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英語英文学科主催「第24回英語教育研究大会」を開催:「英文法がわかれば、文学はもっと楽しくなる ―ことばと文化の饗宴」(講師:安井泉先生)

 2023年1月21日(土)「神奈川大学・第24回英語教育研究大会」(英語英文学科主催)を、みなとみらいキャンパス米田吉盛記念ホールで開催しました。2020年度からコロナ禍のために休止していましたが、3年ぶりに対面方式で再開できました。新キャンパスでは初めての開催となり約120名の参加者がありました。今回は、中学校・高校の英語教員を目指している本学の学部生・大学院生、本学の卒業生、中学校・高校の教員に加えて、大学の教員、出版社・英語教育団体の関係者、他大学の学部生・大学院生も多数参加されていたことが特徴的でした。

 従来の研究大会は、卒業生の中学校・高校教員によるビデオによる授業公開と研究協議等も入れて午前・午後の終日で開催して来ましたが、今年度は開催時間を午後のみに短縮し、「英語教員に求められる文法力・文法指導力」を大会テーマに、安井泉先生(筑波大学名誉教授、日本ルイス・キャロル協会会長)にご講演頂きました。安井泉先生は、お父上である故・安井稔先生(1921-2016)の名著『英文法総覧』(初版1982年、改訂版1996)の改訂に取り組まれ、2022年10月に858頁に及ぶ大著『英文法総覧―大改訂新版―』をお父上との共著という形で開拓社から出版されました。大改訂新版には英語学研究等の最新の成果を盛り込まれており、1996年の改訂版と比べて分量は約1.8倍に増加しています。

講演される安井先生

 安井先生のご講演テーマは「英文法がわかれば、文学はもっと楽しくなる ―ことばと文化の饗宴」でした。ご講演の要旨を、当日のハンドアウト冒頭から引用します。

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 ことばは、話し手が世界をどう認識しているかを表している。心のひだを表すのがことば。仮定法は「もし~だったら…できた〔できる〕ものを、そうでなくて残念だ」という『残念な』気持ちを表現する。文法は、それを読み解く力を与えてくれる。英語で書かれた絵本・児童文学・文学などで出会う英語表現を正しく理解しようとするとき、英文法の智恵を的確に用いれば、揺るぎない英語の理解ができるようになる。一見すると簡単にみえる英語表現を例に引きながら、その英語を深く理解するには、柔軟な思考と共に確かな拠り所もまた必要になることを考える。
 The statue needs a good clean. / The door clicked shut. / wash off vs. wash out / in my salad days / when I was green in judgment / with the towel vs. on the towel / every other day / shake one’s head / Where’s my shoe? / The door opened. vs. The door was opened. / Open the door! などの英語表現を例に引きながら、これらの英語表現を正しく理解するに至る道筋は、知的昂奮にあふれた発見の喜びの連続になる。発見の喜びこそ、勉強の楽しみであることを体感する。

講演に耳を傾ける参加者たち

▶神奈川大学 学部生・大学院生教職課程履修者の感想 
※表現は一部簡略化しています
【大学院生】
〇アメリカ文学を専攻しています。英語で文学を読んでいると、作品の解像度がなかなか上がらないと感じることがあります。その一因が、文法に対する自分の理解の浅さなのだと気づきました。作品を楽しむために、文法理解を深めることの重要性をあらためて痛感しました。
【4年生】
〇4月から中学校の教壇に立ちます。学んだことを生かして、文法のおもしろさ、物語を解釈するおもしろさを伝えられたら良いなと思いました。講演で特に印象に残ったのは、エリザベス女王の言葉です。自分自身の言葉の理解をさらに深め、生徒たちにそのおもしろさを伝えていけるよう努力します。
【3年生】
〇英文法は奥が深いと感じました。「これはこういうもの」と丸覚えしていたことにも実は理論があることがわかり、文法をもっと勉強したくなりました。
【2年生】
〇タイトルにある「文学が楽しくなる」とはどういうことか、ピンと来ずに参加しました。しかし、様々な表現を学び、聞き手・読み手の想像する世界を考えて、タイトルの意味が理解できました。英文法に対する理解を深めて英文学に親しもうと思いました。「自分専用の索引」を作ってみようと思います。
【1年生】
〇ことばを学ぶことによって世界を広げることができるのだと、あらためて学ぶことができました。前置詞は難しいのですが、その本質を理解できれば、ことばや文学への視野が広がることにつながるのだと思いました。
 
