見出し画像

2020年 UIデザイナーが読んで良かった本 9冊

こちらは dely #2 Advent Calendar 2020 の12/22の記事になります。
昨日はyuaoさんのデザインの指示に迷った時は、「要素に分解」がいいかもという記事でした!

現在、delyではエンジニアやデザイナーが日替わりで記事を投稿しています。どれも読み応えがありますので、よかったら下記のリンクもご覧ください。
dely #1 Advent Calendar 2020 - Adventar
dely #2 Advent Calendar 2020 - Adventar

ーーーーー PRおわり ーーーーー

UIデザイナーのkassyです。あっという間に年末ですね。
今年も読んで良かったUIデザイン関連の本を中心に紹介したいと思います。気になる本があったら、年末年始のお供にぜひどうぞ!

前回書いた記事もよかったらぜひご覧ください。


1.『オブジェクト指向UIデザイン──使いやすいソフトウェアの原理

オブジェクト指向UIデザイン(OOUI)で有名なソシオメディア上野さんの本。そのメソッドについてはSNSや雑誌などでも公開されていましたが、ついに一冊の本としてまとまった形で参照できるようになりました!表紙は固めな印象ですが中身自体はイラストや解説図なども豊富に用いられており、初学者でも手に取りやすいものになっています。

ユーザーが使いやすいUIを作る際にOOUIの知識はほぼ必須と言ってもいいぐらいのものなので、デザイナーだけでなくエンジニアなど多くの人に読んでほしい一冊です。

▼ おすすめポイント
・OOUIについてそのメソッドを具体的に学ぶことができる
・単なるテクニックではなくオブジェクトやインターフェースの歴史・哲学についても知ることができる


2.『行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する

人はなぜ行動するのか?に興味がある方にはオススメしたい本。特に行動経済学やフォッグ式消費者行動モデル、フックの習慣化モデルなどを一度でも耳にしたことがある方には是非読んでほしい一冊です。

この本の中ではCREATEアクションファネルという行動モデルが紹介されているのですが、これはフォッグ式消費者行動モデル(行動 = 動機 × 実行しやすさ × トリガー)をより実務で使いやすい形に整理しており、ここだけでも一読の価値があります。

そしてこれはとても重要なポイントなのですが、この本は冒頭でユーザーを騙して何か特定の行動を恣意的にさせようという試みに対しては明確に拒絶をしています。

"もしあなたが、あなたが人にさせたいこと(そして、その人はしたいと思ってもいないこと)をやらせるための本を探しているならお門違いだ。"

Kindle版がないのが少々残念ですが...プロダクト開発を通して人の手助けをしたいすべての方におすすめの一冊です。

▼ おすすめポイント
・行動科学の知見を活用して
どのようにプロダクトデザインを行えばよいのか網羅的に知ることができる
・人の行動を"操作する"方法はこの本には書かれていないので、そのような本を探している場合は別の本を探したほうがよい


3.『プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける』

プロダクトマネジメントについて体系的に書かれた本。副題にもなっているビルドトラップとはアウトカム(成果)ではなくアウトプットが目的となってしまっている状態のことです。

スクラムはともするとベロシティを安定させることが目的となってしまい、アウトプット製造機になってしまう(そして不要な機能がスプリント毎にリリースされてしまう)危険性をはらんでいるのですが、そのような状態に陥らないためにどうすればいいのかが具体的に書かれています。

実を言うと自分のチームも一時期そのような状態に陥ってしまっていたのですが、この本のおかげで目が覚めたといっても過言ではありません。
これまたKindle版がないのが少々残念ですが...おすすめです!

