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『空飛ぶストレート』

 僕の胸に黒い羽が生えてきた。羽は重くて、痛くて、苦しい。僕は取りたくてたまらないのに、いくら抜いても黒い羽は生えてくる。
 白い羽をつけた人が僕の横を通った。白い羽はとても軽そうで、心地良さそうだった。僕はどうしたら胸の羽が白くなるのか尋ねた。
「もっと気楽に楽しめばいいの。自分を最高だと思うの。もしくは、この道を進むのを辞めることね」
 そう言って、僕の横を通り過ぎて行った。僕にはそんな考え方も、この道から外れることも出来そうにない。ただ一直線に、この道を進んで来たのだから。
 なんだか腹が立ってきて、僕は黒い羽を抱えたまま前へ進むことにした。歯を食いしばって、黒い羽なんかに負けてたまるかって。

 そうして何年か経った。胸の羽は鮮やかなオウムになって、僕は空を飛んでいた。それは僕の見たい景色だった。
 地上を見ると、いつかの白い羽をつけた人があの時と同じ道を歩いていた。変わらないままで。でも、それが心地良いんだろう。

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