十五章 レイヤ再び来店2

 それから翌日レイヤから頼まれた私服を作る為素材を選び制作した。

「できた。うん、ブルームゥーンの布に黄色のクゥトゥの糸、それから橙色の羽毛を胸に付けたんだけど、レイヤさんのイメージにぴったりだ」

「お疲れ様。少し休憩にしないかな」

作業部屋にこもりっきりのアイリスを心配したイクトがそう言って入って来ると、お盆に乗せたカップとケーキを差し出す。

「イクトさん。見て下さい! レイヤさんの服出来上がったんです」

「うん、とても可愛いワンピースだね」

彼女の言葉に彼が微笑み感想を述べる。

オレンジ色のワンピースは秋色格子の模様が描かれていて、ランタン型の袖と襟は薄い黄色になっている。胸元には可愛らしく橙のボンボンがついていて、腰には黄色のベルトが付けられていた。よく見るとその穴はハート型になっている。

「気に入ってくれるといいんですが……」

「大丈夫。レイヤさんきっと喜んで下さると思うよ。さ、お茶でも飲んで休憩して。ここの所働き詰めで疲れていると思うから、休憩するのも大事だよ」

心配そうに呟くアイリスへと彼が安心させるように答えお茶を勧めた。

「はい。……ふふ。あ、すみません。ここに来たばかりの頃も同じこと言われたなって思って」

「そう言えばあの時もマルセンの依頼の品を徹夜で作り上げて、俺がちゃんと休むようにって言った事があったね」

彼女がおかしそうに笑ったのでイクトが不思議そうに見詰めていると、過去のことを思い出していたのだと答える。

その言葉に彼も当時の事を思い起こしながら話した。

「たった一年でこんなに忙しくなって、イクトさんもお店番と買い出しで大変なのに、依頼の品の制作まで手伝ってもらって、私がもっとお店の事手伝えればいいのに」

「アイリスの作る服を皆着たいって思って依頼してくれるんだ。店番や買い出しとか他の業務の事は気にしないで、それに、俺はアイリスにはお針子として服を作り続けてもらいたいと思ってる。だから、気にしないで。でも、暇なときはお手伝いしてもらうからね」

申し訳なさそうにアイリスが話す言葉に、イクトが優しく笑いながら穏やかな口調で語る。

「イクトさん……私、お店のためになるようにもっともっと頑張りますね」

「うん。期待しているよ、この店の……いや、俺の大事なお針子さん」

「はい。期待に答えれるように頑張ります。私の大事な店員さん」

お互い微笑み久々に家族であるという認識を確認し合えたような気持を抱く。

そんな温かな気持ちを抱いて、このお店とイクトのためにもっと頑張ろうと張り切るアイリスの仕事ぶりは更に上達する。

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