2 祖父の話①

 節分→鬼→虎から連想して思い出した話。
 祖父が生前「大陸東北部で部隊を離れて釣りをして帰ったら子虎が捕まえてあった。高く売れるから捕獲したという。捕らえた場所が自分が釣りをしていた辺りと聞いて背筋が凍った、母虎が怒り狂って探していたはずだから、会わなくて幸運だった」と言ったことがある。
 中公文庫の『偉大なる王(ワン)』をみせてくれながら。
https://www.amazon.co.jp/偉大なる王-ワン-中公文庫-ニコライ・-バイコフ/dp/4122016223
Amazonを見ると1989年発売とあるので、文庫を買い求めた直後に私にさりげなく勧めてくれたのかもしれない。

 祖父は他にも北海道のヒグマについて物語してくれた。開拓時代の恐ろしい事件やら、ヒグマの肝の本物は削って茶碗に入れると水の上をくるくる回ることやらを、書籍を手に要点をつまみながら話してくれた。 
 祖父と散歩中、ヒグマの頭部を鍋で茹でている研究室を覗いたこともあった。骨格標本をとるためだとかで、まだ桃色のすじや肉がついていた。話し込まずに立ち去ったので、祖父の古巣のH大学獣医学部をアポなしで通り抜けたのかもしれない…そうだ、思い出してきた、南極探検のタロの剥製や、美しい刺繍のアイヌの衣装も見た。終戦後北大に復学した際には犬飼教授(引退後のタロのお世話をした)に教わったとも言っていたので、あれは北大植物園だった…のか?
https://www.hokudai.ac.jp/fsc/bg/g_n_peoples.html

 ここまで、かの北方漫画「ゴールデンカムイ」と登場する内容が被るのは偶然ではない。金カムの作者さんは、公開プロフィールによると私と同世代かつ祖父母が暮らしていたのと同じ札幌郊外の町のご出身。おそらく身近に目にした資料を存分に活用していらっしゃるのだ。
 気になって調べたところ、登場人物土方歳三と杉元佐一の年齢差が、杉元佐一と祖父の年齢差とだいたい同じだと分かった。

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