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"家族の形"の多様性

6/3の都内某映画館のレイトショーで、今話題の『万引き家族』を観ました。
何の気なしに、レイトショーの時間で観れて、ちょうど良い時間で…あ、賞を取った話題の新作があるぞ!という軽い気持ちで決めたのですが、どうやら先行上映だったようなんですね。

観た直後は、ちょうど落ち込んでいた時だったのもあり感受性が高まっていて、泣き過ぎて感情が溢れてぐっちゃぐちゃだったのもあり、この気持ちはいつか絶対まとめておかないとと思っていていました。
公開後にはすぐ…と思っていましたが、そうこうしている間に、この映画を思わせるようなセンセーショナルで悲しい事件も起きました。
やっと落ち着いて筆が取れるようになった今、実際に起きた事件について感じたこと等も踏まえながら、書いていければ良いかなと思っています。

ネタバレになるかもしれませんので、未見で嫌な方は避けていただけますと幸いです。
なお、セリフなどはうろ覚えな部分も多いので、誤っていたらすみません。

あらすじからの印象

あらすじの一部を公式HPより抜粋しました。

高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、家主である初枝の年金を目当てに、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らしていた。彼らは初枝の年金では足りない生活費を万引きで稼ぐという、社会の底辺にいるような一家だったが、いつも笑いが絶えない日々を送っている。そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子を見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘として育てることに。

おばあちゃん:初枝の年金を元に、治は日雇いの肉体労働・信代は工場のパート・亜紀は風俗店で働き、なんとか暮らしています。
息子には「学校は家で勉強できないやつが行くところ」と義務教育もままならない、さらには十分犯罪である万引きを教えて、日頃から共謀し日用品を万引きしています。
社会的に見れば彼らは、ヒエラルキーの最下層です(冒頭の"高層マンションの谷間の平屋"というのでもまた表現されているのかな)。

しかしそんな彼らを一つ屋根の下で繋ぐのは…お金?万引き?同情?それとも…でもやっぱり、絆でした!
みたいな、最初はそんなハートフルなおはなし、とわたしは感じていました。でも、後々それだけではなかったことが突きつけられてきます。

個人的に胸にキた!シーン、5選

①拾ってきた女の子がニュース番組に取り上げられていた!しかし明らかに虐待を受けている様子だった彼女を戻したくない家族は、彼女の髪を切り、新しい名前を与え、古い服を焚き火にかけます。

服を燃やす時にゆりちゃんをぎゅっと抱きしめながらの信代のセリフと、その時のゆりちゃんのなんとも言えない"表情を無くした表情"が、切ないながらも温かい家族の始まりを予感させてくれて、一瞬ほっとした気持ちになりました(一瞬でしたけど…)。

②"新しい名前"について、亜紀とゆりちゃんが話す場面。「お姉ちゃんもね、名前二つあるよ」

そんな亜紀の風俗店での源氏名は"サヤカ"、そして後にその二つ目の名前の由来が分かった時、彼女が裏に抱えていた生きづらさに気づいて涙が止まらなくなりました。
たとえ本当の家族がいても、裕福でも、周囲から幸せを疑われようのない何かを手に入れたとしても、その家族が本当に"幸せ"とは限らない。

③社会上では圧倒的正義である警察の取り調べに対し「拾ったんです。捨てた人は他にいるんじゃないですか?」と言い放つ信代。

犯罪が明らかになり、家族は捕まってみんなバラバラになってしまいます。その後それぞれにフォーカスしたシーンがありますが、その中でも、やっぱりここは印象的です(CMにもあるけど、圧巻です)。
ただの開き直りじゃないんです。世の中への静かな怒りが詰まってる感じがします。

④どこまでも"正義"であろうとする女性警察官が残酷にも放つ一言「あの子達から"お母さん"って、呼んでもらったことある?」

一瞬ハッとして何も言えなくなり、その後「…ないかもね。」と答える信代がもう切なくて切なくて…一番ボロボロに泣いたところです。
正しさとは何なのか。確かに表向きには犯罪者かもしれない、でも温かさでゆりちゃんを救ったのは信代たちの方、でもそれは俯瞰で見ているわたし達だからこそわかることであって…どうするべきかわかんないなあ、やるせないなあ、とブワーッと感情が溢れてしまいました。

⑤バスの中から治を眺め、何かを呟く祥太くん。その口の動きは…

何か引け目を感じていたのか、劇中の祥太くんはずっと治・信代夫妻のことをある呼び方で呼んでいました。"普通の呼び方"を治が催促しても、頑なに拒んでいました。それがこんな所でこんな風に…号泣必至です。

"ツギハギだらけ"の家族 でも…

彼らはいわば、ツギハギだらけの家族でした。
しかし間違いなく、その間にはゆるくて気だるくて、でも温かい時間が流れていたと思います。
血が繋がっていなくても、です。
それでも映画として、俯瞰で観ていたわたしたちは、彼らのことを温かい"家族"だと呼んではいけないのでしょうか。

