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高野和明, 阪上仁志 『夢のカルテ』 読了

こんばんは、ジニーです。

3月は暖かい気候もあってか、割と読書が進みました。
大作のような長編ではなく、短編を選んだのもサクサク進んだ要因でしょう。

今回は、高野和明, 阪上仁志のタッグで発表された「夢のカルテ」を読みました。
高野和明さんは、僕のトップ3に入る好きな作家さんです。

阪上仁志さんは、実はあまりちゃんと知らなくて、今作も高野和明さんの作品を手に取ったことがきっかけで知った方です。
調べると映画プロデューサーの方のようで、シネマゲート代表取締役社長でもあります。

同年代でもある二人の共作。
今回のテーマは「夢」です。

物語は短編の連絡となっており、とある銃撃事件に巻き込まれ心身に傷を負った刑事 麻生(あそう)が、もう一人の主人公である心理療法を手掛ける女性カウンセラー来生 夢衣(きすぎ ゆい)のもとに診察を受けに来るところから始まります。

事件以来、その現場を夢に見て目覚めてしまう症状を負ってしまった麻生刑事。
その治療のために来生夢衣の診療を受けたのですが、じつは夢衣には人の夢の中に入ることができるという特殊能力をもっており、その能力を診療に活かしていたのです。

夢という、意識と無意識の混在する領域の中で、その人物が抱える悩みの根源や無意識の恐怖、忘れてしまっていた出来事に触れ、心の解放を導いていくのです。


この「夢」というテーマは、絶妙な制限となって物語に作用していて、徐々に明かされていく夢の意味に、現実世界の事件や事象が絡み合い何とも言えないミステリーを味わうことができます。

短編という各物語の読みやすさもありつつ、高野さんの真骨頂でもある次を読みたくなるような筆力が相まって、まあページをめくる手が止まりません!

心理学の専門知識を用いつつも、夢という誰もがなじみのある媒体を通して
小難しさはほぼ感じずに読めますし、麻生刑事と夢衣の恋愛の模様も一つのエッセンスとして、物語の面白さに花を添えています。


物語は、主人公麻生の「刑事の夢」から始まり、「婚約者の夢」、「殺人鬼の夢」、「少女の夢」という4編から構成されています。
同じ「夢」であっても、その当事者の立場によって色合いも変わり、持つ意味も変わってくる。
多角的な入光でいろんな色を生み出すプリズムのような、面白さがありました。


「ジェノサイド」「13階段」のようなゴッリゴリの長編とは違い非常にライトな切り口とテーマでもあるので、高野さんの作品の中でも抜群に読みやすい作品だと思います。


ぜひ、手に取ってみていただければと思います。

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