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くれぐれも、その子に名前をつけてはいけませんよ?

「くれぐれも、お腹の中の子に名前をつけてはいけませんよ」

子どもを堕ろすことを考え、相談にきていた夫婦に次回の診療日を伝えたある医者は加えてそう告げました。

それ以降、夫婦は頭の中で子の名前をあれこれと想像せずにはいられなくなってしまいます。

そしてあるとき、妻の方からたまらず会話の流れで「女の子なら〜、男の子なら〜がいいわね」と話をし、夫もつい自分の考えていた名前を妻に伝えます。

気づけば、2人の中でお腹の中の子は人格を持った「我が子」になり、大切で特別なものになっていました。

結局、夫婦は子を産み育てることを決意し、数ヶ月後、1人の赤ちゃんが無事誕生します。

これは、とある有名な心理療法家の実話なのですが、この話が教えてくれるのが命名することの影響力です。


<名付けによる愛着の力を利用する>

人は、自分が名づけたものに対し特別な愛着を持つ傾向があります。

店頭に同じぬいぐるみがいくつ並んでいても、ピンときた子に名前をつけたら、その瞬間からその子だけが特別になったりしますよね。

そういう人間の傾向を使うと、厄介な思考の癖を軽減したり、やる気を引き出したりできます。

先に内容をまとめておくと。

厄介な思考の癖を軽減
→やめた方がいいとわかっているセルフトークをキャラ化して名前をつける。

例:人に話しかけようとすると頭の中で出てくる「嫌われるかもよ?」の言葉に袖を引っ張る不安げな表情の5歳児みっちゃんというキャラと名前を与える。

やる気を引き出す
→自分軸に「〇〇作戦」みたいな独自の名前をつける。

例:経営者や起業家と向き合い、言語化の力で背中を押す仕事をするのが自分の仕事だと思ったコピーライターが自分の人生に「インナー・コピーライティング戦略」という作戦名をつける。

→ここぞというときになりきるキャラを決め、名前をつける。

例:堂々と胸を張ってスピーチをしたいタイミングで、自分をアメリカの大統領の〇〇だと思ってしゃべる。

それぞれについてもう少し詳細と参考文献を紹介します。

<厄介な思考癖を軽減>

僕らは幸せになるために嫌な感情を排除しようとしがちです。

なんですが、皮肉なことに、あがけばあがくほど困難な思考や感情が生まれるらしいのです。

気をそらすためにインターネットやテレビゲームをしたり、アルコールに逃げたり、運動してみたり、庭いじりをしたり。

いくつかの方法は適切に使えば長期にわたって人生にプラスに作用します。

でも中には、短期間の安らぎをもたらすが、長い目で見ると人生を損なわせ、高い代償を支払わせてしまうものもあるでしょう。

ACTというアプローチはこうしたものとは違う戦略を取ります。

詳しくは、下に貼った参考図書を読んでみて欲しいのですが、基本は心の中の嫌な感情や苦しくなる思考癖をそれ自体としては悪者扱いしないことです。

そういう感情や癖を、あなたを助けようとするあまりうざったい存在になってしまうお節介な友人みたいに捉えようと。

動機は素晴らしいのだが、彼らはしつこくあなたの邪魔をし、事態を悪化させる。こうした友人と同じで、心が助けにならない言葉を囁き続けるのは、あなたを助けるためだ。

『ハピネス・トラップ』

このお節介な友人に親しげな名前をつけて、
「プライドちゃん、私が相手に大切に扱われてないんじゃないかと心配してくれているのね。あなたが私を大切に思っているのは伝わったわ。だからちょっと待ってて」みたいな会話を頭の中でできると理想的です。

なんだそれ、と思うかもしれませんが、効果があると認められる方法で僕もネガティブが辞められない時とかに使っていました。

結局、受容するまで心の問題は大きくなるんだから、かわいい名前をつけてキャラ化して、愛着を持ち、上手く付き合っていこうという話ですね。

<きみの人生に作戦名を。>

最近『きみの人生に作戦名を。』という本を読みました。

詳しくは読んでみてほしいのですが、ビジネス書とかを読むと、よく「自分軸を見つけろ」みたいなことを言われますよね。

それを自分の言葉(作戦名)に置き換えることで名付けの愛着効果を発動させちゃおうという考えです。

映画『シン・ゴジラ』にヤシオリ作戦てのがありましたが、あれが「巨大不明生物の活動凍結を目的とする血液凝固剤経口投与を主軸とした作戦」とかいう名前だったらなんか力が入りませんよね。

自分の中では「これしかない」と思えるようなしっくり来る名前をつけられたら、その作戦をやり切る率は上がるような気がします。

中二病くさいと思われるかもしれませんが、ここまでのことを踏まえると意外とバカにできません。

作戦名は、自分の人生を愛し、自分のものにし、自らの価値とそこから生まれる未来を自分で指し示すことにつながる。自分の生き方に名前をつけることは、自分のオーナーシップを取り戻すことである。

梅田悟司 著『きみの人生に作戦名を。』

というわけで、これも詳しくは参考書籍を読んでみてほしいのですが、すぐできることとしては、長期の計画を立てるときは心躍る作戦名をつけてみるとかですかね。

<オルターエゴ>

最後に。

テニスの試合でミスをすると感情的になってラケットをぶっ壊す選手とかいますよね。

あるいは、普段はすらすらと難しいことを話せるのに、スピーチとかで舞台に上がると全然話せなくなっちゃうとか。

こういう、ある場面で自分の実力が出せないという人のための即効性がある心理テクニックがオルターエゴというものです。

特定の場面をすごく上手くやってくれそうな別人格を作り込んで、その場面が始まる合図とともにルーティーンをしたり、アイテムを身につけたりして、別人格になりきる・切り替えるというものです。

たとえば、スピーチをする場面になったらその時用のメガネをかけ、姿勢を正し、胸を開き、自分はジョブズだと思ってやる、みたいな。

これまたホンマかいな、という代物ですよね。実際にはもう少し細かい造り込みの手順がありますが、核となるアイデアはこんな感じです。

思い込みの激しいタイプとかなら割とすぐ実践できちゃうかもしれません。


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