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スタートアップでの経験と名著「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」から学ぶ、チームの成果の出し方 【評価面談編】

こんにちは、高石です。

ビットキーというスタートアップでファームウェア開発チームの責任者をやらせてもらってます

自己紹介毎回書くと鬱陶しいのでそこは1記事目に譲ります。

【本の紹介】
こちらの記事では,HIGH OUTPUT MANAGEMENTのうち主に第4部における「評価面談」について記載していこうと思います。また、同じく第4部の中で記載されている「採用面談」については、更に別の記事を用意する予定です。

4.選手たち 〜ピープルマネジメント:採用・評価。それぞれの面談プロセスでマネージャが成すべきこと〜

実際には本書の4部には上記以外にもメンバーのアウトプット向上に向けた「メンバーの教育」「メンバーが働く動機付け」などの方法論や、「退職を告げられた時にマネージャーがすること」などについても記載されています。

が、現時点の僕では「自分自身の経験を通して語るレベル」にまで理解が及んでいない為、こちらの記載は割愛します(書かれていることは非常に素晴らしく、まだ僕自身の経験が足りない、というだけです)

さて、第4部では、主に「メンバーたちとの面談」に対してフォーカスが当てられています。

この「メンバー」というのは「今一緒に働いている人」というだけではありません。以下の3属性全てのメンバーに対する行動指針が書かれています。

ある一人の採用候補者に焦点を当てた場合、時系列的には①〜③という流れとなりますが、ここでは先に②について記載します。

①.今後、一緒に働くことになりうる人
②.今現在、一緒に働いている人
③.今後、今の職を離れてしまう人

なぜ2から記載するのか、についてですが「本書の記載順もそう」だからです。

これは僕の勝手な想像ですが、「今いる社員に対するコミュニケーションをしっかりしてから、「1」について語るべきだ」と著者(または編集者)が考えているからなのでは、と思っています。あくまで推測ですけどね。

さて、本書の中では「今いるメンバーに対して実施する人事考課」について詳細に語られています。
著者によると、人事考課は以下のように表現されています。

この回答を見ても、考課とは、非常に複雑でむずかしい仕事で、マネジャーにとってもなかなかうまくこなせないものであることがわかるだろう。 しかし、実のところ、そのような考課をすることこそ、管理・監督者が部下に提供できる〝タスク関連フィードバックの中でたったひとつの最重要な方式〟なのである。
(273p)

第2部にて「マネージャの成果=チームの成果である」と語られていますが、その「チームの成果」を出す為に「最高のテコ作用(レバレッジ)を効かせることができるか」が、この人事考課にて決まる、ということです。

たしかに、会社に属する社員にとって「人事考課」は3ヶ月・半年程度に1回行われる「一大イベント」であり、自身の評価を聞くだけでなく、メンバーの生活面にすら響く(費用的な意味で)、ポジティブにもネガティブにもなり得ることなのでしょう。そしてその影響は3ヶ月、半年の間波及し続けると。チームの成果に直接繋がっているという点も、大きくレバレッジが効くという点も納得です。

本書にはこの考課についても様々な知見が盛り込まれているのですが、僕が特に価値があると感じた内容は以下の通りです(一部高石にて要約)

・「アウトプットの測定」と「内部的測定」の適当なウェイトづけは、状況によって50/50、10:90、90:10になることもあり、それが毎月変動することさえある(227p)
・マネージャーがしなければならないことは、自身の感覚能力の「全て」を使い、話しかけている相手を観るべきである(283p)
・考課面談では、相手に多くを伝えすぎない(285p)
・こと考課においては、マネージャーは「メンバーと対等」であってはならない(296p)
・メンバーの「業績の改善」に繋がるフィードバック(=ここを直して欲しい、と伝えること)を、勇気を持ってしなければならない(288p)

ああ、もう、価値あること多すぎ。書評書く身にもなって欲しい 笑

・「アウトプットの測定」と「内部的測定」の適当なウェイトづけは、状況によって50/50、10/90、90/10になることもあり、それが毎月変動することさえある

ここは端的に。「アウトプット」が最重要、といいつつ、「長期的にアウトプットに繋がる活動だが現時点では最終アウトプットは出ていない」様な活動もしっかりと評価すべき、という内容です。
そして、その比重はタイミングによって変わるべきものであり、短い場合は毎月の如く変わるものさえある、と。

これは、「現時点で最終的なアウトプットは出ていない」が「今後、アウトプットに繋がることは明確である」という点を評価すべきである、ということだと認識しています。「可能性の罠」の項で後述しますが「今後能力が伸びそうなので評価してあげよう」という考えによる評価はNGである為、注意が必要です。

・マネージャーは「自身の感覚能力の全て」を使い、話しかけている相手を観るべきである

この部分では、以下の3つのLを意識しなさい、と記載があります。

Level:相手のところまで降りていって率直に
Listen:相手の話をよく聞き
Leave yourself out:自分を圏外において、客観的にみること

著者はこの「Listen:聞く」という点において、「マネージャ自身が、メンバーに対して言っていることが伝わったと満足感が得られるまで、根気よく話し続けなさい」と言っています。
そして「相手が正しく解釈しているかどうか、全感覚機能を使って『全面的なリスニング』をしなさい」と。

例として、以下の「良い教授」の例が挙げられています。

良い教授は、自分の言っていることが生徒に理解された時のことをわかっている。もし理解していない場合は、もう一度同じことを説明するか、別の言葉で説明し直す(285p 一部高石にて略) 

