しろみけさん

音楽と香りに関する雑文を散布 本名:風間一慶でも書いたりしてる

しろみけさん

音楽と香りに関する雑文を散布 本名:風間一慶でも書いたりしてる

マガジン

  • 事業報告書

    自由に文章を書きたいから不定期で日記をつけようとしたけども「東京の私立文系大学生が書き溜めているnoteのアレ」になるのが(自意識の観点から言って)耐えられなかったので、しろみけさんという事業の報告書というテイにして出すことにしました

  • これは香水に関するnote

    これは香水に関するnoteで構成されたマガジンです

  • (今のところ)noteでまだ誰もレビューしていない名盤たち

    数多あるnoteでの音楽レビュー。その中でまだ誰もレビューしていない(個人的)名盤を一つでも多くネットの海に放流するべく立ち上げたマガジンです。Dive Into Unnoted Music!!!

最近の記事

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しろみけさんのポートフォリオ 2023

色んなところで色々してるので、ここにまとめました 主要なものを掲載しています(※随時更新) ●noteこのnoteで書いている記事のまとめです。マガジンの他にも、色々な企画をやってるみたいです 【マガジン】(今のところ)noteでまだ誰もレビューしていない名盤たち 自分がこのnoteを立ち上げてすぐ、つまりまとまった文章を書き始めてすぐに始めたレビュー企画。自分が気に入った過去のアルバムを調べて、それの研究発表みたいな感じで放流してます。「Dive Into Unnot

    • TSUTAYAなんか好きじゃないもん|ニュータウンV『ニュータウン宣言』ライナーノーツ

      以下に続く文章は、ニュータウンVの1stアルバム『ニュータウン宣言』のリリースに寄せたライナーノーツです。しかし、これは四角四面な解説などではなく、この作品が放っている匂いの鈍色、水垢の赤、セブンの親子丼の容器の白、に乗っているネギの緑、ハンガーの黒、黒、黒、そしてTポイントカードに額装された青と黄色に関するエッセイです。 僕が生まれ育った北陸の小さな街には、なぜかTSUTAYAが2軒あった。自宅から近い方のTSUTAYAは文房具ばかりの狭い店舗だったが、も

      • 事業報告書06 / ¥$『VULTURES』(レビューではない、間違っても)

        サークルの卒業旅行で伊豆に行って、そのあと沼津で寿司を食べたり、深海水族館に行ったり、古着・レコード・昔のPOPEYE・映画のフライヤー・コーヒー豆・クラフトコーヒー・多肉植物が8畳くらいの空間に敷き詰められている店に「カルチャーすぎる」などと文句を垂れたりしていたら、カニエ・ウエスト+タイ・ダラー・サイン=¥$のアルバム『VULTURES』がドロップされた。年明け前から何度も延期を繰り返しており、「どうせ出ないっしょ」とタカをくくっていたので、存外すんなりリリースされて驚い

        • 浪費そのものが意味となる|フレグランス書評 vol.2:渡辺昌宏『香りと歴史 7つの物語』

          芳香は常に一方通行だ。手首へと過剰に振りかけた『CK one』は、振りかけた本人であるあなたよりも、電車で隣の席で座った見知らぬ誰かの方が、遥かに鋭く芳香を感じている。鼻をつまんだり息を止めでもしない限り、そのシトラスの匂いを拒否することはできない。しかも厄介なことに、香りの“初回“は原則的に拒否できない。せいぜい《この人ってこんな匂いしそうだな》とか《この料理はこういう匂いだろうな》という判断に基づいた予感がつけられるくらいで、それが当たっているか否かは一度嗅がないと永久に

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        しろみけさんのポートフォリオ 2023

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        • 事業報告書
          6本
        • これは香水に関するnote
          4本
        • (今のところ)noteでまだ誰もレビューしていない名盤たち
          18本

