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種差海岸名作の渚

 青森県八戸市の種差(たねさし)海岸。
 三陸復興国立公園に指定されている名勝で、多くの文学者や芸術家たちの足跡が残っていることでも知られる。
 ざっとあげるだけでも、宮沢賢治、井伏鱒二、佐藤春夫、東山魁夷、水上勉、谷川俊太郎、三浦哲郎、司馬遼太郎など。
 詩人の草野心平はこの海岸を何度か散策し、「種差海岸」という題名の詩を発表したことがある。種差海岸の月を「ザボンのような満月」と表題して、その美しさをたたえた。
 詩人で文学者の宮沢賢治は大正15年の夏に鮫の旅館に宿泊した。旅の印象をもとに「八戸」というタイトルの文語詩を作り、鮫駅から燕島周辺の風景を描写した。イーハトーブ海岸北端の町サーモとよんでいる。
 作家の井伏鱒二は紀行文「久慈街道」の取材で八戸を訪れ、「鮫浦」の項で、燕島から牧場地、釜の口周辺を描写した。この時、鮫の石田家を宿泊拠点として八戸市内、岩手県北、久慈地方を取材した。

井伏鱒二


 詩人の佐藤春夫は昭和26年と28年に種差を訪れた。また種差小学校から依頼されて校歌を作詞した。草花の咲き乱れる海岸美に魅了されて「美しい海べ」という随筆文で種差海岸を絶賛した。
 画家の東山魁夷は昭和15年に種差を訪れ風景をスケッチしたことがある。昭和26年に再訪。完成させた作品は「道」という題名で発表されており、今では東山の代表作となっている。
 作家の水上勉の小説「父と子」の舞台は種差海岸。東山魁夷の「道」が好きだった水上は、ここを訪問し小説の舞台とした。のちに同小説が映画化された時にもロケーション現場となった。

水上勉


 詩人谷川俊太郎。寺山修司祭のために八戸を訪れた時に、三浦雅士(評論家)らを村次郎(詩人)の案内で種差海岸を散策した。同行者の求めに応じて「はちのへ」の詞書を寄せている。

谷川俊太郎


 作家の三浦哲郎は八戸市出身で名誉市民。芥川賞作家でもある。鮫町と燕町周辺を「海の道」、東大と葦毛崎周辺を「草の宴」、中須賀、釜の口あたりを「晩夏を飛ぶ夕雨子」の舞台として作品を書いた。
 司馬遼太郎は街道を行くシリーズ「陸奥のみち」取材のために八戸を訪れた。種差海岸の風景や、幻の詩人といわれた村次郎を紹介。どこか宇宙からの来訪者があったら一番先に案内したい海岸だと表現した。


 (八戸市在住の郷土史家・江刺家均(=えさしか・ひとし)さんが執筆した観光パンフレットをもとにした)



 

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