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EPSとPERから読み解く「市場の現状」


市場の注目は「金利」から「景気」へ


最近の米国株式市場は経済指標の結果に素直に反応するようになってきました。先日のNY連銀景気指標や小売売上高、またPMI指数もそうですが、事前予想下回る数字に対して市場は素直に売りで反応しました。

先月くらいまでは景気に関する「悪いニュース」は株式には「良いニュース」、つまり、事前予想を下回る経済指標が出ると、株式市場は反発する動きが続いていましたが、今は景気の悪いニュースは株式市場にも悪いニュースとなるケースがよく見られます。

これは市場参加者の注目が金利から景気に移ってきた表れと思います。これまでは悪い経済指標はFRBの金融引締め圧力の緩和につながるという思惑から「買い」で反応していた市場も、最近は悪い経済指標はシンプルに景気悪化、企業業績悪化懸念として「売り」で反応するケースが増えてきました。

「逆金融相場」から「逆業績相場」へ


この状況を「逆金融相場から逆業績相場にシフトした」と解説する市場関係者は多いですね。

おさらいですが、株式市場の動向はよく4つの局面で説明されます。簡単に言えば

①金融相場:金利低下による株価上昇
②業績相場:景気や業績拡大による株価上昇
③逆金融相場:金利上昇による株価下落
④逆業績相場:景気や業績悪化による株価下落

です。
この4つの局面は①→②→③→④とシフトします。
これまでは金融引締め、長期金利上昇による株価下落局面(③逆金融相場)だったのが、今は景気や企業業績悪化による株価下落局面(④逆業績相場)にシフトしているということです。

株価を「PER」と「EPS」に分けて考える


4つの局面は、①と②の間に中間反落が起きたり、③と④の間に中間反発が起きるなど、上下動しながらシフトしていきますが、実はこの一連の動きは、株価をPER(株価収益率)EPS(一株当たり利益)の2つの要素に分けて考えた方が、より実態を捉えやすくなります。

株価は単純化すると株価=PER×EPSと表すことができますが、EPSは「企業業績」を表すのに対し、PERは「株価がEPSに対して何倍買われているか」を表すので、市場の期待などによって変動する係数(市場センチメントが良くなれば拡大し、悪化すれば縮小するなど)のようなものと言えます。

少し難しくすると、PER=株価÷EPSですので、PERの逆数(1÷PER)はEPS÷株価となり、これは企業利益の株価に対する割合(株価に対して何%の利益が出るか)なので、益回りと呼ばれ、債券利回りなどと比較されます。

合理的な投資家は株式と債券、それぞれの投資リスクなどを勘案しながら、割安な方に投資を行うと考えると債券利回り(金利)と益回りの差(イールドスプレッド)は理論的には一定のレンジの中で比較的安定して推移し、金利が上昇(債券価格下落)し債券が割安になってくると株式から債券への投資が増え、益回りは上昇(=PER縮小≒株価下落)したり、逆に金利低下の場合は益回り縮小(=PER拡大≒株価上昇)となることが想定されます。

つまりPERは金利と逆相関になりやすく、金利が下がればPER拡大≒株価上昇、逆に金利が上がればPER縮小≒株価下落という関係性になります。

そしてもう一つの要素であるEPSは、企業業績そのもので、株価とは順相関の関係ですので「景気や業績が良い=EPS拡大≒株価上昇」「景気や業績が悪化=EPS縮小≒株価下落」となります。ちなみに株価は将来を織り込んで(予想して)変動しますのでEPSは通常「予想EPS」を使います。

株価動向の典型的なパターン


ということで、PERとEPSを先程の①〜④に当てはめて株価の典型的な動きを表しますと以下のようになります。

①金融相場
「景気が弱く予想EPSは縮小〜横ばいとなるも、金利が低下しPERは拡大。PERの拡大が主導し、株価は上昇」

→ 中間反落
「PERの拡大が続く中で景気が回復に向かい予想EPSが底打ち。その後、景気回復から金利も上向き、PERが縮小、株価も反落」

②業績相場
「景気拡大から金利は上昇しPERは縮小〜横ばいとなるも、EPSは拡大。EPSの拡大が主導し、株価は上昇」

③逆金融相場
「景気拡大の中、金利が一段と上昇。EPSは拡大〜横ばいとなるも、PERは縮小。PERの縮小が主導し、株価は下落」

→中間反発
「PERの縮小が続く中で景気見通しが悪化しEPSが縮小に転じる。その後、景気悪化見通しから金利が下向き、PERが拡大、株価も反発」

④逆業績相場
「景気悪化から金利は低下しPERは横ばい〜拡大となるも、EPSは縮小。EPSの縮小が主導し、株価は下落」

再び①へ。

以上が、①〜④の株価動向の典型的なパターンをPERとEPSに分けて捉えたものです(あくまでも典型的なパターンであり、実際の動きやタイミングなどは、その時の市場や経済動向によって異なります)。

ここからわかる通り、PERとEPSは基本的に同じ方向に動きやすいですが、それぞれが拡大→縮小や縮小→拡大へと方向転換するタイミングは同じではなく、PERがEPSに平均6ヶ月程度先行して方向転換するイメージであり、従って両者の掛け算である株価は中間反落や中間反騰が出るなど、不安定な動きとなります。

ちなみに、今は「中間反発」か「逆業績相場」の入り口辺りにあると捉えていますが、今後本格的な逆業績相場が来るかは、もう少し状況をよく見て判断する必要があると思っています。

各局面で選好されやすい銘柄


最後に各局面で選好されやすい銘柄イメージです。
①金融相場
 金利低下が好感されるグロース銘柄
②業績相場
 グロース銘柄からバリュー銘柄に選好シフト
③逆金融相場
 財務内容が健全なバリュー銘柄
④逆業績相場
 ディフェンシブ銘柄(バリューよりグロース系)

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