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あの子が「永久保存しておきたい」もの

 私はコーヒースタンドで働いている。メインの商品はコーヒーだけど、この夏、地元の高校生と一緒にタピオカミルクティーを開発した。とっても人気商品でたくさんのお客さんが買いに来る。

 今日は小学生の姉妹がタピオカミルクティーを買いに来てくれた。そのタイミングは、前に4つのドリンク注文が入っていて、少し待たせてしまった。お店の外で待っている妹ちゃんが何度も覗いてくるのが見える。思わず「すみません、もうすぐ出来ます・・・ごめんね!」と声をかけに行くと、2人でお店に入ってきてくれた。

 ちょっとイライラさせちゃったかなと不安になりながら、キッチンの方に戻ると、私がタピオカミルクティーをつくる様子をじっと見てくる。とくにお姉ちゃんはとっても興味深々の様子だった。

 少し、焦る気持ちもあったけど、お客さんとお話しするのが好きだから、ちょっとお待たせしちゃった時なんかは私はお喋りになる。

「お料理好きなの?」
「う~ん、あんまり」

「タピオカ、好き??つくったことある??」
「友達と作ったことあるよ。甘いのが好き~」

 ドキドキしながら、聞いてみる。

「うちのお店でタピオカ売ってるの、何で知ってくれたの??」
「妹がお父さんと2人で前に買いに来て、美味しいって教えてくれたの。何度もめっちゃ美味しい!って言ってくるのを聞いて、私も飲みたくなったんだよ!タピオカ飲むために、きた。

・・・えええ、何それ。とっても嬉しい!
てっきり、近くの遊び場にきたついでに、お店に寄ったのかな?なんて思っていたら、うちのタピオカ飲むために来てくれたなんて!!となり町から車で20分よ・・・ありがとう。家族の口コミすごい。

 というわけで、出来上がったタピオカミルクティーをはいどうぞ、とお手渡し。ちょっと探るような感じでストローでかき混ぜながら、目の前で飲んでくれた。

その感想がこちら。

 「うわ、美味ぁ・・・」心の声が漏れちゃいましたって感じで出てきた一言。嬉しかった&安心。でも、彼女は続けて「このタピオカミルクティー、このまま永久保存したい・・・」って。

 初めて言われた美味しいを伝える感想に、わたしの心はぎゅんっと掴まれてしまった。出てきた瞬間に、待ちきれずに出てきたものを口に運び、幸せそうにしている姿が私は何よりも嬉しい。子どもは素直だから、大人が適当に言っているかもしれない、美味しいという言葉よりも素直に受け止められる気がする。永久保存したいと言いながらも、ゴクゴクとタピオカミルクティーを飲んでくれていて、お店を出る頃にはほとんどなくなっちゃってたの、めちゃくちゃ愛おしかったな。

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 私も彼女の伝えてくれた言葉を永久保存しておきたい。かれこれ、大学を出てからずーっと飲食の仕事をしている。いい仕事だと思える。やさしくて、素直なお客さまとの出会いとか、かけてもらう言葉とかに喜びが詰まっているこの仕事が私は好きだ。

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