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五輪に同行、AIを使ったシステム開発 報道を引っ張る超アクティブなエンジニアの仕事って?

共同通信では今夏、東京と大阪の2箇所でエンジニア職の長期インターンを実施しました。参加してくれた学生の方々を中心に、AIを使った記事検索や記事作成のシステムを開発するという大きな成果となって実を結びました。

今回は番外編として、インターンのメンターを務めた2人の現役エンジニアのインタビューをお届けします。普段の業務内容からやりがいまで、報道を引っ張る舞台裏をご覧ください。


▽インターンの成果を正式リリース

-インターンは大成功でした。編集部からも実用化を望む声があがっています。
 
牧村 日々研究に励んでいる現役の学生さんたちと、技術的なことからそれ以外のことまでいろいろと話し合うことができて、とても新鮮でした。新たなアイデアを創出するには、ウンウン机に向かって考えるより、実際に手を動かしてああだこうだと議論することがやっぱり一番ですね。今回のインターンで、私自身も学ばせていただきました。普段の仕事にも生かしていきたいと思います。
 
鈴木 我々も勉強になりましたよね。もちろんインターンなので、学生さんたちに職業体験してもらうことが第一の目的なのですが、学生さんたちから我々も最新の手法などを学び、さらにユーザーの記者にも喜んでもらえるものができて、三方よしの結果になったと思います。

自然言語処理を専攻する学生たちが記事生成システム「くら〜けん」

-なぜインターンをやろうという話になったんでしょうか?
 
牧村 マスコミの技術職は、他業界に比べると学生さんからの知名度は低めです。共同通信のエンジニア職の仕事をより世間に知ってもらうため、開発作業を通じて直接学生さんと対話できるインターンを企画しました。
 
鈴木 あわせて、学生さんのもつ多様な専門性と共同通信が持つリソースを組み合わせて、何か面白いことができないかと考えました。その点、今回は大成功だったと思います!
 
 
-今後、実用化の話もあるようです。
 
鈴木 せっかくだったら学生さんたちに手土産持たせてあげたいですよね。品質を高めて、年明けくらいに社内へ正式にリリースしようかと企んでいます。

▽「自走できる人にとっては天国」 

-若手でも自分たちのやりたいことができるんですね。

牧村 インターンは、ルーティーンとは別のプラスアルファ業務にあたります。そういうのは多岐にわたりますよね。エンジニアでも個人の裁量が大きいので、やりたいことがある人はすごくやりやすいと思います。

鈴木 自走できる人にとっては天国です。共同通信のSEの特徴は、技術レイヤーごとではなくプロジェクトごとのチーム分けになっているところだと思います。多くの会社ではネットワーク部隊、データベース部隊、バックエンド部隊、フロントエンド部隊、のように技術ごとに組織や担当が分かれている一方で、うちの場合はプロジェクトごとに担当者が物理層からアプリケーション層までの全部を扱います。命綱をつけてロープワークをした翌日に、Pythonで機械学習のコードを書いていたり。プロジェクトに関係する技術を一気通貫に扱うので「マスコミで働いている」という実感は沸きやすいと思います。

-命綱をつけたロープワークとは…!?

鈴木 大きなスポーツ大会では、スタジアムのキャットウォーク(天井近くの点検用足場)から写真を撮影することがあります。他社事例ですが「三苫の1ミリ」がまさにそれですね。
 天井で撮った写真も地上に送らなければ意味がないので、社内のITエンジニアが高所に機器を設置する機会があるのですが、それに備えて鳶職の方に弟子入りして高所作業講習を受けたことがあります。「レイヤ1(物理層)からレイヤ7(アプリケーション層)まで全部やるよ」と入社前に聞かされていたのですが、まさか本当にやるとは思っていませんでした。高所に敷くLANケーブルも自分達で作るんですよ。

情報技術局のソリューショングループは業務ごとのチーム制。スポーツ、CMS(記事作成システム)、多メディア配信、インフラの4つに別れています。大きなニュースがあるときは、これとは別に臨時のチームも立ち上がります。鈴木さんがインフラのチーム、牧村さんがスポーツのチームに所属しています。

-普段はどんな業務をしているんですか?

鈴木 私はインフラチームで、イベント用の国際回線やVPNを担当しています。印象に残っている仕事は、2022年の3月、新型コロナで一気に増えた在宅勤務に対応するため、VPNへ同時に接続できる数を倍増させたことですね。元々非効率な繋ぎ方をしていて、同時接続数を増やすには接続アプリの改修が必要だったんですが、開発元も業務を停止していて対応してもらえず。そこで接続アプリのソースコードを提供してもらい、読解して改造。緊急事態宣言翌日にリリースしました。その間約2週間。なんとか乗り切りました。

-あの時期、自宅からでも業務が続けられたのはこのおかげですね。スポーツチームはどうでしょう。

牧村 鈴木さんは記者の仕事を支えるような、縁の下の力持ちの分野。僕は実際に業務をするシステムを担当しています。共同通信は記事以外にもスポーツの公式記録を出しているんです。野球、サッカー、相撲、競馬、ボートレース、競輪、オートレース。主催団体から公式記録データが数字の羅列で来るので、それを解読して記事体やグラフィックスなど紙面に載るような形にするシステムの作成・保守管理をやっているのがスポーツチームです。直近では競馬の記録処理システムを数名のチームで、完全に内製で作りました。本来外注すれば数億円だった規模のシステム開発を若い世代も任されて、中心的にやることができます。

