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朝、第一の発声から

 ついこの前正月を迎えたと思っていたら、もう月末がやってきている。
 やらなきゃいけないことはあるのに、仕事から帰ったらコタツに根を張って、スクロールしても更新することがない状態まで、ただ画面を見ている日々が続いていた。
 本棚には読んでいない本が埃を被って整列して、適当に積み重ねた雑誌やノートが机の上を占拠している。
 夜気づいたら時計の短針が3を過ぎていて、そこから入浴準備に入る。寝る頃には外で鳥が鳴いていて、起きるのは出社1時間前くらい。
 前は朝食を必ず食べていたのに、その時間すら取ってない。

 そんな乱れた生活を送っていたからか、脳がバグる。
 パンを袋から出して、袋じゃなくてパンの方をゴミ箱に入れていたりする。
 そんな状態で出勤すると、すぐに挨拶が出てこない。

 職場で会社の人とすれ違う。あ、人がいる。と認識してから「おはようございます」が出てくるまでに数秒の隙間が生じる。
 酷い時には、──なんて言うんだっけ。
 と、何も言わずに会釈だけになる。
 向こうが「おはよう」といってくれて、
 ──あ、『おはよう』だった、となる。

 そんな朝の挨拶第一声は、暗いくぐもった声になる。眠いのもあるのだけれど、頭が働いていないのだと思う。

 とはいっても、今日までそんなこと気に求めていなかった。
 朝なんてそんなものだと思っていたから。
 頭が働いてなくて当たり前。

 それが今日の朝は、朝の第一声から割と大きい声が出た。はっきりとした通った声。
 昨日の夜に何かしたとか、朝ご飯をしっかり食べたとか、特別何かしたというわけではない。
 けれど、いつもよりすんなりと声が出た。
 たまたまコンディションが良かったのだと思う。

 でもなんだか、それだけで気分がちょっと上がった。
 そのあとは“意識”していつもより大きい声を出すようにした。
 でもこれは最初の第一声が良かったから。その後も特に仕事量は変わらないけれど、なんかいい1日だった気がする。

 《朝の挨拶がよく出来た》
 案外、そんな些細なことでいいのかもしれない。

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