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【随筆/まくらのそうし】 トラノオ

 その尖った葉先が邪を払い、空気を浄化するというもので、サンスベリアという、横文字の観葉植物を手に入れる。

 しかし、このサンスベリア、和名はトラノオというもので、まさに見た目も虎の尾に似たり、そう知った後には、そちらの名しか覚えない。

 初めは玄関に置いていたが、どうもそこが暗いので、太陽が恋しかろうと、たまに外に出してやる。

 そうするうちに無精も手伝い、やはり植物は日に当たった方が良いのだと、外へ置きっぱなしになる。

 そこへ現れたのが、ヤギである。

 これは柵の中にあるのだが、時々気軽に脱走し、庭までやってくるのが庭木を食べ、迷惑千万、困りもの。

 たまたま、その日は家を出て、夕方過ぎに帰ってみればヤギがおり、嫌な予感に鉢を見れば、無惨、トラノオはその先っぽから毟り食われている始末。

 鋭い葉先もヤギは払えず、そもそもの邪も払えなくなり、その存在価値はいかほどか、いまも食いちぎられたトラノオは、何の期待も背負わずに、ただの植物として生きている。

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