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妻が終始サイコ。『ヴィーガンズ・ハム』

トータルの感想のうち、面白かったとグロかったが同じくらいのウェイトを占める。そのくらい軽快で面白かったし、たまに引くぐらいグロかった。

肉へのこだわりがめちゃくちゃ強い夫と、どうにかして店を立て直したい妻が二人で営む経営ヤバめの肉屋。

ある日ヴィーガンの過激派集団に店を襲われる。

が、後日たまたまそのメンバーの一人と遭遇し、なんだかんだあって復讐を遂げる。

その死体処理に悩んだ挙句、肉にして売ったらそれが美味しすぎて客の中で話題を呼び、店が大繁盛しちゃうという物語。

多様性のこの時代にヴィーガンディスのようなテーマ。攻めすぎである。

終始ヤバい話であるが、一番ヤバいのは明らかに妻ソフィー。見た人が皆口を揃えてそう言うだろう。

こいつに関しては一貫して人を殺めたことに対する悲しみと後悔が一切ない上、自分では一人も手にかけず、夫バンサン(※)を上手くコントロールして実行犯に仕立て上げる。

映画ではずっとこの2人の動向を追うので他愛もない会話シーンなども多く忘れがちだが、ソフィーの方はホンモノのサイコパスだった。

あるシーンではバンサンが「こんなのはサイコパスのやることだ!」と発言していたが、ソフィーは真っ向から否定。いわゆる"サイコパスは自分のことをサイコパスだなんて思わない"のそれであった。

映画の構成?見やすさ?的な部分で印象に残ったのは、コミカルさとスリルが絶妙だった。

コミカルさというのは、例えばめちゃくちゃグロいシーンには必ず軽快な音楽やロックがかかっていたりとか、謎の決めポーズシーン(サムネ)があったりとかの部分。「born to be wild」がBGMで使われてたりする。

加えて、殺戮を通して関係性の良くなかった夫婦二人の仲が修復されていく。その辺も見どころ。

逆にスリルは、いわゆる"バレそう"なシーン。警察が訪ねてきたときに愛犬が死体の一部を持ってくるとか、提供した肉からペースメーカーが見つかってバレそうになるとか。

テーマももちろん過激で面白いが、この辺のバランスも飽きない一因だったと思う。

いろいろツッコミどころの尽きない映画ではあったが、めちゃくちゃ面白かった。

(※)「バンサン」というのは吹替での夫の名前。ずっと「バンさん」かと思っていたら、どうやらvincentのことだったらしい。見終わるまで勘違いしてた。やけにソフィーの呼び方が丁寧だなとは思っていた。

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