▼ おすすめポイント
・アウトプットではなくアウトカム(成果)にフォーカスするためのヒントを得ることができる
・プロジェクトマネージャーからプロダクトマネージャーに変わりたい人にもおすすめ


4.『ゲンロンβ21』

批評家の東浩紀氏が創業したゲンロンが毎月配信している電子マガジン。今回の21号の中に「触視的平面の誕生」という短い哲学的なエッセイがあるのですが、これがとても興味深い内容でした。

東氏の議論をざっくりと要約すると、西洋哲学では見えるもの(虚像)/見えないもの(実像)という二項対立がメディア論や映像論などの前提となっていたけれど、タッチパネルという「見えるものでありつつ実像でもある」というインターフェースが登場することによってそれが根底から覆りつつあるのではないか?というものです。

タッチパネルの視覚的でありつつ触覚的でもあり、受動的でありつつ能動的でもあるという特徴を「触視的」と名付け、次号以降にも議論を引き継いでタッチパネル時代の哲学を考察していきます。その過程ではインターフェース論の重要人物であるアラン・ケイについての考察などもあり、GUIについてその本質的な意味を考えたいすべての方におすすめです。

▼ おすすめポイント
・インターフェースのその本質的な意味について知ることができる

・同じ論点を共有する大山顕『新写真論』もあわせておすすめ
・この議論だけを追いたい場合は22号27号35号もあわせておすすめ


5.『鈴木敏文の「統計心理学」 「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む』

セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏について詳しくまとめられた本。「統計心理学」という統計学と心理学をかけ合わせたその独自のアプローチ方法や顧客心理との向き合い方などは、ユーザーファーストを掲げるデザイナーならば耳を傾けたい良書でした。

"お客の側に立った合理を考えたら、われわれはものすごく不合理なことを克服しなければならない。売り手の合理は買い手の不合理、買い手の合理は売り手の不合理。要は、お客のわがままに対して、われわれはどこまで歩調を合わせることができるかどうかです。売り手側はほとんどの場合、自分たちの都合を優先してしまう。本当には顧客のことを考えていないのです"

この本の中で繰り返し強調されるのが上記のような非合理こそが合理であるという逆説であり、その逆説の徹底が具体的な事例も交えながら紹介されています。統計心理学というとっつきにくいタイトルですが、複雑な方程式が出てくるわけではないのでご安心ください・・!!

▼ おすすめポイント
・コンビニエンスストアという日毎に変化する中で磨かれてきた鈴木流の顧客心理との向き合い方について学ぶことができる
・鈴木敏文氏の発言部分を読むだけでも大いに参考になる


6.『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか? 』

デジタルマーケティングをめぐる状況や打ち手についてリアルな目線から整理された本。垣内氏のキャラを知っている方にはおなじみの明快な語り口でデジタルなら何でもできる幻想に対して「このようなことはできません」「これは無駄です」と次々に切り捨てていきます。

デザインについても「Webサイトリニューアルで変わった感を出しても無駄」「全ページでデザインを統一するのも無駄」「ブランディングも無駄」などと(明快なロジック付きで)バッサリ切り捨てているので、デザイナーも参考になる部分が多いです。耳が痛いですが。。

▼ おすすめポイント
・デジタルが苦手なこと/得意なことを整理できる
・その上で有効なデジタルマーケティングの定石を知ることができる


7.『世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術』

ニュータイプ』が話題となった著作家山口周氏と"くまモン"などで有名なクリエイティブディレクター水野学氏の対談本。役に立つものから意味があるものへ移行しなければいけないというテーマで、様々な話題がディスカッションされるのですが、水野氏が対談相手ということもあってかデザインの話題が多くなっています。

例えば日本車のエンブレムはイニシャルをそのままデザインしたものが多いのに対して、外車では動物や盾など背後に物語を感じられるデザインが多い。この違いは日本の企業が意味をまとめることができないが故に起きているのではないか...など。