        記事

          香水とは「化学の詩」|フレグランス書評 vol.1:ルカ・トゥリン(山下篤子訳)『香りの愉しみ、匂いの秘密』

          「香水の批評家」とは、一般にルカ・トゥリンのことを指す。というより、彼よりも高名で、かつ数多の言葉を尽くして香水に纏わる事象を語ろうとしている人物はいない。だが、その評価といえば短絡的なものが多く、「辛口=批評」といった具合の(ごく凡庸な)批評観に照らし合わされたものがほとんどだ。 ルカ・トゥリンの主著といえば、さしあたり『世界香水ガイド』になるだろう。これは数百個にも及ぶ香水のガイドブックで、選者のルカは星を与えると共にコメントを添えている。「帝王」と称される彼の評価はシ

          香水とは「化学の詩」|フレグランス書評 vol.1:ルカ・トゥリン(山下篤子訳)『香りの愉しみ、匂いの秘密』

          事業報告書05 / 「冬季うつ」の温度

          身体が寒さを感知するたびに、心がどんぼりとする。いわゆる「冬季うつ」だ。厳密には冬季というより、気温が上がる季節から下がる季節へと移行したのを感じ取ると、それに呼応して心が萎れていく。自分のそれは生活に重大な支障が出るようなものではないが、それでも風呂が遠くなったり入眠まで2〜3時間かかったりするようになる。 少なくとも自分の観測範囲(インターネット)において、「冬季うつ」という言葉が積極的に用いられるようになったのは、ここ2〜3年の間であったように思われる(季節性情動障害

          事業報告書05 / 「冬季うつ」の温度

          同じ穴のムジナ——hollow meというバンドへの覚書

          ゆらゆら帝国「空洞です」の英題から名前を拝借したバンド、hollow me。そのサウンドを定義するなら、Unknow Mortal OrchestraやFoxygenが発する仄暗くも軽やかなサイケデリック光線と、それを浴びたTempalayやSouth Penguinsが体現するモダンサイケとJ-Popのマリアージュ、それに加えてInner WaveやMac DeMarcoといった——バンドのYouTubeチャンネルには、両者のカバー動画がアップされている——密室感のあるポッ

          同じ穴のムジナ——hollow meというバンドへの覚書

          事業報告書04:ヤバいはダルい

          ありとあらゆる「ヤバい」がどうでもよくなってきた。アートでもエンタメでもツイートでも、確かにヤバいやつは多い。ただ、それを受容するのは「私」という単一の存在でしかなく、そこに意味が収斂されるならば、自分が見てる対象なんてヤバくてもヤバくなくても、別にどうでもいいんじゃないか? いや、コンテンツに感動する心を失ったわけじゃない。そんな単一の存在を拡張するような、もしくは解体ようなものに出会った時には、自分だって心の底から感動する。例えばフジロックで見たYves Tumorなん

          事業報告書04:ヤバいはダルい

          傾聴という、ラグジュアリー / Cornelius『夢中夢』 レビュー

          音の減衰をここまで意識したのは、一体いつぶりだろう。夜、誰もいない街へと出て、手を叩いてみる。「パンッ」と渇いた音がマンションの壁へと当たり、反響を伴って、徐々に空気の中へと消えていく。どこか遠くに飛び立っていったような気もするし、元からどこにもなかったような気もする。 思えばCorneliusの作品——とりわけ2001年の『Point』以降——には、音の減衰をはっきりと感じられるデザインが施されていた。音数を絞るのみならず、アグレッシブなパンニングを施して、発音のタイミン

          傾聴という、ラグジュアリー / Cornelius『夢中夢』 レビュー

          事業報告書03:調布のドリブラー

          またこの季節がやってきた。俺が公園にサッカーボールを放流する季節だ。 四年前だ。上京してすぐ、俺は自由を謳歌していた。コロナが猛威を振るっていた時だから、比較的人の往来が激しい昼間は家にいる。ようやく自由になれるのは日付が変わってから日が上るまで、上京前の俺なら家に閉じ込められていた時間だ。別に派手な夜遊びをするわけじゃない。ただ街を散歩したり、朝日に向かってチャリを漕ぐだけだ。何をしても無駄な時間にどうしようもなく無駄なことをするのは、打算的なそれまでの俺にとって、唯一損