▶神奈川大学 卒業生・修了生現職教員の感想 
※表現は一部簡略化しています
【中学校】
〇英語のおもしろさに久しぶりに触れたような気がします。「そのおもしろさや楽しさを自分の生徒たちに伝えられるだけの英語の力を身に付けなければいけないな」とあらためて思いました。
〇前置詞がもつイメージを大切にすることによって、書き手・話し手が伝えたいイメージをしっかりと共有できることをあらためて実感しました。英文の意味を「1対1対応の和訳」で教えずに、イメージを持たせるように指導しているつもりですが、再度イメージを大切に指導していきたいと思います。講演会を準備して下さった神大のみなさん、ありがとうございました。
〇「単語選びによってニュアンスが変わる」という学生時代の授業を思い出しながら、興味深く講演を拝聴しました。英語教育にたずさわる者として、ことばへのこだわりをもって教壇に立ちたいなと思いました。
【高校】
〇恩師の恩師から脈々と流れるスピリットのようなものを感じることができました。『英文法総覧』はすでに職場机上に鎮座しています。大学受験のための文法学習に留まっている高校生が大半ですが、好奇心や興味が湧き出て、今回の講演のように趣深く英文法を味わうことができると良いなと思います。
 
▶上記以外の参加者の感想 
※表現は一部簡略化しています
〇先生のお人柄と学識があふれた、たいへん有意義な講演でした。英語ということばの深淵にいざなう、たくさんの新情報に触れることができました。平易に解説してくださり、ありがとうございました。
〇まさに「美は細部に宿る」ということに目を開かされたように思います。
〇微細な言葉の使い方の違いによって、多様な状況や心情が綿密に表現されることに目が開くような思いがしました。一つひとつの言葉に敏感でありたいと思います。絵本の英語に夢中になられたきっかけのThe statue needs a good clean.という表現がとても印象深かったです。
〇多角的な文法の捉え方を学び「目からウロコ」でした。その使い方によって物語の確かな情景が浮かんでくることがわかりました。
〇「暗唱していなければ、質問する資格なし」は、安井稔先生のご著書のなかでも読んだ記憶があります。自分自身の当時の学習態度に照らし、衝撃を受けました。司会の先生のお話も含め、とても素晴らしい講演会でした。ありがとうございました。
〇TESOLを研究していますが、英語という言語への自分自身の理解がいかに浅いか、講演を聴いて気づかされました。ご講演の内容を実際の教育にどのように応用していくか考えていきたいと思います。
〇『英文法総覧』を手にして、文法に関しての知識を深めていきたいと思いました。仕事で手一杯になっているところがありますが、英語の教員として、自身の英語の知識を増やしていきたいと思いました。
〇According to …は関西弁の「知らんけど」に近いニュアンスがあるように講義を聴いて感じました。
〇no more thanとno less thanは気持ちのベクトルを表し、noは予測や思い込みが外れたときに使うという点が興味深かったです。英文法を深めていきたいと思います。

     記:外国語学部 英語英文学科 髙橋一幸教授、久保野雅史教授

神奈川大学外国語学部英語英文学科で英語教員を目指しませんか?
本学科の教職課程の理念は以下をごらんください。
神奈川大学ホームページ「教職課程」

「神奈川大学英語教育講演会「生徒の表現意欲を高める表現活動の工夫」(講師:萩原一郎先生)の記事はこちら!
https://note.com/ku_english/n/n87f5ea98ce36

<先生方のご紹介はこちら!>
☆ 髙橋一幸教授
「神大の先生 髙橋一幸教授」
https://www.kanagawa-u.ac.jp/professor/details/details_101509.html

研究室紹介「教員養成のための英語科教育研究」
https://note.com/ku_english/n/n4c3aaae42f21

☆ 久保野雅史教授
「神大の先生 久保野雅史教授」
https://www.kanagawa-u.ac.jp/professor/details/details_101763.html

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