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参考書籍)「宇宙船地球号」を、静かに、でも確実により良くする方法~マズローと新しい資本主義の交差点

楠浦です。あらためまして、本年もよろしくお願いいたします。

新年のまともな記事第1号(笑)は、書籍紹介を兼ねたものにします。

2020年(昨年)も、お陰様で多くの良書に出会うことができました。企業内発明塾での紹介を優先しているため、公開記事での紹介が滞り気味で申し訳ありません。世の中をより良くするには、優先順位があります。

「近いところから変える」

これに尽きると僕は思っています。隣人(物理的な近さに限らない)を変えられない人間が、地球の裏側に影響を及ぼすことができるかできないか、正確にはわかりませんが、残念ながら、今の僕には想像できません。

また、自分が変われない人間が、、、というのも同じです。このへんは「7つの習慣」に詳しいですので、興味ある方はお読みください。

本題に行きます。

「資本主義の再構築」~これがハーバードの人気授業になる時代

本日紹介したい本は、以下です。

僕が、「へー、そうなんだ」と思ったのは、この本の内容は

「ハーバードの人気授業」

である、という点です。書かれていることは、僕にとっては当たり前のことばかりなのですが、これが、大人気授業である、という点に注目しています。

「ハーバードの人気授業で、一体どんなこと教えているの?」

と思った方も、ぜひお読みください。以下、僕の備忘録を兼ねて、この本の内容に関するエピソードと、理解を深めたい方のための関連書籍を紹介します。

「楠浦さん、何考えてるの?」

と思われた方はぜひ、続きもお読みください。

2004年に始まった「CSR経営」ブーム~ナノテク Start-Up での出来事

大学院で「エネルギー工学」を専攻し、エネルギーという視点から、工学だけでなく、政治・経済・社会について、幅広く学び議論する機会を得たこともあって、

ただ働くだけではつまらない、せっかくだから、少しづつ世の中をより良くできるような、製品・事業・技術の開発に取り組みたい

と、ずっと考えてきました。まぁ、余裕がなければそれどころではありませんし、後述するように、それを実現するには、経営の知識が必要です。

「持続可能性」

が重要だからです。打ち上げ花火で終わらないようにするにはどうするか、という問いに対する答えが

「経営に精通し、熟達する」

ことです。社会をより良くし続けるためには、(例えば)継続的にROIを高める必要があります。一夜にして社会が変わった、みたいな論調は、一部のメディアには好まれますが、実際には、それに向けて水面下で継続的な取り組みがあるのです。現場にいればわかります。

経営について知りつくすことは、社会をより良くし続けるために、欠かせません。技術者が社会を良くしたいなら、経営は避けて通れません。川崎重工時代、および、コマツ時代にそういうことを言っていたところ、何名かの隣人は

「楠浦は、あっち(経営サイドってことかな?わかんないけど)の世界に行ってしまった」(笑)

などと酷評されましたが、いま、その方たちはどうされているでしょうか。あっちに行かないと、こっちもよくならないのです。繋がってますから、当然です。私はこっちにいたほうが心地いい、と言っていても始まりません。やるのか、やらないのか、ただそれだけです。

前置きが長くなりましたが、その後立ち上げたナノテクスタートアップの初代の社長が、

「これからは、CSR経営だ」

と言っていました。2004年です。タイトルではブームと書きましたが、まだ誰もそんなこと言ってませんでした。早すぎたと思います。ただ、その時に、

「トリプル・ボトムライン」

という言葉を知りました。これだ!と思いました。

トリプルボトムラインとは、組織の活動パフォーマンスを評価するとき、経済的側面・環境的側面・社会的側面の3つの軸で評価をすることを指す。1994年、起業家であり作家のジョン・エルキントンが初めて「トリプルボトムライン」という言葉を提唱。
https://ideasforgood.jp/glossary/triple-bottom-line/

簡単に言うと、これまで、企業活動は「儲かってるかどうか」だけで評価されてきましたが、今後は、「良い社会づくりに貢献しているか」「地球の持続可能性に貢献しているか」も、評価軸に入りますよ、という話です。

ボトムラインというのは、損益計算書の一番下のところ(ボトムライン)、つまり、利益(純利益かな)のことを示す、いわゆる会計用語なのですが、そこに、突然「社会」「地球環境」の話が入ってきたわけです。

当時の社長は、これを何とか事業にできないか、と悪戦苦闘していました。ナノテクスタートアップじゃないの?と思われた方、正解です(笑

彼の中では、ナノテクとCSRは繋がっていたようですが、(私を含む)他メンバーには全く理解不能でした(笑

ものごとは、一つひとつ、進める必要があります。一足飛びに進めても、誰もついてこれないからです。トップではない一(いち)経営者として、貴重な経験をしました。

ただ、CSR経営という考え方は、僕にとっては非常にしっくりくるもので、いずれこれが主流になる、と確信しました。これまで繰り返し取りあげている、マズローの「完全なる経営」を、経営用語に翻訳したもの、と僕は解釈したからです。

