ああ、わかりあえない、と知った日。(義妹の人生にも思いをはせてみる) その3
それを見た義母は、
「まぁ~! 食器大臣じゃないの!」
と叫んだ。
「こんなに揃えちゃって」
とか、
「どれだけ散財してることか!」
とか、包んであった新聞紙をはがしつつ、思ったことを平気で口にしていた。そして何度も、
「食器大臣」
と皮肉をこめた調子で言う。
私は、志穂が傷つかないかハラハラしていた。何しろまだ数回しか会ったことはないので、義母の性格もわからないうちから、こんな毒舌を吐かれたら、いたたまれない気持ちになってしまうだろう。
ところが。
志穂は、あまり気にしていない様子で、淡々と片づけをしていた。その姿は、私から見ると異様だった。どうしてこんな嫌味を言われても平気なのだろう。
それとも、いちいち傷ついてしまう私の方が異常なのだろうか、とさえ思った。
たしかに義母は、普通の人なら自分の心の中にとどめておくべきことを口に出しているだけで、別に相手をいじめようと思っているわけではない。そうすることは、大変に愚かではあるけれど。
そう考えると、笑ってやり過ごす志穂の方がよほど大人なのかも、と思った。
こういうことも、後から真相を聞くと驚く。
「お義母さんの毒舌なんて、母に比べたらかわいいもんですよ。悪気があるわけじゃないし」
ずっと後になって志穂は義母との会話をこう評していた。
そうなのか、とも思ったけれど、どうも腑に落ちない。
こういうことは、比べるものではないのでは?
ただ、志穂は「次男の嫁」ということで、私より格段にレスポンシビリティは低く、最初から離れた所に住んでいたので、義母のことは大したストレスではなかったことも確かだ。
会うのも、義理実家での新年会など年に数回だったのでやり過ごすこともできたのかもしれない。
私の週一回のペースとは全然違っていた。
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