一緒にいて自分が幸せでいれる人を選ぶ権利は、男にだって女にだって、大人にだって子供にだって、誰にだってあるはずです。

"血縁至上主義"は、もう終わりにできないのでしょうか。
色んな理由で子供に恵まれない夫婦や同性同士のパートナーが、里親として子どもを育てることを望むのは、ダメなことでしょうか。

幸せを自分で選ぶ時代が、とっくに来てるのに
わたしたちはまだまだ、世間体や血縁…沢山のものに縛られているのだと痛感させられました。

みんな、それぞれの"正義"のために動いてる

この映画は決して、何が良いとか悪いとかいう明確な"答え"をくれるものではありません。
先項にわたしが渦巻く気持ちのままに沢山あげた通り、映画を観る人達へ、沢山の問いかけがなされていると感じる作品です。

物事の裏面へ想いを馳せろ!感じろ!そして"家族の定義"について、自分なりの答えを捻り出せ!そしてそれらを守るために、自分がすべきことをしろ!

と言われているような気持ちになり
頭がガンガンしてしばらく放心状態になりました。

彼らを逮捕した警察官は、法の下での"正しい"対応を取りました。
「(たとえ虐待という事実があったのだとしても)実の親から適切でない方法で子どもを引き離したこと」に対する処罰です。

しかしその裏で、寒空の下外に放り出されていた子どもを"拾"い、おねしょしても怒らず、色んなものを失いながら必至に隠し、守ろうとしたあの家族たちも、彼らの中の"正しさ"がそうさせたのだと思います。

みんな自分がそれぞれに思う"正しいことをただしている"だけだから、こんなに、観てて苦しくなるのかな。

でもそもそも血が繋がっていないもの同士が家族になるって、「結婚」ではごく当たり前なのに、「親子」となると突然ややこしくなるのは何故なんでしょうかね。

昨今、悲しい虐待のニュースが増えました。いや、正確に言えば元々今までもあったものが表面化して注目されるようになってきた、という方が正しいのかなと思います。
この映画を観た直後に、都内で5歳の女の子が悲痛な手紙を残して亡くなったニュースが流れ、ゆりちゃんと重ねてしまって、3.11の地震のニュース以来、久々にボロボロ泣けてきてしまいました。

わたしは大学時代に心理学を専攻していたので、学科の友人にはまさに今回のゆりちゃんのような、虐待やネグレクトを受けた子ども達を保護しケアするところで働いている人もいます。
区分的には公務員ですが、一般的な公務員のイメージとは程遠く、夜勤ありのシフト勤務の超ハードワーク(公務員でもそんなことがあるのか!と無知なわたしは初めて聞いた時驚きました)で、不規則な生活の中でも子どもたちのために毎日奮闘しています。
児童相談所などにクレームが殺到しているとのことですが、現場も必死でその立場での"正義"を元に仕事をしているのだと、彼女の話を聞くといつも思います。
なので、クレームを入れることで現場に直接の負荷をかけるのは、なんだか違うよなあと感じています。

とはいえわたしも何にも影響力のない凡人ですので、凡人なりに何かできないかを考えてみました。

署名活動 をしてみたり、
→ https://www.change.org/p/%E3%82%82%E3%81%86-%E4%B8%80%E4%BA%BA%E3%82%82%E8%99%90%E5%BE%85%E3%81%A7%E6%AD%BB%E3%81%AA%E3%81%9B%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%84-%E7%B7%8F%E5%8A%9B%E3%82%92%E3%81%82%E3%81%92%E3%81%9F%E5%85%90%E7%AB%A5%E8%99%90%E5%BE%85%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%81%BE%E3%81%99?recruiter=884372915&utm_source=share_petition&utm_medium=facebook&utm_campaign=psf_combo_share_initial
・転職活動で子どもを守る活動をしているNPO法人を視野に入れて調べてみたり…
自分なりに何かできることがないか模索しましたが、なかなか難しいです。

でも今はありがたいことに、このnoteのように、"発信する"たくさんのツールや場所がある!
拙い文章ですが、映画感想と考察という形で、読んでくれた人の心にひとまず取っ掛かりを作れないかな、と思い今回書きました。
(とはいえだいぶ乗り遅れたなーとも思います。熱量と勢いもたまには大事にしなければ、鮮度が落ちてしまうんだな。難しいですね。)

このレビューマターでなくとも、ぜひ公開中の今のうちにスクリーンでこの映画を観て、いろんな想いを巡らせて、自分なりの"家族"の在り方や社会に対して自分が何をできるかを考えるきっかけにしてもらえたら良いなと思っています。

おまけ

・そのものは出ませんが、性的描写ありです。制限はかかってないようですが、お子さんと見るのは避けた方が良いかもしれません…でも亜紀も信代も、とっても艶めかしく素敵です。
・警察官役で出る高良健吾のスーツ姿、堪りません。シン・ゴジラの彼の役が好きな方は性癖に刺さると思います!←

※そういえば、トップに添えたオレンジのバラの花言葉は"絆"だそうです。意図せず良い感じに!笑
今後はそういう点も少し意識して画像を選んでみようかな。


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