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コメダ珈琲店とショートエッセイ


0 ようこそ


くまの珈琲店です。
暖冬ではありますが、だんだんと師走らしくなってきましたね。

さて、このアカウントでは、
1 コーヒーやカフェのご紹介
2 コーヒーにまつわる、自作のショートストーリーやエッセイ
を書いております。

ゆるーっと一杯、いや一編、お楽しみいただけたら幸いです。



1 コメダ珈琲店




𖠚𓈒𓂂𓏸 珈琲所 コメダ珈琲店
注文 アメリカン hot ¥600

名古屋系(こういう言い方が正しいかわかりませんが)コーヒーチェーン店。近年各地で店舗数を伸ばしているそうですね。
ちょっと軽めがいいなぁと思い、アメリカンを注文。苦味やコクが弱く、ゴクゴク飲めそうな美味しさです。
アメリカンはカップの色が違うのですね。

HPを見て、初めて「コメダ珈琲店」の名前の前に「珈琲所」と付くことを知りました。みなさんご存じでしたか?



「コメダのこだわり」ページを見ると、

お客様にとって、コメダのお店がまるでご自宅のリビングルームの延長線上のように元気や英気を養い誰もがくつろげる「街のリビングルーム」でありたいと願っています。

https://www.komeda.co.jp/commitment/kutsurogi.html


なるほど。コメダと言えば赤いソファの椅子。まさにリビングのような心地よさです。


私が行ったのはちょっと遅めの時間だったのですが、お一人様から家族連れまで様々、おしゃべりにも作業にもよさそうな、ゆったりした雰囲気でした。
いつでも使えて、美味しいコーヒーや食事ができる、この安定感はさすがです。


ごちそうさまでした☕️




2 ショートエッセイ



次は、このコーヒーから浮かんだショートエッセイを。

─────────────────

✎ܚ「アメリカン」


数ヵ月前、待ち合わせで立ち寄った喫茶店で、興味深い話が聞こえてきた。

「この間さ、うちの会社の若い連中とコーヒー屋に行ったのさ。あの○○町にある横文字の名前の店よ。」

70代くらいだろうか。貫禄のあるおじさんの声がする。

「若い店員にさ、『アメリカンくれ』って言ったんだよ。そしたら、『うちにはアメリカンはありません。』だって。今時の若いやつはアメリカン知らねぇんだなぁ。」

ここまで聞いて、私は「ああ、これ困るやつだな。」と職業柄思った。


私が働くコーヒー店は、エスプレッソマシンを使ったドリンクが主流のお店で、メニューにアメリカンはない。若いお客さんを対象とするお店は、大体似たようなもんだと思う。
このおじさんみたいに「アメリカンくれ。」と言われたらどうするか?その対応は、お店や店員によって様々だろう。

そもそも、おじさんのいう「アメリカン」とはなんなのか。想像するに、濃度の薄い、苦味の少ないブラックコーヒーのことを指していると思われる。

アメリカンは、もともと浅煎り豆から抽出したコーヒーを指すようだが、日本オリジナルの喫茶店文化の中で、どういうわけか意味が拡大されたようだ。
おじさんの馴染みの店(きっとレトロな喫茶店…と想像する)には、「アメリカン」が「ブレンド」の次くらいにデーンとあるのだろう。そしてそのノリで、メニューも見ずに「アメリカンくれ。」と言ったのだろう。(若い店員さんはメニューにないからないと言ったわけだし、私の店でもだいたいメニューを見ない人に限って、アメリカンと注文するからだ。偏見かもしれないが。)

アメリカンと似た音の言葉に、「アメリカーノ」というのがある。これは、エスプレッソをお湯やお水で割ったものを指し、エスプレッソが一般のコーヒーよりもずっと濃厚な抽出液だからこそできるものである。お酒で例えるなら、ウイスキーを炭酸で割るようなものだ。アメリカーノは、アメリカンとは別物である。

そんなことに頭を巡らせながら、店員として、おじさんの「アメリカンくれ。」にどう応えるか。

まず、乱暴に(そして適当に)「アメリカンくれ。」に応えるのであれば、「アメリカンですね、かしこまりました。」と受けながらアメリカーノでレジを打ち、アメリカーノを提供する。
このとき、おじさんの欲しいものは濃くない薄めのコーヒーと推察して、メニューの中から、一番それに近いものをこちらで選んでいる。おじさんは何の違和感もなくそれを受け取り、飲み干すかもしれない。

でも、厳密には別物である。

そこで、真摯に、なるべく真面目に「アメリカンくれ。」に応える努力をする。
「あまり濃くないコーヒーがお好きですか?」と要望を確認した上で(ないと思うけれど浅煎りのコーヒーを指している可能性もあるため)、「うちではアメリカンはないのですが、一番近いものですと、エスプレッソをお湯で割った…云々」と、先のアメリカーノの説明をすることになる。

いや、ブレンドがメニューにあるなら、同じように要望を確認した上で、「ブレンドに少しお湯を足しましょうか?」という手もある。そうなると、ある程度コクのあるブレンドかどうかというのも関わってくるだろうか。

どちらを選ぶにしても、要望を聞き取って説明して…と接客に手間がかかる。繁忙店だと、その間にも後ろにお客さんの列ができて、まだかまだかと見つめられていたりする。

そもそも、横文字拒否症とでも言うべきか、説明したところでてんで理解されないこともある。これは高齢の方に多い。喫茶店で見慣れたアメリカンがないという衝撃に次いで、アメリカーノだのなんだのと横文字を並べられるのだから、無理はないのかもしれないが。
そうなると、最初の乱暴パターンも有力になってくる。
いったいどうすべきか…


ぐるぐると考えを巡らせていると、また声が聞こえてきた。

「ところで父さん、アメリカンってつまりなんなの?」
声が少し若い。おじさんの息子だろうか。

おじさんは、
「ん?まあ……なんつうか……アメリカンはアメリカンだよ。」
バツの悪そうな声で答えた。

クスッと控えめな笑い声が聞こえたような気がした。



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