夢はかなう、と言い切れないのが、あたしの飼い主の弱気なところなのよね。
　普段から、頭にくると、相手をコテンパンにしないと気が済まない性格だから、よく失敗して、仕事も何回も変わってるからね。
　あんまりいいことが続くと、心配になっちゃうんだよね。

　昨日、季節風から書評委員の依頼のメッセージが届いて、うそでしょ、あたしにできるのかしら、って、言ってた。
　顔がにやけてたけどね。

　あたしにスリスリしながら「クララ、夢、って、叶うのかもね」っていってた。

　クララ、あたしには書くことしかできないんだよ。
　何年か前に、障害者雇用枠で就職試験を受けて、いままでに誰も落ちた人はいない、という会社を落ちて、ショックで家の中で転んで後頭部を強打してから働くのはあきらめたらしい。

　あたしの飼い主は、お仕事はできるんだよ。
　障害のないひとといっしょにお仕事していたから、障害者枠で落ちたのがすごくショックだったんだって。
　障害が軽いと補助金が少ないから、重度のひとのほうが採用されやすいんだって。
　一般枠で受けると障害者だからって、落ちて、障害者枠で受けると障害が軽くて落ちるんだって、くやしがってたよね。

　ケアマネになったときだけは、一般枠で受けて雇ってもらえてうれしかったんだって。

　努力は報われる、って、思いたいけど、疑り深いから、言い切れないんだって。

　寂しがり屋の飼い主にときどき優しくしてあげるんだ。
　抱っこされて寝てあげるからね。