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国際バカロレアって?ケン先生インタビュー(2)

先日、札幌開成中等教育学校の教員である弟ケンにラジオ番組に出てもらってインタビューしました。本エントリーはそのインタビューから抜粋&再編集したものです。

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▼授業ってどんな感じ?

リエ:へぇ~。すごすぎるね!通常の授業はいったいどんな風なものになるの?例えば、ケン先生が教えている英語ではどんな感じ?

ケン全教科統一して「課題探究的な学習をしましょう」ということが求められます。「課題探究的な学習」の定義はいろいろありますが、IBでは「答えのないものをみんなで協働して考えてモノを創っていきましょう」ということになります。僕たちはその「モノ」を「成果物」と呼んでいるんだけど、各教科、成果物を創っていくことになります。

英語であれば、例えば「札幌という街を世界に向けて発信するとなったら、どんな手段や方法で発信しますか」ということを考える。単純にポスターをつくろう、と言ってみんなでつくるのは簡単ですが、そうではなく、伝えるためにはいろんな方法があると知ることから始まります。インターネットでもSNSでも動画でもいろいろな方法があって、さらに撮影したり、文章やコピーを書くとか、デザインをしたりとか、やり方もいろいろある。

そこから、オーディエンスは誰なのか、それであればどの手法を使って、どんな媒体で、どんな情報を、どんな言葉遣いで発信するといいのか?、ということを考えていくことになります。もちろん、発達段階に応じていくので中学1年生に急にそれは難しいけど、段階を踏んで学んでいきます。最終的には実際に考えたことをつくってって発表したり、その途中で生徒同士や先生へインタビューしたりなんかもしていきますね。

リエ:授業は全部英語でやるの?

ケン:英語でやるかどうかは場合によるね。全てを英語でやることが目的ではないので。必要があれば英語でやるし、日本語でやることもあるよ。ただ、中には外国人の先生が一人で授業を持っている場合もあるので、その場合はオールインリッシュになります。

▼教育の場で、大事にしなくてはならないこと

リエ:IB校でも、そうでない学校でも、変わらずに大事にしなくてはならないことはなんですか?

ケン:「個に応じているかどうか」ということですね。生徒と向き合うことが一番大事だと思う。メディアや研究会などで紹介されているような素晴らしい取り組みや授業も、結局は目の前の生徒のためになってるかどうか、それぞれの生徒、個に向き合ってつくられているかどうかが大切です。
そこは、先生の基本的なスタンスだと思います。

そして生徒もそれぞれ、一人ひとり違うんです。だから、ぼくはいろんな先生がいたらいいと思っています。A先生とB先生、得意なこと苦手なことが一緒である必要はまったくなくて、違っていていいんですよね。それが生徒たちへの「個に応じたサポート」につながっていく。最近考えているのは、先生たちが自分自身を誇らしく思えるような環境をつくることこそが、生徒たちのためになるんじゃないかということです。

▼地域との協働について

リエ:最近は「地域との協働」が教育の中でもキーワードになっていますが、開成ではどうなっていますか?

ケン:子どもたちはCASやSAと呼ばれる奉仕活動を必ずするようにしています。生徒が自分でニーズを調査して、奉仕できる場所を探してやっているんです。生徒が自ら社会とつながっていくのを先生たちは見守る、というようにしています。

こういうとき、先生たちはいろいろコントロールやコーディネートしたくなるんだけど、それを思い切って手放すと「ああ、君はそんな風に社会とつながっていくのね!」とまったく知らない一面が出てきたりしてびっくりするんですよ。それがまさに「先生と生徒の協働的な場」で、先生も生徒もお互いに学び合う場なんです。
先生たちはつい、生徒になにかを与えようとしちゃうけど、共に学び合うためにも、もっと広い意味で場をつくってあげて、そこで子どもたちがどうなるのかを見守っていきましょう、というスタイルがいいんです。

もちろん、子どもたちに任せてやってみると「うまくいかないじゃん!」ってなることもたくさんあります。でも、それでいいじゃない!教育ってそんな簡単にうまくいかないよね。
そもそも学校って、できないことをプラクティスする場なのに、なんでできることばかりを前提にしているの、と思うんだ
失敗していいじゃん!
失敗したときに次どうする?と、また場を設定したり、リフレクションの場を設定することが、教育で大事なことだと思っています。

リエ:市民としては、教育に関わりたいと思いつつ、教育のプロじゃないし、先生が持っているであろう「正解」を提供できない気がして、気後れしたりしちゃんだよね。なにが成功でなにが失敗かすら、先生と握りあってないし・・・。

ケン:教育って、みんながプロフェッショナルとして機能していくのがいいと思っているんです。先生じゃなくたって、職場でも家庭でも地域でも、だれだって、だれかに教育する機会があるでしょ?そういう意味では、みんなそれぞれの置かれた場所で教育のプロとして生きているんです。

・・・少し肩の荷を下ろしたほうがいいよね、教育って(笑)。難しくしようとすればするほど、おもしろくないからさ。

良い教育ってなんですか?というと、当たり前だけど、子どもたちが楽しいことなんです。子どもたちが楽しくなるには、そこに関わる大人も楽しんでないとできないでしょう。みんなが楽しい場を本気でつくったら、絶対良い教育の場になるよ、と思う!

つづく(改めて伝えたい大切なこと、編集後記)


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