大阪都心の社寺めぐり-地域のお宝さがし-01 少彦名神社

祭神:少彦名命、神農氏  所在地:大阪市中央区道修町2-1-8  登録有形文化財

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 当神社は、享保7年(1722)、幕府より公認された薬種商仲買仲間が、薬の安全・薬種業の繁栄を願うため、安永9年(1780)に京都五條天神宮から医薬の神様少彦名命を仲間会所に勧請したことにはじまります。天保8年(1837)の大塩平八郎の乱で焼失し、同11年に再建されました。明治39年(1906)に独立した神社となり、同43年に社殿が整備されています。ビルにはさまれた細い参道の奥に鳥居と大木が見え、興味が湧きます(図1)。をとおり、鳥居をくぐると、小さな境内に屹立する楠に目を見張ります(図2)。

図1

図2

拝殿は、銅板葺き入母屋[いりもや]屋根の平[ひら]側に千鳥破風[ちどりはふ]と軒先に唐破風[からはふ]が設けられています(図3)。

図3

図4

全体に軽快な感じがするのは、屋根が瓦葺ではなく、千鳥破風や唐破風でデザインが変化に富み、さらに軒裏の舟肘木[ふなひじき]と二軒[ふたのき]の疎ら垂木[まばらたるき]の組み合わせによるものでしょう。また、虹梁[こうりょう]の中央に備えられた、彫刻が施された蟇股[かえるまた]も見事です(図4)。ビルの谷間にこんなに静かで素敵な空間があるとは、驚きです。

11月下旬に催される神農祭では、前面の道路に多くの屋台が立ち並び、都心とは思えない幻想的な空間が出現します。

【用語の解説】
・梁[はり]:小屋組などの荷重を受けるため、柱の上部に配される水平材。
・桁[けた]:屋根を支えるために、建物の長辺方向の側柱の上に配して垂木を受ける水平材。
・平[ひら]:棟と平行な側。⇔妻[つま]:平に対して直角をなす側面。
・起り[むくり]:屋根面や部材などが、凸状に湾曲した形状。
・切妻[きりづま]屋根:棟から軒桁に向かって二方向に傾斜をもつ屋根。
・寄棟[よせむね]屋根:長辺方向に棟、四方に隅棟をもつ屋根。
・入母屋[いりもや]屋根:寄棟屋根と切妻屋根を合わせた屋根。
・破風[はふ]:屋根の妻側などに山形状に取り付けられる板や付属物の総称。
・唐破風[からはふ]:向拝などに設けられる、破風板の中央部が起り、両端部が反っている破風。
・向拝[こうはい]:礼拝のために設けられた、社殿などの正面から突き出た部分。「ごはい」
・千鳥破風[ちどりはふ]:屋根面に設けられた切妻の破風。
・二軒[ふたのき]:地垂木[じだるき]と飛檐垂木[ひえんだるき]を用いて二段に構成された軒。
・地垂木:二軒の下段に位置する垂木。
・飛檐垂:二軒の上段に位置する垂木。
・疎ら垂木[まばらだるき]:垂木の間隔が広く割り付けられた形式の垂木。
・虹梁[こうりょう]:社寺建築などに用いられる、中央部に起りをつけた梁。
・蟇股[かえるまた]:虹梁などの上に配される、かえるが股を広げたような形状式の部材。
・舟肘木[ふなひじき]:柱頭上において、桁を直接受ける肘木。

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