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にしおかすみこさんの介護エッセイに思うこと

「うちは、
母、80歳、認知症。
姉、47歳、ダウン症。
父、81歳、酔っ払い。
ついでに私は元SMの一発屋の女芸人。46歳。独身、行き遅れ。
全員ポンコツである」

こんな前置きから始まる、にしおかすみこさんのエッセイ。
これだけの説明文で、その大変さが誰にでも伝わる。
にしおかさんの文章は、笑いを交え、時には伏線、時にはオチまでつけて、ぐいぐいと読ませるとても魅力的な文章だ。
最新話、及び、これまでのバックナンバーは、下記のリンクから読める。

面白おかしく書きながらも、そこから感じる家族への愛と、にしおかさんのお人柄がうかがえる。他の方の感想も、「大変そうだけど笑える」「元気をもらえた」「続きを楽しみにしてます」という声も多い。
にしおかさんと同じく、今まさに介護をしている方からは共感の声が多いし、自分も頑張ろうと励みにされている方もいる。
でも、私はどうしても、その魅力的な文章を楽しむ前に、にしおかさんが今置かれている状況にハラハラしてしまう。とにかく一人で抱え込み過ぎだ。頑張りすぎだ。辛いことも笑いに昇華させてなんとか踏ん張っているけれど、さすがに、ツイートにある最新話の第5回を読んで、一言書かずにはいられなくなってしまった。

「老老介護はしんどいんだよ。今すぐじゃなくても、お姉ちゃんを施設に預けるとか、プロの人に入ってもらわないと。みんな共倒れになるよ!」と。母のことで手いっぱいの私は、それを言い訳に姉のケア知識はもっと何も知らない。それでも外の助けが必要だろうと思う。

母が言う。
「鬼が! うちの大事な子を何で施設なんだ! 悪魔が! 東京行ったらこんな冷たい人間になった。人じゃないよ!鬼! 鬼!」

父も言った「すみ、そんなこというもんじゃない、パパが全部面倒見るから」

「おまえは自分の面倒も見れないだろう! おまえの出来ることってなんだ!!」

姉が私を見ている。
「全部おまえのせいだからな!」と吐き捨てた。

家を飛び出した。
もう知らない。もう嫌だ。

施設にお願いすること=悪

という認識。これは、いつになったら更新されるんだろう。介護者を一番追い詰める呪いの言葉だと私は思っている。

他人に頼ることは悪ではない。
なんのために介護のプロがいるのか。
一人でできることには限界がある。
頑張りすぎて介護者が倒れたら、その後は一体どうするのか。
「施設は悪」と言った人が、倒れた介護者共々、すべてを面倒みてくれるのか。

私も、介護をしているとき、他にもいろいろ重なって、いっぱいいっぱいになって家を飛び出したことがある。
……といっても、にしおかさんのように、電車に乗って六本木、とまではいかなく、近所の神社に数十分ほどのプチ家出だけれど。(小物感)

エッセイとして文章に書き起こしたあとは、大変なことも全て笑いに昇華できる。私も介護で苦しい時、起こった辛い出来事を笑いに昇華させてTwitterで呟いていた。笑いにでも昇華させなければ、あっという間に心が壊れてしまうからだ。
私の場合は、自分を守るために笑いに昇華させていた。にしおかさんがどうかはわからないけれど、笑いに昇華させるにしても、その時、その出来事が起こった瞬間は、電車に乗って六本木まで行ってしまうほど、しんどくてしんどくてしんどいのだ。

にしおかさんの連載は、読み物として素晴らしいし、情報としても貴重だ。そしてなにより、この連載は、にしおかさんの大切な収入源となっている。
人の助けを借りれば、にしおかさんの環境は改善していくだろうけれど、連載を書き続ける上でのネタ部分はどうしても少なくなってしまうだろう。

それでも、やっぱり私は、にしおかさんに、ご自身を一番大切にしてほしいし、今の状況で、にしおかさんが疲れて倒れてしまうことは一番避けねばいけないと思う。外野や家族からなんと言われようとも、頼れるところには全力で頼りまくって、ご自身を守ってほしい。

介護は心の余裕がないと続けられない。

頑張れてしまうから頑張ってしまうんだけど、自分が思っている以上に、ストレスってやつはじわじわと心にも身体にも毒を染み込ませてくるから、気づいたころには手遅れになることが多い。
現在進行系で続いている介護エッセイなので、終わりがわからない分、連載を楽しむより先に、にしおかさんのことが心配になってしまうので、続いてほしいけれど、続いてほしくない、そんな複雑な心境だ。

願わくば、いろいろなことがスッキリと解決し、にしおかさんが、自身の人生を楽しめる最終回が早々に来ますように。

(素敵な文章を書かれる方だから、きっとこの連載が終わっても、他の分野のエッセイでまた楽しませてくれると思います)


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