【アパレル業界の話④】GUCCIはファッションショーの回数を減らす?!

先日、あるニュースに目が止まりました。

アレッサンドロ・ミケーレ、今最もファッション業界に影響を与えるこの人物。GUCCIのクリエイティブディレクターです。ファッションオタクの人、特にモードが好きな人には知らない人がいないと思います。

そのミケーレがファッションショーの回数を年5回から2回に減らすと発表しました。

また、メンズ、ウィメンズの区分はせず、春夏コレクション、秋冬コレクションというくくりも取っ払うとのこと。なかなか衝撃的です。

実はファッションショーはひとつのマーケティングビジネスです。そこで開かれる都市の経済効果は莫大です。開催地にとっては、ファッションウィークが開かれた際には、ホテルやレストランをはじめとしてたくさんの収益を得る貴重な機会となります。それが消えてしまうのは関係者にとっては恐ろしいことです。でもGUCCIに発表は、それが現実的に広がるきっかけとなるでしょう。

ミケーレ自身、称賛の陰に凡人が想像もできないようなプレッシャーの中で戦ってきたこと、マーケティングビジネスを優先した年5回のショーに拘束され自分のリズムで本質的なクリエイティブ活動ができなかったこと、コロナ禍をきっかけにあまりにも多くの人が集まるイベントが危険性と環境悪化をもたらすこと、etc・・・を考えた上での決断だったように推測します。

我々人類は、資本主義というビジネス最優先の中で行き過ぎてしまった側面は否定出来ず、地球環境を悪化させ、人間の心を疲弊させてきたことを受け入れていくことから、次のビジョンを考えなければはじまらないと実感させるニュースでした。

今後スローライフというかスローカルチャーがファッションの世界でも当たり前になるのかもしれません。その本質はゆっくりすることでも、きちんとすることでもなく、自分の時間を作ること、そしてそれを楽しむことです。

自分が愛するファッションというカルチャーを創造する時間を作り、それを楽しむこと、つまりスローカルチャーは名声を得たデザイナーやカッターであっても大事にすべき概念となるかもしれません。

もしかしたら、スローカルチャーを体現している洋服屋は、アレッサンドロ・ミケーレではなくアントニオ・リベラーノであるように思えてしまうのは私だけでしょうか。

Zest is the secret of all beauty.There is no beauty that is attractive without zest.

情熱はすべての美の鍵です。情熱なしで魅力的な美など存在しません。


──クリスチャン・ディオール

ファッションデザイナーの情熱をビジネスが邪魔してはいけない時代になったとつくづく思います。

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