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華麗なる週末

はじめに言っておきたいのですが、これが僕の最後の投稿になるかもしれません。書くことに飽きたとか、別の媒体でやっていくとかそういうことではありません。僕は今、とある事件に巻き込まれているからです。いや、その可能性が限りなく高い、といったところでしょうか。
これを書くことによって僕の身に危害が及ぶかもしれないのです。それでも書かずにはいられませんでした。たとえ僕がどうなろうと、家族を守るためにはこうするしかなかったのです。
いきなりこんなことを言われても何が何だかわかりませんよね。混乱させてしまってごめんなさい。でもこのまま黙ってもいられませんでした。どこかで訴えたかったのです。また、僕のこの懸念が“ただの気のせい”であってほしいという一縷の望みもあるのかもしれません。これを書くことによって読んだ方から「気にしすぎだよ」なんて笑いながら言ってほしいだけかもしれません。しかし、きっとそれはない。これは気のせいではない。目には見えない確かな証拠があるからです。
まだ誰にも、それこそ警察にもまだ相談しておりません。最後の希望を諦めきれず、僕は今、筆を執っております。勿体ぶらずに結論から先に書いてしまえばいいのですが、これを読んでくださっている皆様に変な先入観を与えたくありません。皆様がどう感じるのか。僕と同じ結論に至るのか。それを確かめたいのです。
僕の身に何が起こっているのか、順を追ってお話します。

数年前から微かな違和感を覚えておりました。ふとした瞬間に「おや?」と感じるようになりました。どこがどうとは上手く説明できません。目に見える変化があるわけでもありません。ただ、日々の随所に「なんだろうな、これ」と首を傾げることがありました。普段生活していく上で気にしなければ気にならない程度の違和感。しかしそこから月日を重ねるごとに、それは徐々に無視できないものになってきました。

そして、つい先日の夜。まさに今から寝ようとしたその瞬間に覚えた違和感が、確かな言葉として僕の口から零れ落ちました。

「僕の枕からおじさんの匂いがする……」

自分が発した言葉の意味が脳に浸透し、全身が粟立ちます。混乱して叫び出しそうになるのを必死で我慢しながら己に言い聞かせました。冷静になれ、と。心の中で何度もそう唱えながら、少しずつ落ち着きを取り戻しました。
状況を整理しましょう。こういうときこそクレバーに。
僕の枕は僕の枕であって、どこかのおじさんの枕ではありません。となると、こんなおじさんの匂いがするという事実は不可解極まりないのです。どうしてこんなことになっているのか。
……まさか。もしかして、そういうことなのか。それしか考えられない。なんということだ。
とんでもなく恐ろしい仮説が脳裏をよぎります。いや、もう確信に変わりつつあります。認めたくない。認めたくはありませんが、おそらく間違いありません。皆様ももうお気づきでしょう。そうです。

どこかのおじさんが僕の枕を勝手に使って寝ている可能性が極めて高いです。


不法侵入です。我が家に勝手に忍び込んでいるおじさんがいます。そして勝手に僕の枕を使って寝ているのです。ちょっと待てよ。そういえば普段よく着ているダウンジャケットも羽織ったときにふわっとおじさんの匂いがするときがあります。服まで勝手に着られているということでしょうか。図々しいにも程がある。そういえば、なんとなくですがビールの減りも早いような気もしなくもない……。おかしい。あまりにおかしすぎる。

今のところ不法侵入を繰り返し、僕のダウンジャケットを着て、僕の枕を使って寝て、あまつさえビールを飲むだけに留まっておりますが、これから先も行動がエスカレートする可能性が無いとは言い切れません。一人暮らしならまだしも僕は妻子ある身です。家族に危害が及んだりなんかしたらと考えると気が気じゃありません。
これを書き、告発することによって逆上したおじさんが何をするかわかりません。でもこれ以上、僕も見て見ぬふりはできません。

おい。
どこかのおじさん。見ているんだろう?そこまで図々しく振舞っているあなたが、僕のPCを触っていないわけがない。これだってきっと通知から辿って読んでいるかもしれない。だから、敢えてここで告げる。
いい加減にしろ。出ていけ。僕の枕を勝手に使うな。それ以上勝手なことをしたら僕はあんたを許さない。いいか。これは警告だ。通報するからな。僕は本気だ。それが嫌なら今すぐに馬鹿な真似はやめろ。あなたがやっていることは犯罪だ。立派な犯罪なんだよ。出るとこ出てやるぞ。こっちだっていつまでも泣き寝入りはしない。やると言ったらやる。徹底的に戦ってやる。
ただ、僕としても事を荒立てるのは本意ではない。これを読んで考えを改め、真っ当に生きてくれるのなら何もしない。これが最後のチャンスだ。


甘すぎますか?でも僕は人間の良心を信じたい。むやみやたらにおじさんを傷つけたくない。人は間違える生き物なのです。罪は憎んでも人は憎みたくないのです。
皆様のご意見はいかがでしょうか。どう感じたでしょうか。どう結論付けたでしょうか。きっと百人いれば百通りの答えがあるでしょう。いいのです。皆まで言わずともいいです。
ていうか、言わないで。
今思っていることは胸に秘めておいてください。お願いです。絶対に言わないでください。お願いします。それを言ったら最後です。
これ以上、おじさんを傷つけないでください。
それだけが、僕の願いです。



お金は好きです。