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子育てを支える地域とは?

先日、区役所で開催された
育児支援講座に行ってきました。

赤ちゃん連れのお母さんや
実習中の学生さんに混ざって
「子育てに関心のある住民代表」として
参加させていただきました。

今回、お母さんたちと間近に接し
考えることがありましたので
綴ってみたいと思います。


〈日本は子育てしにくい?〉

私は10年ほど
沖縄の小さな離島で暮らしていました。

今年6月に発表された
厚生労働省の人口動態統計によると
沖縄県は出生率が一位で
それも49年連続で一位を記録しています。

一人の女性が生涯に産む子どもの数を推定する
「合計特殊出生率」も38年連続一位で
沖縄県は1.70ですが、最低は東京都の1.04で
全国では1.26で過去最低となっています。
(注:あとがきもお読みください)

この数字が示すように
島では一人っ子が少数派で
多くはきょうだいがいて
5人以上もちらほらと。

お兄ちゃんお姉ちゃんが
弟や妹の子守をしている姿を
よく見かけました。

沖縄では「子どもは宝」という
価値観が古くから根づいています。

お祖父ちゃんお祖母ちゃんが近くにいて
おじさんおばさんも身近で
近所の人だって、みんな知り合いです。

家族や親せきだけでなく
地域で子育てのサポートが
自然とできているのです。

私が子育てをする立場なら
給付金や医療・保育の無償化も
ありがたい限りと思いますが

こうした地域社会が
子育てに協力的であるという安心が
何より大切かなと思います。

必ず誰かの目が届いているので
孤立することがないのです。
島には
そんな環境が整っています。

〈お母さんはゆっくり食事ができない。その1〉

10年以上前の話になりますが
友人と1歳半の友人の子どもと三人で
お昼に外食をしたことがあります。

食事が出てくるまで
楽しくおしゃべり
とはいかず

目の前のお箸やスプーンで
「カンカン、テンテン」と
演奏会が始まりました。

友人は「シーッ!」と
演奏をやめさせようとしますが
取り分け用の器が床に落ち
演奏会はやむなく中止に。

食事が運ばれてきても
子ども用に冷ましたり、小さく分けたり
短く切ったりしないといけなくて

そのうえで子どもは
まだ一人では食べられなくて
食べさせてもらっています。

友人だけど、私も初めてのことで
どうしたらいいのかわからず、
普段通りに食事をしていました。

私が先に食べ終えたので
その子を膝に抱っこして
やっと友人は食事にありつけたのでした。

〈お母さんはゆっくり食事ができない。その2〉

数か月前に、夫と二人で
食事に出かけた時のことです。

お母さんと1歳くらいの子どもと
その子のお祖母ちゃんと思しき女性と
三人がテーブルについていました。

私たちは
夕食の混雑前のガランとした店内で
少し離れているけど
視界に入る距離にいました。

あちらの三人に
食事が運ばれてきたタイミングで
子どもが泣き始めました。

お母さんは
子どもにミルクを飲ませたり
抱っこしたりして
食事ができない様子でした。

私たちに食事が来る頃には
お祖母ちゃんが食事を終え
泣き止まない孫を抱っこして
お店の外に出て行ってしまいました。

店内は広く、天井も高く
泣き声は気にならなかったのですが
外にいる二人をガラス越しに見ながら
お母さんは一人で食事をしていました。

〈お互いに声をかけられない〉

先日の育児支援講座では
ある女性がインドで体験した
子育てにまつわるお話が紹介されました。

先ほどのような外食の場面で
隣のテーブルの方が
子守をするからゆっくり食べなさいと
声をかけてくれたそうです。

子守の方の食事が運ばれてきたならば
また別のテーブルの方が
子守を買って出てくれ
ゆっくりと食べることができた
というエピソードでした。

これを聞いて
私はあの時、お母さんとお祖母ちゃんに
声をかけたらよかったのか?
そんな疑問が湧きました。

すぐ隣の席ならまだしも
ちょっと距離があるテーブルなのに
「見ていますから、どうぞ食べてください」
なんて言われたらどうでしょう?

反対にそのお母さんからすると
これから食事をしようとしている
少し離れた席の中年の男女に
「少し見ててもらえますか?」などと
頼めるはずもないと思うのです。

でも、こちらは頼まれれば大歓迎ですし
もしかしたら、私たちが声をかければ
お母さんも「お願いします」と
言ってくれたかもしれません。

〈人に迷惑をかけてはいけないって本当?〉

私たちは「人に迷惑をかけてはいけない」と
学校や親から教えられて育ちます。
日本人にはこれが美徳とされています。

一昔前にベビーカーで電車に乗ることが
論争を引き起こしました。
今では当たり前の光景ですが
果たして本当に迷惑だったのでしょうか?

「人に迷惑をかけてはいけない」が仇となって
人と違う行動を迷惑と捉えることで
自分を正当化しているように思えます。

そのような人たちは
感覚的に「迷惑だから」と常識人ぶっていて、
なぜ迷惑なのか理由は答えられないものです。

そして
「迷惑」は悪いことだと思っているので
人に頼ることも、人に頼られることも
できなくなってしまっているのです。

先に話題にあげたインドでは
「あなたは人に迷惑をかけて生きているのだから、
人のことも許してあげなさい」
と教えるそうです。

迷惑をかけてもいい。
その分、自分も誰かの迷惑を引き受ける。

どちらの教えが
みんなが生きやすい社会に
なると思いますか?

〈子どもは地域の宝〉

「子どもは大切に育てよう」
そういう意味だと思います。

子育てのサポートは
行政だけでなく
家庭はもちろん
サポート団体や組織が必要です。

私が住んでいる地域での
子育て支援の取り組みを調べてみると
子どもを預ける有償のシステムや
どこかに集まって行われる子育てイベント
予約制の相談会などがありました。

もちろん
こうしたサポートも必要です。

でも、私が島で見てきた
地域での子育てとは
大きくかけ離れています。

たとえるなら
身支度を整えなくても
家から一歩出れば迎えてくれる

普段の会話のように話していたら
いつの間にか相談していた
そんなコミュニティです。

子育てのサポートは
お母さんをはじめとする
育てる側への支援と
子どもへの支援とが必要です。

地域が家族にならなければ
実現は不可能です。
地域って土地の範囲ではなく
人と人との関わりです。

都会では隣の家に
誰が住んでいるのかさえ
知らないこともよくあります。

これでは
子育てをするのに
安心できる環境にはなりません。

子どもを取り巻く環境に
必要なだけ目が届くこと
すぐに手を差し伸べられること
大人同士もつながること。

そんな地域だと
子育てがしやすいと
感じられるのではないでしょうか。

まずは私が
地域の子育てサポーターと
名乗りを上げていきたいと思います。

〈あとがき〉

冒頭
出生率等の数字に触れ
沖縄県が長く1位であることを記しました。

これは統計上の事実ではありますが
その実、非常に大きな問題を抱えています。

沖縄県は若年での出産や結婚が多く
また婚外子も多い傾向にあります。

離婚率も高く
貧困は子どもにまで及び
社会問題となっています。

数字だけでははかれない
問題もありますが、
今回は単純に
統計上の数字として
お考えください。

いずれこうした問題にも
触れていきたいと思います。

また次回も
元助産師の目線での子育てについて
お伝えします。

最後までお読みいただきありがとうございました。




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