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もう私は歩き出してしまった

令和2年は最悪の幕開きになった。入院、大腸癌摘出手術、コロナ禍、抗癌剤治療への底知れない不安。

すべてをマイナスに捉えれば,運命への恨みつらみで埋まってしまう。心が真っ暗になってしまう。

こんなに頑張って世のため人のために尽くしてきたのに、なぜ癌に、と神さまを恨んでしまう。

再発への不安は大きい。頭にこびりついている。

再発防止の抗癌剤治療は気休めかも知れない。抗癌剤治療を受けようが受けまいが、再発する人はするし、しない人はしない。

すべて運命なのだ。

もし再発したら運命だったと受け入れよう。受け入れる強さをもとう。

そんな心理状態の中、6月末のサークルの授業からスタートし、少しずつカルチャースクールの授業を再開。今日、K市のスクールに出かけた。

思えば1月に入院してから、JRと私鉄を乗り継いで出かけるのは初めてだ。バスで近場まで出かけることはしょっちゅうだが。 

電車に乗ることが怖かった。

ラッシュアワーの混雑を思い出す。だいじょうぶだろうか。

娘に励まされた。「電車は前ほど混んでいないよ。皆、マスクして黙って座っているだけだから、コロナには罹らないよ」

マスクの下にハンカチを入れて、魔法瓶に熱いお茶を入れて(時々喉を潤すとウィルスを流し込む、と聞いたから)家を出る。

電車は以前よりずいぶん空いていた。ほっとした。もう家を出たのだ。ひるまず進むしかない。

スクールに着くと顔なじみのスタッフが「お元気ですか。もう大丈夫ですか」と懐かしそうに駆け寄ってきた。ずいぶん迷惑をかけたのに、やさしい笑顔で……。

黒板に板書きしていると生徒が入ってきた。

「センセー、会いたかった!もう大丈夫ですか。会いたくて申し込みました!」

「センセー、お元気そう~会いたかったです」

次々に懐かしい顔が。

私との再会を喜んでくれる弾んだ声が嬉しい。涙が出そうだった。

「これからはウィズコロナで生きるしかないから、外に積極的に出かけようと思っていたら、センセイの講座が再開されるとお知らせをもらって」

「コロナを怖がってずっと家の中にいるなんてつまらない。わたしたち高齢者は『ゴーツートラベル』も『ゴーツーイート』も行けないから、勉強しよう、そう思って受講しました」

このコロナ禍のなか、8名も受講してくれた。今日は3名都合で欠席。

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わたしたちの年代はパソコンでオンライン予約とか、複雑なことは出来ない。お得な企画からは置いてけぼり。「おとなしく家にいなさい」と言われているみたい。

でも、いえ、だからこそ、生徒さんが戻ってきてくれたのだ。

「旅行よりご馳走より楽しいひとときにしましょう!今日は『枕草子第一段・春はあけぼの』です」

生徒さんたちのやさしい笑顔に包まれて、声に力が入った。我ながら良い声だと自信がついた。

待っていてくれる人がいる幸せ。待っていてくれる場がある幸せ。

わたしの生き方は間違ってはいなかった!

不安も迷いもあったが、気がついたらわたしはまた歩き出していた。これで2校の講座を再開したことになる。

わたしを支えてくれるのは「センセイに会いたかった!」と言ってくれる人たち。

わたしの真の友はこの人たち。わたしの努力と積み重ねを分かってくれるのはこの人たちだけ。

心底、そう思った。

少しずつ再開される教室、生徒数は少ない。だが、「センセイに会いたかった」というやさしい言葉に包まれ、力をもらって歩き出す。

神さま、ありがとう~来年もわたしを守ってください!


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