ちょうどそのころに出版され、繰り返し読んだ本です。今でも、第1刷が手元にあります。

人生が長くなりすぎて、これまでの経緯の説明がいちいち必要になるのも、面倒ですね(笑 ただ、こういうことも書いておかないと、そもそも弊社社員とも話が通じなくなります。飲み会でおっさんが昔話をして、誰かが聞いてくれる時代ではありませんから、なおさらです。聞きたい人がいるなら、僕はいくらでも話しますが、、、(笑

「宇宙船地球号」をより良くできるか、それは自分しだい~経営者・組織人・投資家。そして「良き市民」として

大学院時代に出会って、読んだ本も紹介しておきます。

ボールディングは、「宇宙船地球号」という概念を経済学に持ち込んだ経済学者として有名です。

生物学者のベルタランフィに呼応して贈与経済学や組織論さらには紛争解決論など、一般システム理論の社会システム理論への理論的拡張に貢献した。経済学のみならず教育・詩作・システム科学など多彩な才能を発揮し学際的な研究活動を行った。特にチャールズ・ダーウィンの進化論を経済学分析に取り入れた進化経済学の樹立で有名。また、バックミンスター・フラーが提唱した概念「宇宙船地球号」を経済学に導入した。
wikipediaより)

いま、わざわざ読み直すほどではないと思いますが、当時はなかなか斬新な本でした。先に紹介した「CSR資本主義」の元ネタになっている本ではないかな、と思います。

「宇宙船地球号」という考え方は、バックミンスター・フラーが1963年に考えた(公表した)言葉で、当時はある種の哲学だったと思います。それが、「経済学」になり、「経営学」そして「会計基準」になった、そういう経緯ですね。この間、40年経っています。それぐらい時間がかかる、ということでしょう。新しいコンセプトを思いついた皆さん、焦らずに行きましょう(笑

焦ってイライラして自滅する、そういう人を、数多く見てきました。

企業内発明塾でも、

「(その企業にとって)斬新なコンセプトを含む企画は、まず、受け入れられないから、そのつもりで用心して臨むように」

と戒めています。先日も一つ、そういうのがあり、私が代わりに周囲を説得する羽目(?)になりました。まぁ、それも僕の仕事だと考えています。

いいアイデアが陽の目を見ないのは、ホントにもったいない

からです。

僕は先ほど、宇宙船地球号のコンセプトが、「トリプルボトムライン」という「会計基準」になった、と述べました。これで、宇宙船地球号のコンセプトは、

企業内部の活動ではなく、投資家の投資選考基準になった

と感じました。2004年のことです。

現職の TechnoProducer株式会社 では、マズロー的な

「自ら考えて行動し、企業活動に長期的・積極的に貢献する社員を増やすことは、良き市民を増やし、社会をより良くすることになる」

という視点を持ちつつも、まずは、

「発明・知財・新規事業・研究開発」

に関する教育や、事業化支援のサービスを提供しています。これは、稲盛さんが

「従業員の物心両面の幸福を追求する」

と仰っているのと、表裏一体になります。少なくとも今の日本では、多くの方が、どこかの組織に属して働くか、その組織の関係者(家族・取引先など)だからです。もちろん、一人で自給自足生活を送っておられる方も、世界中にはまだまだおられるかもしれませんが、すこしづつ、上記に取り込まれていきます。

経営者にとって、従業員が企業人として成長することは、それだけで、良い社会を作っているのです。どんな事業を営んでいても同じです。

世の経営者の皆さん、自らの事業の種類を問わず、自信を持って、日々の事業活動と従業員の育成に取り組んでください。従業員の個性を活かし、その力を最大限に引き出すことが、社会をより良くすることに直結します。

マズローの考え方が、発明塾とどう結びついているか、以下でお話ししています。

そして、皆さんは、何らかの「投資」を行っておられます。たとえば、「年金」も投資に回されています。年金が天引きされている、というのは

「投資している」

と同義です。その運用先に、もっと口を出してしかるべきかもしれません。貯金でも同じです。銀行が投資しています。

そして、多くの方は、株式投資により、もっと直接的な形で

「企業への投資」

を行っておられると思います。その基準を、自らどう考えるか。答えは一つではありませんが、大きな流れがある、ということです。学生向け発明塾で、投資部をつくり、企業分析を行っているのも、そういう流れがあるからです。

そして、そこで必ず出てくるのは、

「どのような、根の深い課題を解決しようとしているか(市場の広さと奥行き)」

「将来に向けた投資が行われているか(研究開発の成果は知財として資産になっていく)」

の2つの問いです。

知財や研究開発の仕事をしている方は、

「より良き社会を創り出す企業を見抜く眼」

を、仕事を通じて養っている、と言えるでしょう。

いい仕事ですね。

どこまで続ければよいのかわからなくなってきましたので、今日はこの辺にしておきます(笑

続きはまた、どこかで書くか、お会いした時にお話ししましょうね。

楠浦 拝



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