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『ディアスキアの恋』第一回 (2022/06/07)

 コトミがシャワー室から出てきたときカズキは既にスーツに着替えていた。カズキがポケットからタバコを取り出そうとしたが、彼女が出てきたところを見て止めた。彼女はタバコは嫌いではなかったが、自分が気を遣わせてしまったことをどこか罪悪感を感じてしまった。彼女は感じなくても良いどうでもいい悪い感情を抱いてしまう。さらに、シャワー室から出てきたときにカズキの顔が少しイライラしたように感じたように察した。彼女はそれに対してもストレスを感じてしまった。彼女は服を着ながら気分を整え、自分の中で次にどうするべきかを考えた。カズキは深刻そうにベッドの端に座りながら一点を見つめていた。彼はこれから心中でもするようななにか思いつめているようにも受け止められる。思わず心配になって、声をかけたくなるような感じにもなるが、コトミにとってはいつものことだと思った。彼は自分の犯している罪の重さに耐えかねているのである。それは、コトミと不倫していることだ。カズキには奥さんと子供がいる。コトミはそれを知っている。それを全部受け止めて、カズキと付き合っている。関係を持ったきっかけは、カズキとの最初の会社の部署合同の打ち上げパーティーだった。カズキの部下が最初は話しかけてきた。それから輪が広がり、主任のカズキが入ってきた。コトミはカズキを見て、話してみたいと思った。カズキの部下を使いつつ、コトミの同僚も使いつつ、カズキに近づいていった。話してみると、丁寧で誰にでもわかる言葉を使っていた。こんな人が上司ならいいのになと思った。彼女は思い切った行動に出た。会場がたまたま、会社の大会議室だったのをいいことに、一旦自分のデスクに戻り、自分のLINEアカウントを付箋に書いて、カズキに渡そうとした。カズキが喫煙者なのが幸運にも作用して、ちょうどよくパーティー会場から出てくるところだった。コトミは勇気を出してカズキに付箋を渡した。カズキは驚いた様子だったが、笑顔で彼女からの付箋を受け取った。カズキはそのまま何事もなかったかのように、喫煙所に歩いていった。コトミは誰にも気づかれないように小さくガッツポーズをした。
 それから三日後、カズキから連絡が来た。
                                  つづく

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