クローシェ1

クローシェ帽ってご存じですか?

 クローシェ帽とは1920年代、30年代に流行した帽子で釣り鐘型で頭にフィットされるようにデザインされている。
少し前になるが、アンジェリーナ・ジョリー主演のチェンジリングという映画でかぶっっていたので目にしたことのある方もいるのではないだろうか。

 クローシェの名前は、フランス語の『鐘』(clocheと書く)から由来されている。
流行当時、この帽子に似合うヘアスタイルとしてイートンクロップ(油性整髪料などで頭にぴったりさせサイドに流した髪型)やショートカットも同時に流行した。


 クローシェ帽は通常、フェルトを素材としているので頭にフィットしやすく、額を隠すように深くかぶるようにデザインされている。
また、この時に帽子のへりからわずかに眼がのぞくところまでかぶるのが一般的とされていた。

 クローシェ帽は、様々なシーンにも適するように進化し変貌を遂げていった。
ストロー素材を用いて夏用のものが出てきたり、パーティーやブライダルにも対応できるように素材にビーズやレースも用いられるようになった。
 当時の帽子と言えば仕立やシルエット等、シンプルなものが好まれていたようだが、クローシェ帽は違った。
アップリケや刺繍を施したり、ブローチやスカーフ、扇状の羽などをあしらうなどの多種多様なアクセントが付け加えられた。


 更に、クローシェ帽に付けられるリボンによって女性から男性への様々なメッセージが隠されていた。
【矢のようなデザインのリボンは、女性が独身であるが、すでに誰かに思いを寄せている】
【堅く結んだリボンは既婚である】
【派手な蝶型のリボンは女性が独身でありかつ異性との交際に関心があることを示している】
等、男性はクローシェ帽を見て女性へのアプローチをし、女性もまたそれを待っていたらしい。

 また、深くかぶるようにデザインされていたクローシェ帽は、1920年代の終わりから浅くかぶるのが人気になり、流行が衰退する1930年代前半まではこのスタイルが王道とされていた。


 日本でもクローシェ帽は広まり、当時、流行に敏感であったモダンガール達がかぶっていた写真を見かける。
もちろん、ヘアスタイルはイートンクロップにしていたようだ。

 以前、私は古物を扱う仕事をしていたのだが仕入れの際に高島屋や三越の箱に大事にしまわれた女性物の帽子が複数出てきた。
記憶が曖昧なのだが、おそらくそれもクローシェ帽だったのだろう。


 1930年代以降、クローシェ帽の時代が終わったと思われたが、1960年代・1980年代と再び流行を迎えた。
今では、あまり目にすることも少なくなってしまったが流行とは一回りするものなので、もしかしたまた近いうちに女性がクローシェ帽をかぶる姿を多く見かける日が来るのかもしれない。
そうでなくても、パーティースタイルや和服にも合う帽子であるのは間違いないと思うので、そういった機会には是非クローシェ帽をかぶってみてはいかがだろう。

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