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ピエール瀧が教えてくれた、「ワイドショー」というプログラム。

ピエール瀧の逮捕によって、なぜか石野卓球まで叩かれるという不思議な事態に陥っている日本。記憶に新しい、山口達也の強制わいせつ絡みでのTOKIO黒服謝罪会見。さらに、純烈・友井雄亮のスキャンダルによる他メンバーの深妙な謝罪会見なんてのもありましたね。

アイツらも謝ったんだから、卓球お前も謝れ!黒いスーツきて謝れ、同じ電気グルーヴだろ!という意味の分からない主張が蔓延しているようです。

この謝罪会見を観ることによって、誰が留飲を下げているのでしょうか。

というか、これは一体、誰に謝っている図式なのか。スキャンダルに被害者がいるのであれば、勿論その人に謝るべき。応援してくれているファンに謝るという考え方もあるでしょう。今までお世話なっていた関係者への謝罪もありますね。でも、それって群がるカメラマンの前でやる必要あるのだろうか?被害者になら直接謝るべきだし、関係者もそうすべきでしょう。ファンに対してなら、会報だったりSNSだったりがあるわけで。別に記者の前でやる必要性はないのです。

そんな不思議な謝罪会見。報道各社が構えるレンズの向こう側にいる人は、本当に被害者なの?それとも関係者ファン?いいや、興味本位で沸き立つ野次馬が相当数を占めるのは間違いないでしょう。

ちなみに、こんな書籍もあるように、謝罪会見という文化は世界でも珍しいものなのだとか。つまり、極めて日本人らしい行動だと言えるでしょう。

欧米では、すぐに謝罪をして過失を認めてしまうことは、交渉能力に欠けた無能な人と決めつけられるそう。お隣りの中国・韓国では、謝罪は賠償の約束を意味するので、己に過失が有っても謝罪はしない(あ、色々納得!)。

では、日本はどうか。他人に笑われたくない恥をかきたくない。日本人特有の恥の文化が本件に関わっているとの説があります。つまり、正しいか悪いかで謝罪するのではなく、世間の反応によって謝罪を決めるというのです。常に人の目を気にする…、なるほど日本人らしい判断軸です。

ワイドショーとは何なのか?

ところで未だに謝罪会見を開かない、石野卓球。そんな卓球氏にテレビでこんな発言をする輩も登場しています。

エコノミストの伊藤洋一は「漫才のカップルだって片方がなんかしたら片方が謝っているケースが多いよね、常識的にはそういう対応なのかなと僕は思います」と発言。

なぜあなたの狭い常識を、わざわざ電波に乗せて押し付けるのか。なぜ電気グルーヴと漫才のカップルを比べる必要があるのか?エコノミストが語るべきは経済であって、常識論ではない。っていうか、あんた誰?そして、この番組、何?

つまり、ワイドショーですよ。今、電気ファンが最も嫌っているであろうTVプログラムです。このワイドショーについて、Wikipediaで検索してみると、

ワイドショーの歴史は、遡ること1964年。テレビ朝日系列で朝に生放送された「モーニングショー」からはじまった。単独または複数の司会者により進行され、ニュース、生活、芸能、社会などのワイドな話題を取り扱う。生放送であることが多く、放送時間が概ね1時間から2時間程度。放送時間帯が主婦層・高齢者層の在宅率が高い全日の午前と午後に編成されている。また話題に対し、複数の様々な肩書きの人間がコメンテーターとして出演する。ワイドショー - Wikipedia より抜粋

とあります。この複数の様々な肩書きの一端がエコノミストさんってわけですね。一つの事象に対して、あらゆる角度から検証することは素晴らしいと思います。でも残念ながら、ワイドショーは素晴らしくないんです。

「イエロー・ジャーナリズム」という言葉をご存知ですか?事実を重要視せずに、より扇情的である事を売りとするジャーナリズムのことです。人を驚かせるような見出しをつけ、インタビューやストーリーを歪曲・捏造誤解を招く見出しもなんのその。ある意味詐欺。何が面倒くさいって詐欺師に近いやり口のくせに、社会不正義を告発するような体裁で、弱い者の味方であるかのように振る舞うのです。これは日本に限った話ではないのだけれど。

その根本は、新聞の発行部数を伸ばすため。テレビなら、視聴率をあげるため。ワイドショーはつまり、イエロー・ジャーナリズムによって成り立っていると言えるでしょう。

ではこのうざったいイエロー・ジャーナリズムの責任は、媒体側だけにあるのか?と言えば決してそうではありません。煽情的な見出しによって、好奇心をくすぐられた情報リテラシーの低い人々は、考えることを辞め、スピーカーから流れてくる有名人の言葉を妄信する。だから売れる、だから視聴率が上がるのです。だから、1964年から無くならない。無くなるどころか、他のテレビ局も追いかけるようにワイドショーを量産し、報道番組ですらワイドショー化するのです。

受け手がきちんと考え、物事を判断する賢さを備えていたら、ワイドショーなんて成立しないはずなのです。

私たちは、ピエール瀧が逮捕される前、ワイドショーから流れてくる情報に踊らされていなかったどうか。田坂容疑者の名前があがった際に、DJ TASAKAの嫁か姉かと詮索しなかったか(どちらかが正しかったとして、必ずどちらかは間違っている)。SNSでの不用意な発言は、人を傷つける可能性をきちんと考えなければいけません。

卓球のこのツイートに対して(嘘か本当かは別として)、

この返し。これこそワイドショー視聴者の鑑です。誰が何を言おうと、自らが欲する回答でないと受け入れない。それ以外は本人の言葉でも排除する。思考が完全に停止しているのです。

電気グルーヴを盾にして、ワイドショー(と坂上忍)を叩くのは簡単です。大切なのは、瀧逮捕で何を知って、それをどう糧にするかではないでしょうか。

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