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2月8日 かんぽの不正販売問題から考える目標と不正と企業構造との関係。

今日は何の日?をビジネス視点で掘り下げ「頭の体操ネタ」にしています。
今日の「頭の体操」用質問例はこちら。

→高すぎる目標は不正の原因となる場合がある。それを防ぐにはどうしたら良いだろうか?


1887(明治20)年のこの日、逓信省(後の郵政省、現在の日本郵政グループ)のマークが逓信の「テイ」に合わせて甲乙丙丁の「丁」に決定したことから「〒マークの日」です。


ところが、万国共通の郵便料金不足の記号「T」と紛らわしいことがわかり、6日後の14日に、「テイシンショウ」の「テ」を図案化した「〒」の誤字だったことにして変更したそうです…

郵便局、ご案内の通り、民営化され、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社に分割されました。

郵便事業を引き継いだのが日本郵便です。
2019年以降、全国で約2.4万箇所もある郵便局のネットワークを維持する(郵政事業のユニバーサルサービスを確保する)費用の一部、という理由で交付金が支払われることになりました(以下スキーム図:同社決算資料より)。

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2021年度にはなんと2,934億円も支払われています(下図:)。

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電子メールの発達や携帯電話の普及によってハガキや封書のやり取りはかなり減っていると思われますが、実際のところはどうなのでしょうか?

各種統計データから、郵便局数、郵便物総数、小包数の3つの推移をまとめたものがありましたので転載します(出典:「郵便事業の現状とデジタル時代の郵便サービス」通信研究会報告(2020年2月25日))。

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ご覧のように、通常の郵便物は約270億通程度をピークに減少傾向が続いています。ちなみに、一昨年度実績は約163億通と減少は続いています。


一方で、ゆうパックを代表とする小包は大きく伸びていることが分かります。ゆうパックの一昨年度実績は9.7億個となっています。
そして、郵便局数はほぼ横ばいで推移していることが分かります。

郵便物減少の背景を考えるために、日本郵便の「郵便事業の現状について(2018年8月30日)」という資料に、郵便物数とインターネット普及率、スマートフォン契約比率とを併記したものがありましたので転載します。

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やはり相関が、ありそうですね。

さて、郵便事業は労働集約的なコスト構造であることは容易に想像がつきます。実際売上高人件費率は約62%と、ヤマトHDの約51%、サービス業平均の約27%と比較しても圧倒的に高くなっています。

この背景には、先程の郵便物の減少が大きく関係しています。
例えば、1箇所に多くの郵便を配達するのであれば、一度に処理できますから効率が良いのですが、少なくなってもコストはほとんど変わりません。具体的には、以下の通りです(出典:同資料)。

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つまり、1996年度には1箇所に1.39通配達していたものが、2017年度には0.92通と減少し、経営効率が悪化していることが分かります。

一方で、「ユニバーサルサービス維持」という足枷があり、郵便局を大幅に削減することはできません。

となると、どこに皺寄せがいくかというと、もっとも大きなコスト、人件費です。以下の通り日本郵便の正社員平均賃金は民間企業平均と比べて低い傾向にあります(出典:同資料)。

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しかし、正社員の給与を抑え気味にしても、人手不足で臨時でアルバイトを募集しなければならない状況です。そのコストは業界よりも上昇傾向です。

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このように、郵便事業を取り巻く環境は厳しいものがあります。

こうした厳しい環境下で少ない収入源の一つであったかんぽ生命保険商品の販売手数料に対する高い目標が課され、不正に繋がったとも言えます。


→一般の事業会社でも、ある事業分野の低迷を補うため他事業への目標配分が高くなることはないだろうか?それ自体は問題ないとしても、高すぎる目標はなんからの不正のきっかけになる可能性があるかもしれない。自社ではその危険はないだろうか?


最後までお読みいただきありがとうございます。
過去の投稿は以下にまとめていますので頭の体操ネタに覗いていただければ幸いです。


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