見出し画像

緊急事態だからといって、安全性を無視して良いって話ではないと思う

至極真っ当な社説記事だと思います。ただ、悩ましい問題だなとも同時に思います。

この社説は以下の文章から始まります。

新型コロナウイルスのワクチン接種について、政府の分科会が提言をまとめた。医療従事者、高齢者、基礎疾患がある人を優先対象とする一方で、安全性や効果の両面で理想的なワクチンができる保証はないとの考えも盛り込んだ。

一般的にワクチンの実用化までの期間は、5~10年以上かかると言われているため、それを1年ちょっとで開発しようとしています。

既にかなりの前倒しなのに、さらに緊急使用となると最低限の安全性の確認も取れていないことになります。そのため、現時点で確保できる安全性については、しっかりと取っておいて欲しいです。

リスクとベネフィットを語る上でも、いくら急いでいるとはいえ、最低限の安全性は必要だと思います。


さて、医薬品とは何なのかについて、復習する必要があるので、まずはそこから。

医薬品とな何なのかについては、以下の2つの法律で述べられています。
(追記あれば教えて下さい)

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
第一章第二条
この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)
食品衛生法
第一章第四条 
この法律で食品とは、全ての飲食物をいう。ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品は、これを含まない。

医薬品の定義は、
・疾患の診断・治療・予防
・身体の構造・機能に影響を及ぼす
とあり、食品とは一線を画すもの、というのが二つの法律から読み取れます。

そして以下の第一章第一条に、この法律の趣旨が明記されています。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
第一章第一条
この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。(国の責務)

よく見ると、法律の名前自体が趣旨なんですね。この第一章第一条にあるように、品質、有効性及び安全性の確保が真っ先に謳われているのが分かると思います。

品質、有効性及び安全性の確保というのは、科学の世界と言い換えてもよいと思います。

安全性と有効性が論理的に実証されない限り医薬品としては認めないというのが原則です。

冒頭で紹介した記事には以下の記述があります。

ワクチンは治療薬と違って予防を目的に健康な人に接種する。何より安全性が大事になる。深刻な副作用がでると、大きな社会問題にもなりかねない。

ワクチンの対象者は、死に瀕した患者ではなく、健康な人々に接種することになるため、安全性がより大切になるのは当然のことだと思います。

そしてワクチンの最低限の安全性が証明される前に使用されるかもしれない流れが見えてきています。


話は少し飛びますが、2020年5月にレムデシビルが特例承認されたのは、覚えていますでしょうか?

厚労省は、レムデシビルの承認申請を見越して、5月2日付で、同政令(医薬品医療機器等法の第14条の3第1項の医薬品等を定める政令)の一部を改正。対象となる品目に「新型コロナウイルス感染症にかかる医薬品」を追加。承認制度が日本と同水準の国を「米国、英国、カナダ、ドイツまたはフランス」に変更した。

新型コロナウイルス感染症にかかる医薬品には、今回のような抗ウイルス薬だけでなく、ワクチンも含まれると考えられることから、前述した国で新型コロナウイルス感染症を対象に承認されたワクチンについても、今後国内で特例承認が可能になる。

レムデシビルはコロナウイルス感染者の治療薬です。そのため、人命救助という大名目があるとすれば、特例承認をするのは一理あるかなとは思います。

この政令改正の一部改正によって、米国が日本と同水準国として追加されました。そのため、米国で承認されると、日本でも特例承認可能となります。


日経新聞の社説と同じ懸念を抱いている人が、米国にもいます。

<2020年8月24日付け>
米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長は、ロイターの電話インタビューに応じ、新型コロナウイルスワクチンについて、大規模治験で安全性と有効性が証明される前に緊急使用ガイドラインに基づいて配布するのは間違った考えで、他のワクチンの治験に悪影響をもたらす恐れがあると警告した。

この懸念が発表される前日には、以下の動きがありました。

FDAは23日、新型コロナ感染症から回復した人の血漿(けっしょう)を使った治療法の緊急使用を許可した。前日にはトランプ大統領がツイッターで、FDAのハーン長官をやり玉に挙げ、FDA内の「闇の国家」がコロナワクチンや治療法の治験を妨害していると非難していた。

FDA長官は、大統領の関与はないと言っているが、政治関与への懸念が浮上しています。

ファウチ氏は、ワクチンに関するFDAのガイドラインは、緊急使用許可の場合であっても、安全性と有効性の証明を明確に義務付けていると指摘。「私にとっては、ワクチンの安全性と有効性の双方を確認することが最も重要だ。この双方の完全なる証明を妨げるものがないよう望む」と語った。


そしてこの流れの逆を行くのが中国です。

中国政府が新型コロナウイルス向けワクチンの緊急投与を7月22日に正式に始めたことが分かった。医療従事者のほか、防疫や検査担当者、交通機関の担当者が対象だ。同ワクチンは複数の中国製薬会社が各国と組み、最終の治験を進めている途中。実際の使用事例を示すことで、安全性をアピールする狙いもありそうだ。

既に7月22日からワクチンの緊急投与している。使用実例を示すことで、安全性をアピール…


最初の方でも書きましたが、最低でも5年かかるワクチンの臨床治験を各国やWHOの要請を受けて前倒しで進めています。

そのため、各企業は慎重にならざるを得ません。日本や米国では、コロナウイルスワクチンに起因する健康被害に対しては国が責任を引き受けます。

一方欧州においても議論となっている。

論点はこれまでも書いてきたように、
・超高速開発が生む「必然的」リスク
・「危険な前例」への懸念
・製造業者が負うリスクの埋め合わせ
が主な内容であり、欧州においても免責となりそうです。


コロナウイルスワクチンは必要だと思います。

だからこそ、今出来得る限りの方法で、しっかりと安全性と有効性を証明して、大手を振って承認して欲しいと思います。

とても悩ましい問題であるとは思います。

今回が緊急なのはよくわかっていますが、最低限の安全性も担保できていないものは世の中には出してはいけないと私は思っています。


#COMEMOHUB #COMEMO #NIKKEI #COVID19 #ワクチン #安全性と有効性 #医薬品 #承認プロセス #免責

この記事を読んでいただいたみなさまへ 本当にありがとうございます! 感想とか教えて貰えると嬉しいです(^-^)