東洋と西洋を結ぶシルクロードは、古代から重要な交流、通商ルートであり、多様な民族が興亡した文化融合の地だった。
　中国の洛陽、西安、蘭州、敦煌、新疆地域など各地の主要な博物館、研究機関の所蔵する文物の中から、シルクロードの名宝を紹介する日中平和友好条約４５周年記念『世界遺産 大シルクロード展』がやって来る。
　同展は２０２３年９月１６日（土）から１２月１０日（日）まで東京富士美術館（東京都八王子市谷野町４９２－１）において開催される。
　遣唐使など日本との縁が深い唐時代を中心とした名品を展覧するとともに、あわせて世界遺産に登録された遺跡の遺品も展示される。
　東京富士美術館の五木田聡（ごきた・あきら）館長は「当美術館は１９８３年に開館し、今年４０周年を迎えます。また１９７８年に日中平和友好条約が締結されてから４５周年。この節目の年を祝賀する大きな催しです・・・２００５年以降、（シルクロードに関係する展覧会は）なかった。日本では１８年ぶりの展覧会となります」と語った。
　青柳正規（あおやぎ・まさのり）同展覧会名誉顧問は言った。「文化や美術などが発展してきたのは違う文化が刺激し合って発展してきた長い歴史があるからです。シルクロードが栄えた時代のことを辿り、それと日本の新しい文化が開けてきたこととの関係を探ることが出来ます。人類にとって文化交流がいかに重要であって、それぞれの地域が発展するための肥し、原動力になっていることをこの展覧会で見ることが出来ます」。
　さらには陳諍（Chen Zheng）駐日中国大使館・文化担当公使参事官は次のように祝辞を述べた。「日本の皆さんにはシルクロードはおなじみだと思います。しかし、それは単なる東西を結ぶ経済通商路というだけではなく、東洋と西洋の文化の交わる要所であり、心の通いあう道でもあります」。
　「シルクロードが中日両国の友好協力にいかに大きな役割を果たしてきたかを知ることによって、中日人民は次々世代にわたってつきあっていくことが出来ます。中日平和友好条約の初心を忘れることなく、関係を発展させることが、人類文明共同体を構築することにつながると信じています」。

　東京富士美術館の平野賢一（ひらの・けんいち）学芸部長より見どころの説明が続いた。第１に「世界遺産認定後、中国国外で初めて行われる大規模なシルクロードの展覧会であること」。第２に「中国国内２７ヵ所の主要博物館、研究所からシルクロードの文物、関連資料など２４０点が出品されること」。第３に「金銀宝飾品、青銅器、ガラス、陶磁器、壁画、絵画、染織、経典、仏像など一級文物４５点が展観出来ること」。
　同展覧会は３章から成る。
○第１章「民族往来の舞台～胡人の活動とオアシスの遺宝～」ー中国では北方や西方の騎馬遊牧民を古来「胡（こ）」（胡人）と呼んできた。これらはイラン系、トルコ系、モンゴル系など様々だが、中でもイラン系のソグド商人は隊商（きゃらばん）を組んでオアシス都市を往来し、中国からローマをつなぐ東西交易だけでなく、文化や宗教の交流にも大きな役割を果たしてきた。北の突厥（とっけつ）、南の吐蕃（とばん）も勢力を増し、独特の文化を残している。ここでは西方や北方の香り高い遺宝を紹介する。

○第２章「東西文明の融合～響き合う漢と胡の輝き～」ー漢の武帝の時に東西の交通路が開かれ、以後大都市の長安や洛陽を中心に西方の文化が採り入れられていった。多民族国家といわれる唐時代になると中国に移住する胡人も増え、国際色豊かな社会状況を反映して、異国風の装いや美術、音楽が流行した。ここでは、唐時代の名品を中心におよそ８０点を紹介する。

○第３章「仏教東漸の遥かな旅～眠りから覚めた経典と祈りの造形～」ー西暦１世紀ころシルクロードを通って中国に伝えられた仏教は、経典の漢訳によって広く理解されるようになる。また、仏像や仏教絵画の制作も盛んになり、地域や民族の趣向に適応して新たな発展を遂げた。ここでは、トルファンと敦煌で発見された経典や、新疆、敦煌、さらに中原の各地で収蔵されている仏教美術の優品を約４０点紹介する。

　休館日は月曜日（ただし、９月１８日と１０月１９日は開館）。９月１９日（火）と１０月１０日（火）は休館。入場料は大人１５００円、大学・高校生９００円、中学・小学生５００円、未就学児無料。
　同展は巡回する。２０２４年１月２日（火）から３月２４日（日）に福岡アジア美術館、４月９日（火）から６月９日（日）に東北歴史博物館、６月２２日（土）から９月１日（日）が愛知県美術館、９月１６日（月・祝）から１１月１０日（日）が岡山県立美術館、そして１１月２３日（土・祝）から２０２５年２月２日（日）が京都文化博物館。