逆に悪例として「黒板ばかり見つめてもぐもぐと話し、生徒たちと視線が合うのを避ける教授」も挙げられています。

これは「相手の言動を簡単に鵜呑みにしないことが重要である」、と僕は理解しています。特に「必要以上に謙虚なメンバー」は「マネージャが自分の為に時間を使っていることを申し訳なく思う」ということをしてしまいがちです。その結果、納得していないことでも「わかりました」と受け入れてしまい、結果として「考課」で伝えた内容がその後に活きずに終わってしまうことがよくあります(実体験)。
これを避けるために、全神経を集中させて相手と対話しなさいと筆者は述べているのです。一人ひとりに真剣に向き合って、「相手の今後の改善」に全力を尽くせ、と。

・考課面談では、相手に多くを伝えすぎない

こちらは僕にとって目から鱗だった内容です。
著者は以下の様に述べています。

カギはあなたの部下が、たいていの人と同じように、事実や問題や提案を処理する上で一定の〝有限能力〟しかないと認めることである。あなたは彼の業績について7つの本当の事実を知っているかもしれない。しかし、彼の能力が4つしかないならば、他の3つについて熱心に話しても徒労に終わるだけだろう。悪くすれば、部下を感覚的にこれ以上は受けつけない状態にして放り出すことになり、部下は考課から何も得ないで立ち去ることになろう。人間には一時に吸収できるメッセージに限界があるということは事実なのである、とくに自分自身の考課を受け止める場合はそれがあてはまる。(285p)

一度原点に立ち返り、「プレイヤーとしての自分」と「マネージャーとしての自分」の双方を想像したときに、筆者が言っていることが非常によくわかりました。

「プレイヤーとしての自分」は、「自身が完璧だとは思っていないし、直せる部分は直したいが、限界はあるからやれるところだけやっていこう」と考えます。(悪いところ全部直したいなんていうのは貪欲なのではなく無謀なだけ)

一方で、「マネージャーとしての自分」は「良い点は全部伝えた方が良いし、直すべき点できるだけ伝えた方が良いだろうし、、、時間が長くなってもいいからできるだけ伝えよう」と考えていました。

仕事のプレゼンなどでは「要点は絞りに絞った方が良い」ということは意識していたつもりですが、「メンバーに対する考課面談」でも同じことが言える、という点は眼から鱗であり、新たな気付きを得ることができたと感じています。

・こと考課においては、マネージャーは「メンバーと対等」であってはならない
・メンバーの「業績の改善」に繋がるフィードバック(=ここを直して欲しい、と伝えること)を、勇気を持ってしなければならない

これら2点はほぼ同じようなことを言っています。
一言で言えば「ヌルい関係性でいるな。お互いプロフェッショナリティを持て」ということである、と僕は認識しています。

メンバーに何か「改善点」があるのであれば、マネージャーとして遠慮をしてはいけない。「厳しいことを言わない良い人」であることは諦め「良くない点は明確・かつ的確に伝える」ということを当然のようにこなさないといけない。

人から嫌われたくない」という人にとっては難しい内容、かもしれません。僕自身も「メンバーを褒めて喜んで貰う」ことはいくらでもしたいですが、「悪い点を伝えて改善してもらう」については好き好んでやりたいとは思いません。

ただ、自身が会社から「チームとしての成果を出すこと」を期待されている以上、それに答える為に、しっかりとメンバーに改善点は伝えようと意識しています。

その上で。「日頃のマネージャの自分の言動・行いに不満・違和感があるならそれは伝えてくれ」とも伝えています。

その結果、クリティカルヒットが飛んできたことは何度もあります笑
(この辺はインタビュー記事にも記載)

・実績を評価するべきであり、「可能性の罠」に嵌ってはいけない。

最後に項目として上げるのが、この「可能性の罠に嵌るな」という筆者からのアドバイスです。

これは「いい結果を上げ『そう』」な人を安易に評価してはいけない」という内容です。

著者はある「実績を残せたなかったマネージャー」を評価する時の例を以下の様に綴っています。

このマネジャーに高い考課をつけたら、さらに実績をあげるためには、この良きマネジャーのごとく「行動」し、この良きマネジャーのごとく話し、この良きマネジャーを見習わなくてはならないが、この人のように実績をあげなくてもよいということを、インテル社全体に対して伝えていることになるのだ。(280p)

この結果、そのマネージャー本人に対しては非常に厳しく辛い感情を与えてしまうかもしれません。が、「『組織全体』で見たときはそれが正しい姿である」というのが著者の主張です。

「彼のように、行動、話し方だけしっかりしていれば評価されるのだ」という印象を他の社員に与えてはいけないのだ、ということを筆者は教えてくれています。

1対1の人間関係で考えた場合と、組織対1の関係で相手と対峙する場合。双方のことを考えながら人と接しなければ行けないのだ、と言うことを本書を通じて改めて学んでいます。

「面倒だな、大変だな」という思いと「でも、面白いな」という複雑な感情が僕の中を渦巻いています笑

さて、続いて「採用」についての面談についても記載しようか、と思ったのですが、この記事が結構な長さになってきたので、ひとまず中断しようと思います。続きは次回の記事にて。

次の3記事までの全ての内容をひっくるめても、「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」の全体の価値の2割も伝えきれていない、と考えると、本当に歴史に残る名著であることを感じますね。

何度も何度も本書を読み返し、自分のマネージャとしての活動を振り返ることで、より一層価値の高い人材になれると僕は確信しています。

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