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貧乏レシピ戸棚風味うどん

とにかくお金がなかった。バイトに行くために乗るバスのお金もないくらいなかった。
シェアハウスのキッチンの戸棚には前の住人が残していった食料があってそれを食いつないで生きていた。
お米はバイト先のジャパニーズレストランで安く買うことができたので、お米だけはあった。

なんでお腹が減るんだろう。お腹さえ減らなければ食べなくていいし、食べるためにお金を使わなくてもいいのにと結構本当に腹が立った。そんなときに食べていたお金がないレシピを公開します。

まずカレー。オーストラリアは夏を迎えようとしていて窓の外は日差しで真っ白に輝いていた。
湿度が日本より低いとはいえ暑いオーストラリアでカレーを沢山食べた。夏野菜なんて入ってない。ただただ安く作れたから。日本でも売ってるようなバーモントカレーのルーがいくつか戸棚に入っていた。キッチンは共用なので沢山作って何日も置いておくことは出来ないので、一食分だけ作る。お米を炊いて、湯を沸かす。お湯はカレー一食分だけ。湯が沸いたらカレールーをひとかけら入れる。そこにバイト先であまった何の魚かわからないフライを入れる。これがシーフードカレー。具がないときもある。とにかく湯があればカレーが出来るからカレールーはえらい。

パスタ。パスタは日本と同じくらいの値段で沢山入っているので自分で買う。パスタを茹でて塩を振る。食べる。塩味だ。栄養とかはもういい。とにかくお腹が減るのを何とかしなければならなかった。
あとは近所の小さな雑貨屋のようなところで売っていたグリーンカレー味のインスタントラーメン。70円くらいだった。本当にこれは沢山食べた。スープを飲んでしまえば結局同じなのに、とにかく麺を増やそうとスープがなくなるまでずっと茹でていた。味は普通においしかったと思う。正直あんまり覚えてない。ずっとお腹がすいていたなあという記憶しかない。

チャーハン。冷凍しておいた米をレンジで戻して、醤油をかけて炒める。フライパンを振っていると同じシェアハウスに住んでいた韓国人の女の子が「あなた上手だね」と褒めてくれた。分けてあげる余裕はなかったけど「一緒に食べる?」と聞いたら「ご飯食べに行くからいらない。ありがとう」と言って迎えに来た男の子と出かけていった。

最後は自分だけ食べるのも申し訳なくてルームメイトのジョンくん(韓国人)にもふるまった韓国のうどん。なんという名前かはわからない。韓国語で説明が書いてあった。それを茹でて、同梱されていたスープを入れる。出来上がりだ。
ジョンくんに出来たよと言って一緒にキッチンで食べた。すごく古いものだったらしく完全に賞味期限が切れていた。二人とも気にしない人だったので大丈夫だろうと思って箸をつけたが、ずっと置いてあったのだろう。匂いが移ってしまって戸棚の木の味しかしなかった。そして韓国語が読めなかったので茹でる時間も間違えて伸びに伸びていた。
あんなにまずい麺を食べたのは生まれて初めてだった。ごめん、食べなくていいよ。とジョンくんに言って自分はもったいないので頑張って全部食べた。その日はずっと吐き気がした。貧乏が憎かった。

次の日、お礼にとジョンくんが朝ごはんに辛ラーメンを作ってくれた。器に卵を溶いておいて、そこに出来たラーメンを入れるとあんまり辛くないよと教えてくれた。韓国の人は朝から辛いもん食べるんだなと思いながら食べた。めちゃくちゃ辛かったけどおいしかった。

こぼればなし 
ジョンくんはある日、「どうしても食べたくなった」と言って鶏を丸々一羽買ってきてサムゲタンを作ってふるまってくれた。出来上がったサムゲタンはちょっと薬膳くさいだけで何の味もしなかった。「ごめん、食べなくていいよ」と僕に言って彼は苦しそうに汗をたらたらと流しながらサムゲタンを最後まで食べていた。 

Pityman「ばしょ」2019年9月20日(金)~24日(火)@新宿眼科画廊


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やましたゆう

さみしさが好きです。 文章を書いています。演劇をつくったりもしています。 次回公演Pityman「ばしょ」2019年9月20日(金)~23日(火)@新宿眼科画廊 連絡→pityman0@gmail.com

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Pityman「ばしょ」公演特別連載 2019年9月20日~24日@新宿眼科画廊 山下由のオーストラリア滞在記。ウルルは大きな赤ちゃんみたいでした。
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