デザインの教養書としても楽しめる一冊です。

▼ おすすめポイント
・日本の企業が陥っている"役に立つもの信仰"の弊害が具体的にわかる
・水野さんのプレゼン方法などデザインの本としても面白く読める


8.『絵を見る技術  名画の構造を読み解く』

個人的に今年のベスト本です!名画の見方を解説する本は今まで何冊も読んだことがあるのですが、この本はダントツで解説がわかりやすかったです。

なぜ画面の端に(一見すると邪魔な)要素が置かれているのか。なぜこの位置にこの人物が配置されているのか。なぜこの手の位置なのか...etc.
この本を読むとその理由が非常にクリアに理解できました。

また、この本を読んだ副次的な効果として、服部一成氏や仲條正義氏などのグラフィックデザイナーの作品が、今までよりもその意図がよく分かるようになったのは個人的には嬉しい驚きでした。

※その時に興奮のあまり会社のSlackに投稿した内容

スクリーンショット 2020-12-20 2020-12-20-日曜日   1.51.55

グラフィックデザインに興味のあるデザイナーには胸を張っておすすめできる一冊です。

▼ おすすめポイント
・絵画をどのように見ればよいのか論理的に理解することができる
・JAGDA系のデザインもこの本の知識を活用して読み解くことができる


最後は結局、倫理。

個人的に今年読んだ本をリストアップしていて思ったのですが、いわゆるハック系の本は一冊もありません。

delyでも数年前まではグロースハック的な施策も検討されたりしていたのですが、最近ではそれを明示的にやめようという話になり、ユーザーファーストで全社的に動くようになりました。

特定の部署だけでなく全社的に、です。

前回の記事でも倫理について書きましたが、今年は前回以上に倫理について考えさせられた年でした(note株式会社の様々な不祥事を見て、noteという媒体で記事を書くことに葛藤があったのは正直な感想です)。

そのような中で感銘を受けたのが、最後におすすめするこの本。

9.『アフターデジタル2 UXと自由』

発売後に大きな話題となった『アフターデジタル』の続編本。前作は中国がいかにテクノロジーによって大きく変化しているか、その近未来的な姿に圧倒される内容だったのですが、今作はテクノロジー礼賛ではなく、逆にそのようなテクノロジーの熱狂に警鐘を鳴らす内容で、個人的には前作より興味深く読みました。

"企業でDXを推進し、OMOやデジタル活用で世の中にインパクトを与えようとする方々が、仮に「UXインテリジェンスにおける精神」を持たないで企業をデジタル進化させてしまうと、社会にもユーザーにも受け入れてもらえなくなる可能性が極めて高いです。さらに、そうした事例がいくつも世の中に出てしまうと、社会的発展が止まってしまう可能性が高くなります。DXを推進する人や、アフターデジタルに対応しようとする人、および、その組織はすべからく、「次世代の価値を作る体験設計者」として、社会・企業・ユーザーに受け入れられるアーキテクチャーを作る責任があるのです。"

次世代の価値を作る体験設計者として、アーキテクチャーを作る責任。

これこそが現代のデザイナーにも求められているものだと思います。この本の副題が最近流行りの「DX」ではなく「UXと自由」となっているのも重要なポイントであり、その理由もこの本の中で解き明かされています。

ぜひ読んでほしい1冊です。

▼ おすすめポイント
・アフターデジタルやOMOの落とし穴を知ることができる
・DXとUXの関係性を理解することができる
・前作の『
アフターデジタル』を未読でも楽しめる


以上、今年読んでよかった9冊でした。

現在、delyではエンジニアとデザイナーを絶賛募集中です。ご興味ある方はこちらのリンクからお気軽にエントリーください。

さらに、定期的にTechTalkというイベントを開催し、クラシルで利用している技術や開発手法、組織に関する情報も発信しています。ノウハウの共有だけでなく、クラシルで働くデザイナーやエンジニアがどんな想いを持って働いているのかリアルに感じていただけるイベントになっていますので、ぜひお気軽にご参加ください!

明日は奥原拓也 / クラシルPdMによる「KPI自動通知Botで始める 数字に執着するプロダクトマネジメント」です。
こちらもお楽しみに!

この記事が参加している募集

推薦図書

買ってよかったもの

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?