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元彼女さんへ


初めまして。大嫌いです。 

欲を言えば無関心です、と言いたかった。
嫌いは、好きになる可能性があるとかなんとかいうらしいですが、本当の意味で嫌いです。

私の好きな人があなたの話をするので、どうか速やかに彼の前からいなくなってください。


別れ話は、『ごめんね』と突然言ったらしいですが、正気ですか。

理由を聞いても、ごめんとだけ、ただその一言で終わらせたそうですが、気は確かですか。


彼と付き合っていたとき、彼の誕生日に、置き土産のように高いカメラをプレゼントして、それで別れたって、もう絶対覚えておいてねという呪いをかけたかったということですよね。

花の名前を教えなかった代わりにカメラですか。


私がいなくっても、これから写真を撮るたびに少し思い出して、一生私を覚えておいてねということですよね、その通り彼はずっと覚えているみたいです。


思い出はどんどん美化されてしまうことは、承知の上での犯行ですよね。


完了されてないものに、人はつい意識を取られてしまう心理メカニズムも分かりながらした重罪ですよね。


それなのに、ふとまた彼に連絡を寄越して、会っていると聞きました。


言いたくありませんが羨ましいです。


『ああ、これが食物連鎖か』
と合っているかわかりませんがそう思いました。


私が好きな彼には、苦しむ程好きなあなたがいたということ、それは私はあなたには及ばないということなんだと思います。


いや、もっと言えば、あなたにはなれないと最初から気づくべきでした。あなたとは違う、でも私にもいいところがあると自分を肯定してあげるべきでした。


飄々淡々とした彼が、一言一句に気を使う女性になってみたかった。


彼があらゆる特技があるのも、あなたに愛されたいだけに見えてきたら少しだけ嫌いになれました。

彼が何回も何回も繰り返し考えてしまう女性になりたかった。


街中で似た姿を探されてみたかった。

好きなタイプを私の特徴のまま話されてみたかった。


彼が久しぶりにあなたと会った後に、会ったのは私でした。


名前のがつかない感情だ、という彼に、私は美味しいものでも食べよと言いました。

あなたなら、なんか暗いから帰るねと颯爽と帰ってしまうんでしょうか。


それとも、黙って手を握り、あっちの方に行こうと明るく笑うんでしょうか。


教えてください。


借りを作るのが嫌いな彼にご飯を奢ったらしいですね、それはまた会う約束を作ることを見込んでの犯行でしょうか。


そんな余白を作るのがきっとあなたはうまいんでしょうね。


戦略的なのか無自覚なのかもわからなくさせてしまうのがあなたの魅力なんだと思います。


彼と仲良くなったとき、
『人生で初めて仲良くなったギャル』と言われました。


それがなんだか嬉しかった。
でも気づけば、私はどんどん私らしさを失っていきました。


こんな醜い感情にも疲れました。
私が彼といる間中、あなたとの差分を見られている気がして苦しかった。


私が彼の連絡を待っていたとき、彼もあなたからの連絡を待っていたのかもしれない。


そんなことを思うともう疲れて吐きそうでした。

『自分は、映画とかなら脇役だと思う』と、
縁の下の力持ちタイプだと弱く笑う彼がいました。


私は?と聞くと、『圧倒的主人公』と言われたとき、この恋をやめようと思いました。


これ以上どこまで行っても、本当の意味で交わらないよと牽制されているようでした。


彼の人生にとって私は、通行人Bぐらいのくせに、通り過ぎる木々ぐらいなのに、残酷だと思いました。


あなたのように彼の人生に出演し続けたかった。


一度もお会いしたことはありませんが、憧れています。


わかっていても欲しいですが、これは完全に負け惜しみです。


彼が好きになる人なら、きっと素敵な人なんだと信じたいですが、最後にもう一度言わせてください。嫌いです。



でも、もう本当に終わりにしようと思います。


ごめんと一言だけ言ったあの日を最後にもう会っていません。


あなたと同じ方法を取るとは思いませんでした。

しかし、あなたと同じようなことをしたとき、気持ちが少しわかった気がしました。


でもあなたのように恋愛関係だった人と、継続して友達になる感覚が私には一生わからないんだと思います。


連絡先も消してしまいました。

あなたとの違いは、私はきっと簡単に忘れられてしまうということです。


でも、私のことなんて早く忘れて欲しいと思うのが、きっと愛だと思いませんか。


一度でいい、あなたになってみたかった。

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