何かを写しているおっさんの姿が、不審に映らないことの自信の証の象徴のようにも映えてた。
 時刻は夕刻だった。
 もっと夜が深まるとお世辞にも綺麗ではない河ではあるけれど、この河の水面に星空が映ると綺麗なんだろうなと、思った。
 
 そんな気持ちにさせてくれる、いとおしい面影を想った。

 歳月経て暮らしはじめている。愛くるしい佇まいであるとか、魅了される眼差しの煌めきであるとか、ひとときのなか見つめていると思い出してしまうのだ。
 生きてるってことを、。

 自分が、現在、生きてるってことを。

 郵便局の帰り、行くまでに通った河に泳いでた黒い鳥の姿を探した日があった。
 深夜書店、って題名、そんな小説作を残したい。と、。
 日々は過ぎていく、。悠々と、いとおしくも、。

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