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くだらない嘘で家族を巻き込む母

昨日のフットサルの大会で"中日新聞"のタオルをもらったので、母にあげることにした。
とりあえずこたつの上に置いておいたのだが、
まもなく何も知らない父がやってきて「なんで中日新聞のタオルがあるの?」と聞いてきた。

我が家はこの家に住んでからずっと"静岡新聞"を愛読しているので、どうして中日新聞のタオルがあるのか不思議に思ったのだろう。

私はなんとなく「お母さんが中日新聞にしたんだよ」と嘘をついた。

このタオルはフットサルの景品にすぎない。
こんなしょうもない嘘、どうせすぐバレるだろうと悪ふざけで言ってみたのだが、母は何の打ち合わせもなかったのに、その嘘にのってきた。
しかも母は「3ヶ月だけとっちゃった。」などと、具体的な嘘まで付け加えた。

父と妹からは「ぇぇぇぇえ!?いつから??」という驚きの声が同時に発せられた。
我が家の新聞が変わるというのはどうやら一大事らしい。
私は「12月からだよ。」と更に具体的な嘘を付け加えた。

「静岡新聞は…?」と静岡新聞の行方を気にする父に、母はそっけなく「やめた。」といった。
よくもまぁ、そんな嘘が次から次へと出てくるものだ。

父だけでなく、妹も「ホントに辞めちゃったの!?」と騒いでいるので、母の反応はかなりリアルだった。
父は「ぇえ~…静岡新聞の読みたい記事が読めなくなっちゃう…ガーン」などと結構ショックを受けており、私はパソコンのかげに隠れて小刻みに震えていた。

「あんたたち、なんでそんなに静岡新聞を愛してるのさ!」と母は尋ねたが、父はとにかく静岡新聞を愛しているらしく、無断で中日新聞にしてしまった自分の妻を恨んでいた。

私は「お母さんタオルが欲しかったんだって」と、なんとか笑わずに加勢した。

「はぁ!?ばぁ~かじゃん、普通は何か月無料って感じのサービスになるんだよ!」と父は母の愚かさを責めるが、母も適当に「素材が良かったんだもん…。」と嘘をついている。

素材が良かったなんて嘘だ。
この贈答用の雑巾のように薄いタオルは、そこまで素材は良くない。ふつうだ。
「いいじゃん、このタオルで体ふけば!」という私の言葉を跳ね除け、妹は冷静に「なんでこういう流れになったの」と理由を尋ねてきた。
私はまだ騙されてる2人が面白くて、当時母も好きだった水嶋ヒロを使って、「水嶋ヒロ似のイケメンな新聞屋さんが来たんじゃない!?」と、これまた適当なことをいってみた。

これでそろそろ嘘もバレるだろうとおもったが、母は流れを変えることはなく、「すみません、新聞とってくれませんかぁ」と水嶋ヒロの真似をし出した。

ちなみに低クオリティだ。

父も妹も「ホントにぃ!?!?」と声を荒げ、その言葉を信じた父は「ぁあ…お母さんが中日新聞に魂を売ってしまった…」とがっくり肩を落としながらリビングから出ていった。

こんなに騙されやすいと将来オレオレ詐欺にでも引っかかりはしないか心配である。

翌朝、父はポストに行って「静岡新聞!」
と、ドヤ顔で私に見せつけてきたが、「12月は明日からだよ…。」と言っておいた。

さて、翌朝の12/1。

エックスデーである。

父は朝起きるといつものようにポストに新聞を取りに行った。

ぁあ…これで嘘がバレるのか…なんて思っていたら。
父が新聞開いて爆笑し始めた。

何を笑っているのだと、新聞を覗き込むと…そこにはしっかり中日新聞があった。

なんだこれは。

少し古いタイプの誘拐犯の手口がおかしくて、声を荒げて笑った。
父は真っ先に私を疑ってきたが、私は何もしていない。

ふと、母を見るとコタツに入ってニヤニヤしている。これは完全に母の仕業だ。

中日新聞のイタズラのために、まさかここまでするとは…。
"中"と"日"をわざわざ過去の新聞から探して、準備する母の姿を想像したらまた笑いが込み上げてきた。

そして、まもなく貼り付けた"中日"の文字の裏に、母のものであろう、長くて細い髪の毛が挟まっていたのを父に見つかってしまい、「急いでやったから~」とやっと自白したのである。

執筆のおやつにヤングドーナツをたべます🍩🍩🍩