▽オリンピックは文化祭

技術職の大きな業務として、オリンピックや選挙、G7などの国際イベント時のシステム管理というものがあります。記者よりも早く現地に入り、記事や写真が迅速に配信できる環境を整えます。2人は2020年の東京五輪を経験。牧村さんはコロナ禍まっただ中だった22年の北京五輪にも同行しました。今後は鈴木さんが24年のパリ五輪、牧村さんがパリパラリンピックを担当することが決まっています。

牧村 学生さんに向けて伝えたいのは、オリンピックの業務の楽しさです。一か月前に現地に入り、通信用のケーブルを引くところからアプリを設定するところまで、外国の閉ざされた空間の中で1から10まで全部やるのが結構楽しいんです。それはもう、一言で言うと文化祭です。国際規模の文化祭です。

東京五輪期間中、新国立競技場での牧村さん=2020年8月

鈴木 私は不器用なので、ケーブルを巻くのが下手過ぎて怒られました。物理作業も結構あるんですが、あれはあれでめっちゃ楽しいですよね。ホームセンターに行ってマスキングテープ買ってきたりとか、資材の調達もします。海外の通関手続きを技術職でやるので、そういうのも担当します。

牧村 何ヶ月も前から、持ち物で何が必要かをリストアップする。記者も含めた皆で食べるカップ麺の種類をどれにするとか、そういうところから始まるんです。いざ始まれば開会式や色々な会場に行けます。業務をしながら、競技の熱気も感じることができます。

鈴木 去年、パリ五輪に向けたメディア向けの国際会議に参加しました。テクノロジーの分科会では五輪の組織委員会が提供するインフラの仕様を確認して調整したり、オリンピックのインフラを模した実験環境で機材のテストをしました。合間の時間にはスイーツを巡りました(笑)

東京五輪期間中、新国立競技場での鈴木さん=2020年8月

▽マスコミならではの大舞台で一緒に働きませんか?

-会社の外に出て色々な仕事ができるんですね。
 
牧村 そういうのが楽しい人は向いていると思います。広く浅く、かつ外に出られる。エンジニアとしては珍しいかもしれません。普段の業務に加えてオリンピックなどのイベント、そしてインターンなどでやったような先進技術を使った創造的な仕事の3本柱があると思ってもらえたら。
 
鈴木 いわゆるエンジニアの「本流」ではないですが、とにかく好奇心旺盛であれもこれも興味あります、という人が向いていますよね。
 
-お二人とも文系ですよね。なぜこの会社でこの仕事を選んだんでしょう。
 
牧村 大学を卒業するときにマスコミへ行きたかった気持ちもあったんですけど、まだ具体的じゃなかったので、まずはこれからの時代に必須なITの勉強をしようと前の会社に入りました。5年間勉強してそれなりに身につき、ITを手段として生かせて好きな仕事は何だろうと考え、入社を希望しました。共同を選んだのは、新聞という媒体を持っていないので色々なことができるかなと思ったので。ホームページからメールで応募しました。入ってみたら、想像以上に本当にいろんなことを経験できました。

鈴木 私は山奥の生まれで、隣の家というのが存在しないところでした。放課後に友達と遊びに行くにも車が必要だったので、必然的にパソコンがお友達になりました。小学校の時からゲームを作って遊んだりしていたので、ずっとプログラミングに興味がありました。大学も本当は理工系に行きたかったんですけど、得意教科が英語と地歴と現代文だったので…。大学に入ってみたら、プログラミングって結構独学でいけるなと思ったんです。同業他社で技術系のアルバイトも経験し、就職活動の中で共同通信の座談会に行ってみたら、フランクで自由奔放な雰囲気に惹かれました。入社後のギャップもないです。むしろ、そうは聞いていたけどこんなにか、と(笑)

ソリューショングループ約30人のうち、30代中盤までの若手は7名。出身学部は文系:情報系:その他理系=1:1:1となっています。幅広いエンジニアに来てもらいたいと話す現役社員の2人に、改めて就活生のみなさんへのメッセージをいただきました。

牧村 アプリケーション、ネットワーク、クラウド、DB、インフラ基盤、AI・・・本当に様々な分野に精通できるのが共同通信のエンジニアです。とはいえ、全てに特化している必要は全くありません。長い社会人エンジニア生活で、自分の好きな分野が何なのか、向いている業務は何なのか、仕事に取り組んでいく中で見つけ出せるのがメディアエンジニアの良いところだと思います。誰しも最初は得手不得手ありますが、まずは広く浅く、興味本位で取り組んでもらうだけでOKです。
そして是非一緒にスポーツイベントや国政選挙など、マスコミならではの大きな舞台で活躍しましょう!

鈴木 報道という目的がまずあって、そのためにあらゆる技術を総動員することが私たちの仕事です。広く浅く幅広い技術を触ることができて、その上マスコミの業務にコミットできることがこの会社の魅力です。一つの目的のために、技術を組み合わせてよりよい方法を考えるプロセスは楽しいですよ!

編集後記
 夏の大阪インターンで、学生さんとの意見交換にも参加させていただきました。「こんなものも作れそうですが、どうですか?」「こういう風にしたら使いやすくなりそうですか?」などと思いもつかなかった提案をいただき、日々の業務がITの力でどんどん進化していく予感にワクワクしたのを覚えています。報道を「支える」のではなく「引っ張る」、大事な仕事を担う仲間に出会えるのを楽しみにしています。(大阪支社経済部 浜田珠実)


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