十六章 王国御用達の専属仕立て人!?3

「でも、一度受けてしまった依頼を断ることはできない。……さて、どうしたものか」

「……なぁ、ジャスティン。今俺と同じこと考えているだろ」

「ああ、そうだな。……私とマルセンで竜の涙を手に入れてくる」

マルセンが目配せして尋ねるとジャスティンが頷きそう宣言した。

「わたくしも協力するわ。金のミルケストの糸なら屋敷に来る商人から以前見せてもらったことがあるから、手に入れておきますわ」

「なら、わたし達も一緒に金のミルケストの糸を手に入れるためにお手伝いします」

「僕達と一緒ならもしかしたら譲ってくれるかもしれませんしね」

マーガレットの言葉にシュテリーナとジョルジュも力強く頷き話す。

「私も商人さんや貴族の人に踊りを見てもらっテそのお礼の品の代わりニ何とかして賢人の宝石ヲ譲ってもらえるよう交渉してみます」

「皆……有り難う!」

「他の品も何とかして手に入れれると良いのだけれど……もしかしたら他のお客様から何か良い情報を得られるかもしれないね」

にこりと笑いミュゥリアムが言うとそんな暖かくて優しい皆の言葉にアイリスは救われた思いで精一杯の気持ちを込めてお礼を言う。

イクトがにこりと笑い希望を捨てないでと言いたげに話す。

そうして皆が素材探しへと向かい店から出た時にお店の扉が開かれる。

「やあ、小鳥さん」

「フレイさん?」

父親との一件の後お店に顔を出す事のなかったフレイがアイリスの下を訪ねてきたのだ。

「話は聞いたよ。とても困った事になっているって……それでぼくも協力したいと思ってね。ミュウさんを手伝って来ようと思う。踊りに演奏がついたら無敵になると思わないかな」

「有難う御座います。……あの」

「親父とはちゃんと話を付けてきた。全然口をきいてくれなくなっちゃったけどね。でも、これでいいんだ。ぼくは自分の道を進む。世界一の吟遊詩人になっていつか親父を見返してやるのさ」

有難い彼の言葉にお礼を言うもこの前の事が気になって彼女は口を開くが言葉が出てこない。それに気づいているフレイがにこりと笑うと話し合いの結果を教えてくれた。

「それじゃあ、ぼくは行くよ。小鳥さん心配しないで、ぼく達が必ず依頼に必要な品を手に入れてくるから」

「はい」

フレイが言うと出て行った。その頼もしい後姿をアイリスは見送る。

「よう。アイリス話は聞いたぜ」

「こんにちは~。アイリスさん私達に任せて下さい」

「失礼する……アイリス。困っていると聞いてきた」

「マクモさん、レイヤさん。それにクラウスさんも」

元気な声でマクモが言うと、レイヤとクラウスを連れて来店してきた。アイリスは驚いて彼等の下へと駆け寄る。

「春のヨウキ鳥の羽が必要なんですよね。私に任せて下さい」

「メトモの実が必要だと聞いた。レイヤと俺でなんとかしよう」

「胎動の心が必要なんだろう。オレに任せておけって」

「皆さん……有難う御座います」

三人の言葉に彼女は感動して涙をにじませながらお礼を述べる。

「それを伝えに来た。今からそれらすべて集めてくるから、アイリスはここで待ってな」

マクモが言うとレイヤとクラウスもにこりと笑い任せろと言いたげな顔をした。三人がお店を出るとその後ろ姿をアイリスは見送る。

素材集めは上手くいくのか、イルミーナの依頼をこなせるのか不安はぬぐい切れないが、皆の力を信じて彼女はただ祈るように待つだけであった。

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