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日本語通級学級で学ぶ、海外ルーツの中学生たちへの指導で思ったこと

少し前のことになるけれど、
海外ルーツの中学生たちが、日本語や教科学習に週1回通うセンター校(中学校に日本語通級学級が併設)に、数か月勤めたことがある。
ここの先生が休職されるというので、たまたま同じ教科の教員免許を持っていた私に、ご縁があったのだ。

これより前に、いくつかの中学校で日本語指導員として仕事をしていたので、その統括機関であるセンター校で教えられるというのは、本当にありがたいことだった。

さすがセンター校だけあって、生徒たちの国籍は様々。そして個性的、かつ日本語力もバラバラで、まさに百花繚乱!
ここでは3人の先生たちがそれぞれ、1対1の授業を行う。なので、その生徒の性格や日本語レベル、家庭環境なども把握しながらの授業となる。基本的に50分×2の授業だけど、バスなどで通う生徒もいるので、早めに授業を終えなければならない。在籍校の授業に遅れることになってはいけないからだ。

それゆえ密度の濃い、それでいて楽しく有益な授業にするにはどうしたらいいのか。毎回、一人一人の顔を浮かべつつ、うんうんうなって教案を練っていた。以前教えていた留学生と違うところは、教科指導も行う必要があることだ。日本語は、授業を理解するための一種のツール。しかしこれが、至難の業!(長年、日本語を教えていても悩む・・・)
日本語ゼロレベルの生徒たちにどうやれば、教科指導までできるのか・・・
週1回だけの授業では、全く時間が足らない。


私が住む自治体では、まだ海外ルーツの中学生たちに、一斉に初期指導を行っていない。それぞれ日本語指導員の方々が、個別に対応しているのみ。それも運よく指導する方が見つかればいいけど、そうでない場合は(多くがこのパターン)、このセンター校での週1授業だけなのだ。

加えて、保護者も日本語がわからないため、生徒が自宅で日本語学習をしていても、チェックができない。また遅くまで保護者が働いているために、帰宅しても生徒一人という家庭もある。

・・・こんな状況でいいはずがない。業を煮やして、教育委員会に電話で話してみたけど、全く埒が明かなかった。

よその自治体では、来日間もない生徒たちを、午前中(または午後)毎日施設で、基本的な日本語や学校生活のルール、習慣などを効率よく学ぶ初期指導を行っている。2~3か月で最低限の日本語を学べば、学校生活にもなじみやすい。

それがかなわない状況下では、今やれるギリギリのことを、精一杯、日々行っていくしかない。

私は、ここで生徒たちの辛さ、はがゆさ、様々な理不尽さを目の当たりにして呆然としたこともあった。それでも、たった一つの言葉がわかったときの、生徒たちの輝きに満ちた笑顔を忘れることができない。

彼らは日本という異国で、複雑な家庭環境の中で、とまどいと不安の波の中で、精一杯生きているのだ!

短い間だったけど、私も生徒達から本当に多くのことを学ばせてもらった。そして日本語ゼロの生徒たちが、すぐに使えるような簡単なテキストを自分で作ってみよう!と思い立った。うまくできるかわからないけれど、少しでも彼らの助けとなるように。

私の心に深く刻まれたセンター校での経験。
どうか生徒たちは、希望を持って明るく充実した中学校生活を送ってほしい。今は心から、そう願うだけだ。










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