見出し画像

優しさで世界を回す。

6/21、大学時代の友人とお茶した後、何かスッキリ元気が出ることをしたい!となって観たのが、先週公開された『 #ワンダー君は太陽 』でした(全然関係ないけど最近、美味しいもの食べるとかくらいしか遊び方がわからなくなってるの、良くないよなあ〜と思ってます。)

洋画は予告の通りじゃないこともままある(日本での邦題や広告の仕方が実際の内容とそぐわなかったり)ので少しドキドキしていましたが、むしろ嬉しい大誤算!ハッピーな気持ちで満たされる素敵な映画だったので、感想を書き留めておきたいと思います。

ネタバレになるかもしれません、未見の方や苦手な方は避けていただけますと幸いです。
また、セリフ等うろ覚えなので間違っている所もあるかもしれません、すみません。

見えても見えなくてもつらいもんはつらい

主人公オギーは、遺伝子疾患により顔の変形(うっすら見える手術痕などあまりのリアリティにドキッとしてしまう。顔のメイクには手を抜かないで!と作者の強い要望があったのだそうです。)という障害を持つ、でもそれ以外は至って普通の男の子です。
暖かい家族に囲まれて、ちょっとシャイでも優しく成長していくオギー。しかし、ずうっと家族に守られながらの自宅学習の日々を終え、ついに「学校」に通うことに!
でもそこでやはり、家族の想定していた以上の苦労(顔への好奇の視線や揶揄)を体験することに…

ドッヂボールは悪魔の作った競技

わかる…わかるよ…ヒエラルキーの地を這ったことのある人間だけがわかるこの苦悩。
もうこの台詞の時点で、オギーにどんどん感情移入して行くわたしが止まらなくなりました。笑

みんな、みんなが主人公

上記にも記載した通り、主人公はオギーですが、この作品はちょっと描き方が変わっている感じがします。

劇中に「どんな出来事にも二つの面がある」というセリフがあるのですが、それを再現するかのように、オムニバス的というかスピンオフ型というか、「モブなんていない!みんなそれぞれ色々抱えながらも頑張ってる!みんなが主人公!」みたいな演出・編集が、この映画の温度を上げてくれる要因の一つかなあと思います。
特に姉であるヴィアへのフォーカスは、障害を受け止める側の苦悩も描かれており、最高でした。

うちの家族は、弟という太陽を中心に回っている。パパも、ママも、私も…まるで惑星。

健気に我慢し続けても決して弟には当たらずどこまでも"良い子"だったお姉ちゃんのヴィアが、密かに抱える「私を見て(他人のことを、よく見ること。この作品共通のテーマでもある。)」というさみしさと承認欲求からきた皮肉交じりな心の声に、胸がキュッとなる。
ヴィアほどでなくても、全"姉"という立場に立ったことがある人なら誰しも、グサリとくるものがあるのではないかと思います。
(でも、これが後から効いてくる…!要注目なのです。)

支えの祖母も亡くし、唯一の理解者と思っていた親友ミランダからは理由も分からぬまま避けられるように(思春期女子によくある謎の慣習)。

そんなポッカリ空いた穴を埋めたのは…恋!
お相手は選択クラスで同じになったジャスティン。控えめな彼女を不器用ながら励ます姿が、初々しく微笑ましく最高に格好良い〜!
(人懐こくて器がでかいとんでもなく良い男なんですよ…!一緒に観た友人に開口一番に言った映画の第一感想が「お姉ちゃんの彼氏格好良い」でしたよ。もう、どうしてくれる。)

彼との関わりを通じ、少しずつ自信をつけ変わっていくヴィア(それでもハロウィンの時、落ち込む弟に「人は変わるのよ、私もそうだった。でも私達はずっと親友、そうでしょう?」と弟を励ますシーンは変わらない優しさが顕在してることに安心しつつも健気過ぎてまた泣きそうになる)。
そんな彼女が終盤ぶちかます演説(演劇の授業の発表会でのセリフとはいえ)がこれまた、素晴らしいのです。

時が流れるのがこんなに早いなんて、知らなかったの。全部全部、見ておかなくちゃ。
(中略)今この時を、見ておくわ。

ヴィアの家族への複雑な想いが演技として昇華される瞬間を、ぜひ刮目して観てほしいです!

※もちろん、他にフューチャーされる登場人物たちにも!

底知れぬ温かさと洞察力

冒頭〜中盤まではいじめや友人の裏切りなど、わりと苦しい描写が続きます。
しかし家族や友人の支えと、持ち前のユーモアをもって、オギーは学校を自ら"楽しく"変えていきます。
彼はへこたれることは何度あっても、決して諦めはしませんでした(でもそれはプルマン家のみんなが愛情一杯に彼を育ててきたからだよな〜とも感じる、特にヴィアの親友ミランダから見た描写で顕著。これがアメリカン的褒め子育てってことかしら〜ってなります。自己肯定感、超大事〜😭泣)。
静かに周りを温めて溶かして動かす(一緒にいたくなる、何かしてあげたくなる)まさしく太陽のような男の子でした。

そんなオギーにはもう一つの特技があります。
「人をよく見ること」です。
ママの顔色、パパの声色、お姉ちゃんの様子を見ては、気づいてないふりして戯けて声をかけたり。ジャックの変化について、敢えて何も触れなかったり。サマーの勇気ある行動に対して、僕に構うと周りに悪く思われるからやめた方が良いと諌めたり。
彼は周囲のことを、本当によく"見て"いました。

それは彼があの顔に生まれたから、ということも、少なからず関係はあるでしょう。
しかし、彼は持ち前のその"見る力"をもって、周囲に寄り添っていました。決して周囲の優しさに寄り掛かって甘えてばかりではなかったんです。
最後の方で校長先生が彼のことを形容していた言葉を借りると、この洞察力こそが彼の「静かな強さ」なんじゃないかなとわたしは思います。

彼に向けられる周囲の優しさは、彼自身が周囲に目を向けて優しく接していたからこそ巡ってきたものなのでしょう。

胸いっぱいの優しさを

前回レビューした『万引き家族』は観終わってから悶々とする映画でしたが笑、こちらは打って変わってスカーッとした後味スッキリ!な映画でした。
オギーや周囲の登場人物たちから、沢山のことを教えてもらった気がします。

これからはオギーが持つような 「静かな力(=洞察力)」と「人を引き寄せ巻き込む力」が必要になってくるでしょう。
そしてそれらは、優しい気持ちなくては生成されません。

優しさは時に諸刃の剣にもなります。人の良さに付け込まれたりといった経験は、わたしも沢山あります。笑
しかしオギーのように真摯で真っ直ぐでいれば、優しさはきっと巡り巡って自分に返ってくると、わたしはまだ信じていたいと思いました。

この映画で教えてもらった胸いっぱいの優しさを、わたしは常に忘れずにいたいです。


#日記 #エッセイ #コラム #適応障害 #映画感想 #映画レビュー #ワンダー君は太陽 #休職日記 #新刊わたし

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?