          事業報告書03:調布のドリブラー

          事業報告書02:オシャレと情報量(あるいはアニメ版『鬼滅の刃』とPlayboi Carti)

          オシャレな人のインスタは、得てして無言だ。 乱暴な言い方をしてしまった。この場合の「オシャレ」というのは、自分の独断と偏見でしかない。なにか一定の基準があるわけでもない。ただ、自分が直感的に「この人オシャレだなぁ」と思ったインスタの投稿には、キャプションがついていない。あっても1〜2行くらい。ハッシュタグもない。あとストーリーも無言。古い看板とか、盛れない角度の自撮りとか、街で見かけた変な若者とか、そういうのが説明もなくポストされてる。 無言か否か。それはおそらく、情報量

          事業報告書02:オシャレと情報量(あるいはアニメ版『鬼滅の刃』とPlayboi Carti)

          Vol.17 Sacradança/Thiago Amud〈今のところnoteでまだ誰もレビューしていない名盤たち〉

          ブラジル・リオ出身のSSW、チアーゴ・アムヂ(Thiago Amudi)。本作『Sacradança』が発表された2010年前後では、サンパウロでメタ・メタ(Metá Metá)のメンバーなどを中心に交流が行われたり、ミナス連邦大学からアントニオ・ロウレイロ(Antonio Loureiro)らによるムーブメント(日本ではミナス新世代として親しまれている)が広まっていったり、今のブラジルのSSWに通じる文脈が各地で生まれていた。ブラジル1の大都市であるリオでも、チアーゴが本作

          Vol.17 Sacradança/Thiago Amud〈今のところnoteでまだ誰もレビューしていない名盤たち〉

          事業報告書 01:文学性と余裕

          自分には文学性がない。 居酒屋で絡まれた強面のお兄さんが見せた意外な一面に、心を動かされたことがない。喫煙所にいるサラリーマンの目に映る悲哀に、感情を揺さぶられたことがない。駅前で歌う路上ミュージシャンの放ったリリックに、胸の奥を突かれたことがない。 そういう感性の乏しさを長らく憂いていたけど、最近はそうして憂うことすら文学性ワナビー仕草の一つに組み込まれているような気がして、どうにもこうにも身動きが取れない状況に陥ってしまっている。感性は乏しいくせに「こう思われたい」だ

          事業報告書 01:文学性と余裕

          betcover!!『卵』に関する、ひとつの大きな誤読といくつかの放言

           2月6日に渋谷のWWW Xで行われた、betcover!!の4thアルバム『卵』のリリースツアー<画鋲>の東京公演を観た。そして今、そのあまりに大きすぎた衝撃を、どうにかして体の外に逃がしてやろうと、このiPadの薄いキーボードを叩いている。柔術で受け身を取るのは、痛みを和らげるためではなく、受けた衝撃を体の外へと効率的に放射させて致命の傷を負わないためであるという。ちょうど同じ気分だ。私がこの薄いキーボードを使い、あの夜に柳瀬二郎が発したどの言葉よりも愚鈍な文句を連ねて、

          betcover!!『卵』に関する、ひとつの大きな誤読といくつかの放言

          インディーロックファンから見た2022年のブラジル音楽・4選

          はじめに(選盤の基準) 2022年に発表されたブラジル産のアルバムの中で、個人的にピックアップしたいものを紹介します。選盤の基準としては①欧米や他国のアルバムと比べても全く遜色なく、作品としての質が高いかどうか②〈ブラジル音楽〉というラベルに馴染むかどうか③普段からディグっている音楽マニア層へのレコメンドに耐えうるかどうか の3点を設けました。烏滸がましいことこの上ないですが、レコメンドから烏滸がましさを排除したらただの独り言になってしまうので、その点はご愛嬌。 ①「欧米

          インディーロックファンから見た2022年のブラジル音楽・4選