五章 結婚式の花嫁衣装2

 そうして花嫁衣装が出来上がった三日後にカヨコがお店へと訪れる。

「こんにちは。この間お頼みした花嫁衣装を取りにまいりました」

「いらっしゃいませ。今お持ち致します。……アイリス」

「はい。こちらになります」

お客の言葉にカウンター越しからアイリスを呼ぶと、店内の棚の整理をしていた彼女が直ぐに返事をして品物を持ってきた。

「こちらが、ご依頼いただいた花嫁衣装になります」

「まぁ、純白……わらわの国の花嫁衣装もやはり白色なんです。ですから嬉しいわぁ。早速これ試着してみても?」

「勿論です」

衣装を手にした途端カヨコが嬉しそうに微笑む。その姿にアイリスも笑顔で見ているとお客がそう言ってきた。

彼女はにこりと笑うと試着室へと案内する。

「いかがでしょうか?」

「ふふっ。雲の中にいるような着心地ですわぁ。それに着物とドレスをかけ合わせて作ってくれたんですねぇ。着物とドレスが一つとなる。まるでわらわとあの方の様に……とても気に入りましたわ。そんで、これからお式なんですけど、あの方に頼んでこのお店の前も通りますんでよかったわらわ達の門出を祝福して下さいませぇ」

アイリスの言葉に試着室から出てきたカヨコが嬉しそうに満面の笑みを浮かべて語ると二人を式に誘う。

「勿論です」

「俺も、是非ともお二人の門出をお祝いさせてください」

「有り難う」

二人の答えは勿論決まっていた。それを聞いてお客が微笑むとお金を払いお店を後にする。

それから暫く経ってから賑やかな音楽の音に混ざり横笛や鈴の音が鳴り響いて行列が仕立て屋アイリスの前へと近づいてきた。

「イクトさん花嫁行列が着ましたよ」

「ずいぶんと賑やかな花嫁行列だね」

タキシードを着こんだ褐色の肌の男性の隣に寄り添うように並んで歩くカヨコの姿がどんどんと近づいてくる。

音楽隊や傘係や牛や馬などの動物を連れて歩く男性達。こどもは花を振りまき花嫁行列の横について歩く。花嫁や花婿の家族と思われる人達の姿もあった。

そうして歩いてきた花嫁行列がアイリスとイクトの前で立ち止まると先ほどまで降り続いていた雨が小降りになり、太陽が顔を覗かせる。

「これが、狐の嫁入り言うんよ」

カヨコが微笑み言うと行列は再び歩き始め空へと昇り消えていった。

「「……」」

そのありえない光景に二人は驚き、目を瞬き呆然と花嫁行列が消えていった空をただ見詰める。

「イクトさん……カヨコさんて」

「お狐様……だったんだね」

最後に見たカヨコの姿は間違いなく金色の毛の綺麗な狐だった。

二人はにやりと笑い合う。この特別な日を忘れないように記憶にとどめておこうと思った。

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