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「お掃除屋さんは見た!家の裏側はミステリー」第15話〜O様宅〜

本日のお客様はO様。

O様宅に伺うのは大変でした。

いつも事前にお客様宅のご住所を検索して、場所を把握するようにしているのですが……
O様宅は、GoogleやYahoo!、Mapionなどの地図で探しても見当たらず。

「新築住宅なのかしら?」

「さすがにGPSのカーナビでは出るんじゃないですか?」

「それもそうね」

スタッフとそんなやりとりをして、O様のお掃除に伺う当日。
カーナビに住所を入れると、やはり地図に出てきません。

「住所を聞き間違えたのかな?」
O様に電話で確認すると、確かに住所は合っていますが、再検索しても出てきません。

O様にご自宅近くの主要な建物をお聞きして、最寄りのコンビニで待ち合わせすることになりました。

コンビニに到着してご連絡すると、真っ黒のベンツで颯爽と現れたO様。
まるで岩下志麻さん主演の映画に出てくるような、強そうな雰囲気の方です。

(もしかして…そっち系の方?)

ドキドキしながらご挨拶。

「お迎えに来ていただき、ありがとうございます。お手数をおかけして申し訳ありません」

「我が家は住所が地図に出ないとよく言われるので、お気になさらずに。ゆっくり走るので後をついてきてください」

O様のベンツを追って車を走らせること10分。
アスファルトの公道から外れて畑の道を進むと、木々が生い茂る雑木林が見えてきました。

そして林の中を300mほど進んだ先に、大きな赤い鳥居が!

「O様宅は神社なの?」

「この辺に神社はなかったはず……?」

スタッフと私は顔を見合わせました。

鳥居をくぐって敷地内に入ると、住宅というよりお屋敷と呼ぶのがしっくりくるようなO様宅が現れました。

広いお庭には池もあり、鶏が5羽ほど放し飼いされています。

(O様、日本昔ばなしの長者どんみたい)

そんなことを思いつつ、車からお掃除道具を運び出しました。

O様のご依頼は、水回りのクリーニング。
お風呂とトイレと台所、それぞれ2箇所ずつのお掃除をご希望です。

「母家と離れに1つずつあるので、お願いします。何かあれば裏庭にいるので呼んでください」

「承知しました!」

私が母家を、スタッフが離れのクリーニングを担当することにしてお掃除開始!
そうして30分ほど経った頃、スタッフが緊張した顔でやってきました。

「オーナーと一緒に掃除してもいいいですか?」

「どうしたの?」

「なんだか…水を流すとゾワゾワするんです」

「体調が悪い?」

「いいえ…そうではなくて……」

一人でもお客様宅にクリーニングへ行けるよう鍛えたスタッフなので、そういうことを言うのは珍しく……

「じゃあ、母家を仕上げてから、一緒に離れのお掃除にいきましょう」

母家はそれほど汚れていなかったので、スタッフとテキパキ仕上げ、O様にお声かけして少し早めのお昼休憩をいただきました。

普段、車の中や現場近くのお店でお昼を済ませることが多いのですが、スタッフがそわそわして落ち着かないようだったので、鳥居を出て林の中へ移動。

広い林道に車を止め、木漏れ日を浴びながら、お弁当をいただくことにしました。

「さっきは離れで何かあったの?」

「なんて言うか…水が変なんです」

「変ってどういう風に?」

「何かが混ざっているというか……」

「離れの上に水タンクが置かれていたから、タンク内が汚れているのかもしれないね」

「汚れでしょうか……」

私が生まれ育った沖縄では、断水対策として屋根の上に水タンクを置いていることが多く、タンク内部を洗浄しないと藻が生えて汚れた水が出たりすることがありました。

「後でO様にお伝えして、タンク内部を確認しましょう」

「はい……」

いつになく元気のないスタッフ。

「帰りにあなたが好きなチーズケーキをご馳走するから、がんばろうね!」

「はいっ!」

スイーツの力は偉大です。
元気のなかったスタッフが気持ちを取り戻したところで、O様宅に戻りました。

「ただいま戻りました。午後は離れのクリーニングを行います」

「ご苦労様。離れにお茶を置いてあるから、ご自由にどうぞ」

「ありがとうございます!」

スタッフと一緒に離れにいくと、母家とは違い全体的にお手入れされていない様子です。

「離れは長いこと使っていなかったかもしれないね。私がお風呂場を洗うから、あなたは台所を担当してね」

「了解です!」

スタッフが気にしていたお風呂場へ行くと、小さいけれどヒノキの浴槽もあります。
浴槽を洗うと、ふんわりヒノキのいい香り。

(温泉みたい!)

お風呂を一通り洗って、洗剤を流そうと蛇口をひねると……
水にほんのり色がついています。

(藻にしては赤っぽい。鉄サビかな?)

しばらくお水を使ったら透明になったので、気にせず作業を続けました。

お風呂とトイレのクリーニングを終え、スタッフが担当する台所に行くと、シンクの仕上げ拭きをしているところでした。

「お水が赤かったね。藻ではなくサビが発生しているかも?」

「水タンク内のサビだったのですね。安心しました」

母家と離れのクリーニングを終え、O様をお呼びして仕上がりを確認していただきました。

「ヒノキの浴槽ですが、乾燥するとひび割れなどのトラブルが起こります。しばらく使わないようでしたら、水を入れたバケツなどを浴槽内に置くと、ほどよく湿気が出るのでオススメです」

「では、ついでに水バケツをお願いできますか?」

「承知しました!」

O様宅のバケツをお借りして、お水を入れようと蛇口をひねると、また赤い色のお水が出てきました。

「お使いの水タンク、内部にサビが発生しているかもしれません。高圧洗浄機で洗浄するとキレイになりますが、よかったら確認しましょうか?」

「タンクはダメだ!!」

O様が険しい顔で大声でおっしゃるので、私たちは驚きました。

(営業をかけていると思われたかな?)

「出過ぎたことを申して…失礼しました」

ハッと我に帰ったO様が、
「大声を出してすまない。今日は水回りだけでいい」

そうおっしゃって、チップだと言ってクリーニング代を多めにいただきました。

「帰りは送らなくて大丈夫かい?」

「お気遣いありがとうございます。大丈夫です。失礼いたします」

車で雑木林を走り抜けた後…

スタッフがボソッと一言。
「タンク内に死体を隠してるんですよ」

「まさか〜」
私は笑いましたが、O様の態度を思い返すと……
あながち違うとは言えないかも!

真相は林の中。
地図に現れない、O様宅でのミステリー。


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